第21話 辺獄の元人間達6 食われるドワーフ

ドワーフとエルフに食い物にされた元貴族たちは恨みと憎しみによりその姿を変えていくことになる。まず変化が起きたのはドワーフらが虐待している豚たちだった。


(たべたい、たべたい、たべたい…)


 空腹で倒れていたドッペは子供ドワーフの足を見て立ち上がった。腹の音が大きくなると、小さかった牙がサメのように鋭く伸び子供ドワーフの脚を食いちぎってしまった。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!!!」


「どうどうしたぁ!? ひぃ、ひぃぃ!?」


 片方の足を食われた子供ドワーフが泣き叫び大人達が駆け付けるとちぎった足を美味しそうに貪っているドッペ豚を見てドワーフ達は悲鳴を上げた。


(美味しぃ…肉、肉、にく、にく、にく、にく…もっと食べたい…)


(ドワーフの肉、食わせろ、食わせろ…)


 これまでなぶり殺された恨みと空腹でドッペだけでなく他の豚たちも変貌していく。


 小さかった体がドワーフ達よりも大きくなり筋肉自慢だったドワーフに襲いかかり次々と食らい始めた。


「や、やめろぉ!! くそぉ!! この豚どもぉ!!」


「へぇ!! でかくなりゃもっと食えるぜ!! おらっ!! 死ねぇ!!」


 家畜だった豚どもの変化に驚きながらもドワーフの大人達が武器を手に闘いを挑む。

 槍や斧などで巨大豚たちの急所を狙い攻撃するが豚たちは倒れない。


(はら、へった…もっとたべたぃ…)


(にく、いっぱい…くう、たべる…)


(にく、にく、にく…)


 斧で首を切り落とされても再生し槍で体を貫かれても痛みより空腹が勝った暴食の豚は止まらず次々とドワーフ達を捕まえ硬い頭を牙で砕きボリボリと豪快な音を立て夢中に食らう。


「ひぃ、やだぁ、やだぁ…うわぁぁぁぁ!!!!!」


「お、おい逃げるなぁ!! うわぁぁぁ、やめろぉぉぉぉ!!!!!」


「たすけぇ、たすけぇぇぇ!!!!」


 ボリィボリィと美味しくドワーフを食べる豚に恐怖して武器を持った大人達は逃げて、


食う側と食われる側の立場が逆転した。


「もっと…もっと、にく、にく…」


「にげるなぁ、くわせろ…」


 逃げて行ったドワーフを見て「肉、もっと食わせろ」と言葉を繰り返し豚達は二足歩行になり鈍足なドワーフをすぐに捕まえて頭から丸のみにしてしまった。


 どれだけ「助けて」「食べないで」と命乞いをしても空腹の奴隷達は一切耳を貸さずひたすら肉の量が多い大人ドワーフを食らい続け残ったのは恐怖でおびえた子供ドワーフだけだった。


「いやだぁ、たすけて、ごめんなさい…」


「食ないでぇ、食べないでぇ…」


 戦う意思はないと手にしていた武器を投げ捨て、戦えない鬱憤を豚達に発散していた子供達。だが、テントよりも大きく最初に巨大化したドッベ豚が投げ捨てられた武器を踏みつぶしながらドワーフの内臓や血が混じった涎を流し子供達を食らった。


「うぁぁぁぁぁ!!!!!!」


「いやだぁぁぁぁ!! 父ちゃん!! 助けてぇぇぇ!!」


 既に食われた父親に向け助けを求めながらまだ闘いを知らぬ戦士たちは胃袋の中へと消えた。


「にくにくにくにくにく…」


 ドッペ豚の腹部から虫の音が鳴り鼻をヒクッヒクッと動かし、どこかに突進していく。


 少し進んだ先にはドワーフとエルフに住処を追い出された餓死寸前の人族たちが倒れておりドッペ豚は次々と抵抗できない彼らを食らう。


 もはや地獄の豚と化して元同類にすら空腹を満たす肉としか見れてなかった。


「いや、だぁ…た、たすけ…」


 餓死で動けぬまま倒れていた人族は全て食われてしまった。

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