第7話 記憶の先にある物

霊能者兼探偵の冴子は、遺体安置所の受付の人に警察本部からの書状を渡すと、裕子を連れて、赤井村の学校で亡くなった子供の遺体の安置してある場所まで案内された。


明かりの少ない通路を奥へと進んでいくと人の腐敗臭が段々とキツくなり、マスクをしていても息を止めたくなる程だった。


302と表札がある鉄扉のカギを職員が開けると遺体が収納されているであろう棚があり、その棚の一番下の右側をあけて、手前に引っ張った。

ゴンゴンと音をたてながら開いていくと、綺麗に保存された少年の遺体が見えてきた。

職員が一礼をすると、冴子が何かを伝えた。


冴子 やっと会えたわね。良樹くん。綺麗にされてるわ♪あっ、すいませんが、空っぽの棺桶を1つと棺桶が満たされる量の水をご用意してください。


職員 はい?水ですか?いったい何を?


裕子 本当ね。眠っているみたい。


冴子 ちょっと。調査に必要なんです。


職員は何が何やら分からない様子でとりあえず用意をし始めた。


職員 あのー?こちらは別料金とかを頂けるんでしょうか?まさか、ご遺体を水の中に入れませんよね?


冴子 ご遺体は一切、触らないわ。棺桶と水はアタシが必要なの。これは裕子さんに重要な事をしてもらうからお願いしますね。


裕子 はい?重要な事って?


冴子 まぁ、使わないかもだから、必要になったら、お願い♪ちゃんと説明するから~


裕子 はい。冴子さんは本当に謎だわ(苦笑)


その30分後、職員は言われた物を用意すると部屋を出た。部屋を出る時に冴子はもう一つのお願いをした。


職員さん、お願いがもう一つあります。アタシ達が部屋を出るまで、絶対に扉を開けないでください。他の方にもこれをお伝えくださいますか?よろしくお願いします。


職員 はぁ、分かりました。一応、今日は私だけで担当していますので、他の職員は来ないと思いますが、その時はお伝えします。


と話して、ガチャッと扉のカギを閉めていった。


冴子 それじゃ、はじめるわね!


裕子 はい。


冴子が少年の頭に手を掲げると目をつむり集中しはじめた。

そして、裕子の手を握ると二人のまぶたに少年の記憶が映画みたい映し出された。


・・・・


良樹 行ってきまーす!


母 いってらっしゃい。


冴子 朝の様子ね。亡くなると一番強い記憶を何回も繰り返す事が多いの。


良樹が玄関をしめ、走り出すと赤井村名物の山の上の神社のある鳥居の下に着いた。


鳥居の下辺りで良樹が止まり、急にしゃがみだした。すると、紙切れを1枚、ポケットから出した。


その紙切れを開いて見ながら歩いていき、次に学校の教室の映像に変わった!


学校の教室に着くとランドセルを棚にしまい、席に座り、ポケットから紙切れを出して机の上に置いた。


そこへ友人が話しかけてきた。


裕子 何これ?駐在さんの話しに似た物語よ。


冴子 これが、良樹くんのもっとも強い記憶なの。


それから、良樹が急に立ち上がると教室がどんどん暗くなり、最後は周りの友人は全て消えて暗闇の教室で良樹が立ちすくんでいた。


良樹 なになに?みんな、どこだよ?何で急に夜になっちゃったんだよー?僕、眠っちゃったのかな?

と、とにかく、帰らなきゃ!お母さんに怒られる!


良樹がランドセルを急いでかつぎ、教室から出ると、廊下から声がした。


こっちだ!おいで!


良樹 先生?ですか~?


早く、おいで~!


声のする1階へ続く階段の方に良樹が走って向かうと、階段を下りた1階で声の主と会った。


その主は黒いフードのコートを着ていて左手に赤い液体が入ったコップを持っている老人だった。


良樹 だ、だれ?


声の主 紙は良く読んだか?


良樹 紙?神社で拾ったやつ?宝の地図だよね。あれ、おじいさんのなの?それなら返すから。


声の主 もう、遅い!いくか、いかないか?選べ!

黒フードの老人が良樹に近づき、白く細い手で頭に触れてきた!


良樹 ど、、、、(声が出ない!何で?)


声の主 いくかーー!!!!!!!


良樹の全身が震えだし、目が段々と白くなっていった。


裕子 いやー!!


冴子 裕子さん、のまれちゃダメ!アタシの手を握って!


冴子が裕子の背中をさすりながら、抱きしめた。


そこで、目の前が遺体安置所に戻った。


冴子 裕子さん、大丈夫?良く耐えたわ


裕子は震えながら、冴子の手をふった。


裕子 な、何よ?こ、これ?これが神様なの?


冴子 いえ、違うわ!あれは、使者よ。別名、天使。死神と呼ぶ人もいるわね。

死者を霊界へ連れていく者。でも変ね。

通常は亡くなってたから連れていくのに、生きているウチに連れていくなんて!


裕子 あ、あんなのが天使なの?嘘よ!だって天使って言えば白い羽根があって!


冴子 一般的なイメージだとそうね。でも、本当の姿はあーなの。

一つ分かったのは、何かの地図が関係ありそうだと言う事ね。


裕子は、まだ震えて座り込んでいた。


さ、冴子さんは、す、凄いわ。あ、あんなのを、み、見て、へ、平気だなんて。


冴子 天使とは子供の頃に話した事があるの。だから、驚かなかっただけよ。アタシも最初は怖かったわ。慣れかな~?笑


裕子 な、慣れ?ハハハ(絶対、慣れないわアタシ!)


冴子 とりあえず、良樹くんが死んじゃった理由が分かったわね。約束は恐らく、あの地図に書いてあるのよ!それを調べなきゃ!


裕子(アタシ、帰りたいかも、、、)













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