第22話 辺獄の元人間達 7 エルフの末路、新たな集落
ドワーフ達が豹変した家畜の豚達に食われ全滅した頃、エルフ側では人族から奪っていた実のなる木で飢える事がなかったエルフ達に異変が起きていた。
「ぐ、ぐげぇぇぇ!!」
「くぅ!! か、体が…ぐぁぁぁぁ!!!!!!」
実を口にしていたエルフ達の体内から枝が伸び、腹や頭を突き破って美しかったエルフは次々と実のついた木々に姿を変えていった。
(エルフども…貴様らだけは許さん…)
(我ら以上の苦痛と死を…この鬼畜どもに…)
エルフ達には聞こえないドッペの両親や親族たちは恨みの言葉を吐きながら枯れていく。
大きく美しかった実は全て腐れ落ち、枝も細くなって次々と倒れた。
一人、また一人と彼らの体内から枝が飛び出て、ドワーフ達に毒殺を考えていた女エルフの口の中から巨大な枝が伸び窒息寸前だった。
(ぐるじぃ、いぎ、いぎがぁ…いやだぁ、わだじのからだ、おがじぐなっでるっ!!)
女エルフは死の恐怖を抱いたまま大量のおいしそうな実をつけた一本の木になり、エルフの集落は木々の集まりと化した。
△
生前は平民たちから金も食料も貪ってきた貴族達は辺獄で豚や植物に姿を変えられ恨みにより地獄の住人となり人族、エルフ、ドワーフ達に終わりのない絶望を与えていた。
巨大な豚と化したドッペ達は拙い木の柵を作り、辺獄中から集めてきた人達を閉じ込めていた。
「やだぁ、いやだぁ…助けて、もう痛いのいやぁ!!」
「おい!! ドワーフのあんた達!! あの豚達を倒してくれよ!! 」
「そ、そうだぁ、あんた達戦士だろうがぁ!! ほら、武器持って戦えよぉ!!」
柵の中で飼われている人々が武器を捨ておびえているドワーフらに怒りの声を上げた。ドワーフ達は固く目と耳を閉じひたすら「食べなでぇ、食べないでぇ」と繰り返し一度敗北して食われたことにより心が完全に折れていた。
「にく、にく、にく」
「う、うぁぁ!! 来たぁ!! 来るな化け物ぉ!!」
「ファイヤボール!! ウインドカッター!! くそっ!! なんで死なないんだよ、こいつらぁ!!」
柵の中に地獄の豚達が入ってきて人々は食われたくないと抵抗するが無駄に終わる。
狭い柵の中では隠れることもできず一度全員食われ豚が出ていくと柵の中で人々は蘇りを繰り返した。
一方で木と化したエルフの元集落では人が集まっていた。
「おい、見ろっ!! 実がこんなになっているぞ!!」
「た、助かった…これで妻も子供も飢えずに済む!!」
人やドワーフだけでなくエルフも混じった集団が木々の実を仲良く分け飢えを凌いでいた。3種族たちはそれぞれ協力しながら辺獄を旅していた一団ですぐに木々を中心に住処を作り始めた。
人族は木々の皮を剥いで細かい生活物資を作り、エルフは魔法で火を起こし食事の準備をして、ドワーフは岩や枯れ木の枝で簡単な家を作りあげ恨みや差別はなく大きな集落が作られていく。
そして、木となり永遠に動くことができなくなった元エルフ達は、
(やめろぉ!! 人族めぇ、穢れた手で私に触れるなぁ!! ぎゃぁぁぁぁ!!!!!)
(助けて!! 私も同じエルフよぉ!! やめて、やめてぇ、いぎぃぃぃぃぃ!!!!!)
(たすげでぇぇぇ、もう実をとらないでぇ…いだぃの、いだぃのにぃぃぃぃ…)
動くことも誰とも話すこともできずひたすら実を引きちぎられる苦痛に叫び続けていた。
しかも3種族は数が多く毎日実を刈り取られて休まる暇もない。そんな中、他の木々よりも大きく立派なドワーフの毒殺を考えていた元女エルフの木に人々は集まっていた。
「それにしても立派な木だなぁ~~一体いつからここにあったんだろう?」
「不思議だよな、水も肥料もなくても実がすぐに生えて…さて、今日も子供達のために頑張るか」
育ち盛りの子供を持つ人族とドワーフの父親たちが気合を入れて実を刈り取り始めた。
(やめろぉぉぉ!! このゴミどもがぁ!! 私に触れるな!! 近づくなぁ!! 殺してやるぅぅぅ!! 魔法でぐちゃぐちゃにして、毒で苦しめてごろじでやるぅぅぅ!!!! ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!)
永遠に実行できない殺害を吐く中、父親たちにより枝を切られ実を取られ終わることのない地獄に女エルフの心はすり減っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます