第7話 玩具地獄へ堕ちた奴隷商と孤児院の大人 3 おしおきのおしりぺんぺん、犠牲のかくれんぼ

「「うはぁぁぁぁぁ!!」」


 生前、ジンバイとマザーは孤児院の自室で毎晩晩餐をしていた。


 テーブルの上には、珍しい肉やワインがありそれらは孤児院の経営費から使われた物だった。


「それにしても、あの偽聖女様には感謝しないとなぁ!!」


「ほんとねぇ!! 嘘泣きで石投げてたら、バカな奴らが同情して金や食べ物くれて…私は宝石がよかったんだけどねぇ…」


 シスター服を脱ぎ、肌着姿で指輪やイヤリングを付けたマザーが酒を一気飲みした。


 ジャンヌの処刑時に泣きながら石を投げていた二人の姿に、周りの人間は同情して様々な品物をくれた。もちろん嘘の涙を流し力いっぱいにジャンヌの顔に石を当てて。


「さぁて、これからもガキどもを売ってもうかるぞ!!」


「そうね、そうしたら新しい、お仕置き道具買ってくれない? それと、宝石も」


「もちろん、ガキどものお仕置きが必要だからな!!」


 孤児院で談笑するジンバイとマザーの過去。地獄の主であるジャンヌはあらゆる者の過去を見ることができ、ジャンヌは深いため息をついた。


「ごめんなさい、罪なき子供たち…私が安易な平和を作ったせいで、あなたたちの未来を無残な物にしてしまった」


 天国にいる子供たちに向け謝罪はするが祈りはしなかった。すでに聖女ではない自分には何かを祈る資格はないとすでに割り切っている。


「未来ある子供たちを弄んだ者たちには、その身全てを未来永劫弄ばれる罰を…」


 子供たちの悪い記憶から生まれた白き巨人たちの目を借り、かつて自分の名を冠して作られた孤児院で行われている残酷のお遊戯を見る。



「夢よ…これは夢よ…さめて、さめてよぉぉぉぉ!!!!!」


 ドンドン!!


 泥の山を見てマザーが悲鳴を上げテーブルに向け自ら頭を打ち付けた。


 これは夢なんだ、早く目をさましてぇとマザーは爆殺されている奴隷商の頭かしらと同じように夢の中だと信じていた。だが、どんなに打ちつけ額から血を流そうが何も変わらない。


 それどころか、テーブルの上にあった食器と泥が床に落ちて子供たちを不機嫌にしてしまった。


「「まざーがごはんをそまつにした!!」」


「「いつも、ぜんぶたべろっていったのに!!」」


「「たべものをそまつにするのは、だめ~~」」


 マザーは生前まずいパンとスープに文句を言う子供たちに「残すな、全て食べろ」と言っていた。


 子供たちはマザーをつまみお仕置き部屋へと連れていく。お仕置き部屋は拷問部屋となっており子供をいじめるのが好きなマザーが施設の運営資金を使い作った部屋だった。


「やめて!!やめて!!やめてぇぇぇ!! 謝るからやめてぇ!!」


 O字の鉄リングに拘束されて子供たちに臀部を向ける姿勢にさせられる。マザーは必至に謝るが、子供の一人がマザーの臀部に向け指をデコピンの形にして向けた。


「「おしおきの、おしりぺんぺん!!」」


バシィ


「ひぎぃぃぃぃっっっっ!!!!!」


 たった一発のデコピンでマザーの骨盤や足の骨が折れた。拘束されたマザーが激痛で暴れるが拘束は解けず地獄のデコピンは続いた。


バシィ!! ベシィィ!!


「うぐぅぅぅぅぅ!!!!!! いだぁぁぁぁぁぁ!!!!! やめでぇぇぇぇ!!!!! じんじゃう!! いだぁぃぃぃぃぃ!!!!!」


「「おしりぺんぺん!!」」


「「ひゃくたたき!!」」


 食べ物を粗末にしたマザーのお仕置きは過酷な物だった。強力なデコピンが次々とマザーの下半身の骨を砕き、血管を破り青紫になるがそれでもお仕置きは終わらない。


「「9、じゅ…あれ、まざーうごかなくなった?」」


「「じんじゃったから、1からやりなおし!!」」


「「ひゃっかいたたくまでやめないぃ!!」」


 全ての骨が折れ絶命したマザーのお仕置きがリセットされた。


 生き返っても拘束されたままのマザーは1から凶悪なデコピンを受け7、8回デコピンを受けたところでまた絶命してやり直しになる。


「やだぁぁぁ!!!!! うげぇぇ、ぐげぇぇぇぇ!!!! やべでぇぇぇ!! おじりが、いだぁぃぃぃ!!!! いだぁぁぁぃぃぃぃぃ!!!!!」


 生き返るたびに、マザーは子供のように許しの声をあげるが子供たちはお仕置きをやめなかった。



「そ、そうだぁ!! かくれんぼ!! かくれんぼをしよう!!」


 全身泥まみれになったジンバイが子供たちに提案した。他の大人達は何を言っているんだと驚くが、すぐにジンバイは話を続けた。


「そ、そうだぁ!! 隠れる場所は施設の中だけで、外にはでないようにしよう!!」


 子供たちが施設の中を探している内に自分だけ隠し通路から逃げる。


 子供たちがバカ正直に施設の中だけ探していれば、外に逃げたと気づくのに時間がかかるはず。奴隷商と取引しているジンバイが思いついた作戦だが他の大人達は気づいていない。


(馬鹿どもが、俺には逃げ道があんだよぉ...)


 ジンバイは自分を救世主のような目を向ける大人達に心の中で毒つきつつ、作り笑いをしながら子供たちに向け話す。


「い、今から僕たち大人は隠れるから二時間…いや、一時間数えてから見つけに来てくれ」


「「え~ながいよ」」


「「かくれんぼなんて、やりたくない」」


 子供たちがごねてしまいジンバイは焦る。とにかく今はこの化け物たちから離れて隠し部屋に行かなくてはならない。隠し部屋は外につながっており、施設の外に出られる。奴隷商と万が一何かあった時の保険をジンバイは用意していた。


「そ、それじゃこうしよう…」


 ジンバイは手足を椅子に縛られ動けず泥まみれの4人の大人達を見て、


「そこの大人達をバラバラにして遊んでいいから…全員で4人だから4分待ってくれ」


 ジンバイの凶悪な発言に周りの大人たちは凍りついた。


「い、いんちょう…な、なにをいって…?」


「やめてよぉ、私たち、あなたの言うことずっと聞いてきたのにぃぃぃ…」


「くそぉ!! この悪魔!! ふざけやがって!!」


「おい、助けてくれぇ!! あの悪魔の言いなりになっていいのかよ!?」


 たった4分の時間稼ぎのために生贄となった4人は叫んだ。自分の命が一分に使われてたまるか、助けてくれと4人は同僚に声をかけるが無視された。


 同僚たちはジンバイに逆らうのも、子供たちに蹂躙されるのが嫌で自分の命を優先して4人を見捨てる選択をした。


「「う~ん、じゃぁ、みんなみつけたらもっとあそんでくれる?」」


「「も、もちろん!! みんなみつけたら、いっぱい遊んで上げるよ!!」」


 ジンバイは両腕を広げいつも子供たちをだましている嘘の笑みで答えた。


 とにかく時間だ、たった4分でもすぐに隠し部屋に行ける。周りの人間を全て敵に回して白い目を向けられてもジンバイは気にしていない。


「「わかった!! おそとにはでちゃだめだね!!」」


「「それじゃ、かぞえるね…い~ち」」


「や、やめろぉぉぉ!!」


 子供の一人が椅子に縛りあげている男の職員の首をつまみいじり始めた。骨や何かが潰れた音と共に、ジンバイが生き残るための仲間を犠牲にしたカウントダウンが開始された。


「お、おぃ!! どうすんだよ!!」


「と、とにかく逃げるぞ!!」


 カウントダウンが減り大人達が焦って逃げた。


 かわいい少年を夜な夜な部屋に連れ込み楽しんでいた20代前半の女は、背中に大きな穴が開いて綿が飛び出ている人形の中に隠れやり過ごすことを選んだ


 老人と同じ少女を玩具として抱きしめ撫でていた太った男と、少女に恥ずかしい下着をつけさせ鑑賞していた細い男の二人組は、壁に空いていた穴に入った。




そして、残りの者はジンバイの跡を追っていた。


「い、院長!!」


「俺たちも助けてくれぇぇ!!」


 ジンバイは追ってくる大人(足でまとい)を見て舌打ちして足元に転がっている短い釘を持つ。巨人となった子供たちに合わせて孤児院も大きくなっており、ちょうどバッド代わりに仕える釘で一人、また一人と頭を殴打した。


「てめぇら、じゃまなんだよ!! そこでガキどもに遊ばれてろ!!」


 血だらけで倒れた者をそのまま見捨ててジンバイは釘を持ったまま走った。贅沢な暮らしをしてろくに運動などしていないのに、死から逃れたいためかすぐに興奮状態のおかげで疲れを感じず走り続けて自分の部屋にたどりつく。


「はぁ、はぁ…こいつを、動かせばぁ!!」


 豪華な宝石や服が飾られた部屋の隅にある穴に持っていた釘を刺し壁が回転した。大枚を叩いて作らせた仕掛け扉の奥に釘を捨てて進んだ。


「ざまぁみろクソガキども!! 誰がおまえらなんかと遊ぶかよ!! はぁ、はぁ!! おれは自由だ、自由だ!!」


 暗い一本道を走るジンバイ。すでに4分が過ぎており、4人の生贄たちは首をちぎられ、ハサミでバラバラにされて、巨大な手足でつぶされて無残な姿になっていた。そして、他の隠れていた者達は。


「「あれぇ、このおにんぎょう、しゃべってる~~」」


「「つぶすと、こえおおきくなる!! ぐにゅ~~」」


「「や、やべでっ!! ぐげぇ、ぶぇぇぇ!!!!! 」」


 中から赤い液体をたらす穴の開いた人形から女の声がした。この二十代の女は、かわいい容姿を持つ少年の体中を触り舐めて屈辱を与えて少年たちの心を潰してきた。


 かつて、自身のお気に入りだった子や飽きて奴隷商に売った子が人形を力強く握り潰して女を心も体もつぶした。


「「あぁ、あながちいさいからゆびはいらないよぉ」」


「「かべ、こわす?」」


「「う~ん、そうだ!! へんたいには」」


「「これで、いいかぁ」」


「「いっぱいいれちゃぇ!!」」


 子供たちは女子の巨大な下着を穴に入れていった。すでに、穴の中にいる二人の正体は気づいており、二十枚以上の下着を入れたところで中の二人は下着に埋もれて逃げ場がない。


「く、くせぇぇ」


「なんの臭いだぁ…」


 すべての下着には、よく燃える油が染み込まれており子供が巨大なマッチを近づけた瞬間。全ての下着が燃え盛った。


「あづぅぅぅぅぅ!!!!!! うがぁぁぁぁ!!!!!!」


「いぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! ぎぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


 巨大な下着に埋もれているせいで身動きが取れないまま、少女を弄んだ二人は逃げ出すこともできず業火に焼かれた。


「「もえろ、もえろ!!」」


「「へんたいはもやしちゃぇ!!」」


「「へんたい、しょうどく!!」」


 子供たちがはしゃぐこと数分後。小さな穴の中には下着と人間だった物の灰山ができていた。


 そして、他の場所では、


「「あっ!! たおれてる!!」」


「「まだ、いきてるよぉ!!」」


「「ぴくぴくしててきもちわるい!! えい、えい!!」」


 ジンバイによって倒れた大人(足手まとい)たちが子供たちにプチ、プチと踏みつぶされた。


「「あとは、いんちょうせんせいだねぇ!!」」


「「うん、いこう!!」」


 この生贄のカウントダウンを使ったかくれんぼで残ったのはジンバイだけだった。大人達の死体をそのまま放置して子供たちは施設の外に出た。



「はぁ、はぁ、クソ!!」


 巨大と化した隠し通路を何十分もかけて走るが一向に出口が見えず、息が上がっていた。


「くそぉ!! 魔法があれば、あんなガキども!!」


 ジンバイは悪態をつき壁によりかかる。豚の巨人に食われたブオウや貴族には魔法の血が流れているから魔法が使え戦争では重宝された。


 だが、魔法の血のない平民や奴隷は暗黒時代では基本使い捨てにされ、ジャンヌはこの魔法主義の習慣の差別を変え民衆を守ろうとしたが業火に焼かれた。


 それも、守ろうとした民衆たちの前で。


 平民出身で魔法が使えないジンバイは魔法を使う貴族たちにバカにされ、見返すように勉強をした。けれど、平民が習える程度の学問では何もできずせいぜい学問に触れる機会がなかった子供に教える程度しかできなかった。


 子供たちの勉強を見て、周りから信頼され院長になったジンバイ。だが、貴族たちに馬鹿にされた苦い記憶が次第に膨らみ、貴族に負けないようにと金に執着し始めた。


 そして、金の種にある子供たちを奴隷商に高く売り私腹を肥やした。子供の中には魔法が使える子もいて、それがジンバイの劣等感を刺激してマザーの拷問部屋で痛めつけた後に奴隷商に売った


 高い酒やうまい肉。美しい容姿のマザーを相棒にしても貴族や魔法に対しての劣等感の苦しみは解消されなかった。


「クソッ、クソッ!! 俺には金があるっ!! 売れるガキだっていたんだぁ!! こんなところで死ねるか!! 」


 ここを脱出したら、またガキを痛めつけて売りさばいてやる。もう生前の暮らしなどできないはずなのに、ジンバイは重い足を進め小さな光が見え穴を潜った。


「あぁ、やっとでれ…がぁ、ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 穴を潜った瞬間、バシンッと大きな音がなりジンバイはネズミ捕りの罠に引っかかった。


 強力なバネではじかれた鉄の金具がジンバイを挟み上半身の骨がいくも折れて苦痛の声を上げ暴れる。


「いでぇぇ、いでぇぇぇ!!! なんなんだよこれぇ!! くそぉぉぉ!!!!」


 ネズミ捕り罠から逃れようと、体を挟む金具に手をかけるがうつ伏せ姿勢で力が入らずビクともしない。


 秘密通路は、施設の外に植えられた畑につながっているが野菜は全て枯れて、土は不気味な色をして空はジャンヌの瞳と同じ紅蓮の雲がかかっている。


「「み~つけたっ」」


「ひぎぃ!?」


 ジンバイはいつのまにか子供たちに囲まれていた。自身の劣等感を隠すために金の種として売りさばいた子供たちに見下されてジンバイの中で何かが切れて吠えた。


「なんなんだよおまえらぁ!! おれをそんなに見下してたのしぃぃのかよ!!!! この化け物どもがぁぁぁ!!!!!」


 痛みや興奮で我を忘れ、化け物のように叫んだ。だが、子供たちはおびえる様子もなく、ジンバイを捕まえているネズミ捕り罠を持ち施設へ戻る。


「「いんちょうせんせい、うそついた」」


「「かくれんぼ、しせつのなかだけだったのに」」


「「だからおしおき~~」」


 子供たちの声を聴き、先ほどまで叫んでいたジンバイは頭が冷えたのか泣きながら口を開く。


「ま、まって、まってくれ…せ、せんせいは嘘なんてついて…」


「「そうだなぁ、隠れる場所は施設の中だけで、外にはでないようにしよう」」


 子供の一人がジンバイの声をマネて言った。さらに、子供たちは次々とジンバイそっくりの声を出し続けた。


「「も、もちろん!! みんなみつけたら、いっぱい遊んで上げるよ!!」」


「「ざまぁみろクソガキども!! 誰がおまえらなんかと遊ぶかよ!! はぁ、はぁ!! おれは自由だ、自由だ!!」」


「「くそぉ!! 魔法があれば、あんなガキども!!」」


 かくれんぼを始める際に言った言葉や秘密通路の独り言までマネされてジンバイの顔が蒼くなった。


 この怪物たちからは決して逃れられないと。子供たちは施設の敷地内であればどこにいようが大人の場所を感知だけでなく、わずかなつぶやきすらも逃さない地獄耳もあった。 


「「いいんちょう、おしおき!! まざーといっしょのおしりぺんぺん」」


「「ちがうよ~うそついたからハリ、ひゃっぽん!!」」


「「ウソついたら、ハリせんぼんだよ」」


 拷問部屋につきデコピンのおしりぺんぺんを受けていたマザーがいた。


 拘束が解かれているが子供たちにひたすらデコピンされ続け何度も死んで生き返りを繰り返していくうちに精神が壊れて「いだ、ぃぃ」とかすれた声を出し生気がない。


「やめろ…やめろ…やめろ…やめろ…やめろ」


 罠の上でうつ伏せになり、子供たちに臀部を向けているジンバイが首を横に振る。


 自身の劣等感をぬぐえず、嘘の笑みで子供たちを苦しめてきた男の臀部に鋭い針が刺さった。


「いぃ、ぎぃぃぃぃぃ!!!!! 」


 後ろが見えない恐怖と皮膚を貫通した針の痛みに泣き叫び失禁した。


 針は臀部だけでなく、足や背中など皮膚の下にある骨を砕きながら貫通した。


「ぐぇぇぇ、ぐぉぉぉ!!!!! ぶぇぇぇぇ!!!!!」


 腎臓や腸などの臓器に針の穴が開き、口や鼻から大量に血を流す。それでも、ジンバイだけでなく精神が崩壊したマザーや奴隷商らは決して死なない。


「いやだぁぁぁ!!!!! いだぃよぉぉぉぉ!!!!! たすけでぇぇぇ、こんなのいやだぁぁぁぁぁ!!!! だしてぇぇぇ、たすけでぇぇぇ!!!!! ここからだしでぇぇぇぇぇ!!!! だれか、たすけでぇぇぇ!!!!!」


 二十本以上の針が体中を貫通して、ジンバイは子供のように泣き叫んだ。


 既に地獄へ堕ちたジンバイに助けなどなかった。かくれんぼのカウントダウンで生贄にされ、ジンバイにネジで殴殺された仲間たちがすでにジンバイの悪行を他の者に告げており、ジンバイは地獄で孤立してしまった。


「「ウソついたら~」」


「「ハリせんぼん~~」」


 ジンバイの声を無視して地獄の子供達は針を突き刺していく。例え、針を千本刺してもジンバイの地獄の遊びはまだ始まったばかりだった。

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