2 玩具地獄へ堕ちた奴隷商と孤児院の大人

第5話 玩具地獄へ堕ちた奴隷商と孤児院の大人 1 残虐のたたかいごっこ、爆発ごっこ

「子供たちをかえせぇ!!」


「この偽りの聖女が!!」


 磔にされたジャンヌに孤児院の大人達が石を投げて訴えた。居場所を亡くした子供たちを我が子のように育てたのに、ジャンヌに奴隷商へ売られその未来を閉ざされた。その怒りを石に込めてひたすら投げ続けた。もちろん、それらはすべて演技だった。


 ジャンヌが自分の私財を使い建てた孤児院があった。聖女の名を使った「ジャンヌ孤児院」には戦争で親を失った孤児たちが住み、運営する大人たちは皆優しかった。


 だが、平和の中で堕落した大人たちはいつしか奴隷商と組み何も知らない子供たちを売りさばいて利益を得ていた。消えた子供たちは噂になりちょうどジャンヌがあらぬ罪で投獄されたのを利用して、ジャンヌが子供たちを奴隷商に売ったと嘘の告発をした。


 ジャンヌの処刑時には嘘の涙を流し「子供たちを返せ」「この悪女」と石を投げた。


 そして、子供の未来を奪った奴隷商と孤児院の大人たちはジャンヌが処刑された後も子供たちを売りさばき贅沢な暮らしを続けた。


「おら!! 顔隠すんじゃないよ!! うまく殴れないじゃないか!!」


「や、やめでぇ…」


「いたいよぉ…やめでぇよぉぉ」


「うっさいわね!!」


 ドゴォ!! ボコォ!!


 棒をもった女性が教育と言いながら子供たちの体中に棒を打ち大きな痣作る。外部からみた孤児院での良い大人を演じるストレスをこの女はこうやって発散していた。そばに控えていた奴隷商の男達は「やりすぎると価値が下がるぞ」と忠告しても子供を殴打するのをやめなかった。


 女がストレス解消で撲殺してしまった死体や顔の骨が折れて内出血だらけで売れなくなった商品に黒い玉がくくりつけられる。大柄の男。奴隷商の頭かしらが泣いて「やめてでぇ」「たすけでぇぇ」と叫ぶ怪我した子供たちを見て満面の笑みを浮かべた。


「おらぁ!! 爆ぜろぉぉ!!」


 子供たちから大きく離れた場所から火の矢を放ち、体中に巻かれた爆弾に引火して子供たちは爆殺される。


「いやぁ、お頭かしらの爆弾趣味はすごいけど耳が…」


「ばかっ!! 聞かれたら新作の実験台になるぞ」


 手下たちが小声で話し、これまでヘマをした同僚が頭手製の爆弾で散った話で身を震わせた。爆弾好きの頭かしらは、自身の手製爆弾を怪我や病で使えなくなった奴隷で実験するのが好きだった。恐怖で失禁して命ごいする奴隷ゴミの醜い姿と、その命が散る瞬間に快楽を覚えた下種だった。


 孤児院の汚い大人と、命を弄ぶ奴隷商人たちに身も心も好き放題された子供たちの魂は天国で不自由なく過ごし、大人達に蹂躙された悪い記憶は地獄の怪物となり下種共を蹂躙していた。



「たたかいごっこしよう!!」


「わ~い!! それじゃ、おばちゃんつかってみよう!!」


 ブオウを食らっていた巨大豚と同じ大きさの子供たちが巨大な孤児院の中で無邪気に笑っていた。服は着ておらず白い裸体の子供達。その正体は大人達に蹂躙された悲しみや恨みの記憶から生み出された存在であり天国にいる本物の子供たちではない。


「いやぁぁぁ!!!!!」


「く、くるな!! くるな!! 化け物!!」


 カラフルなおもちゃ箱の中には、孤児院の大人達が入れられていた。売り飛ばしたはずの子供たちが巨大な怪物となり自分達を見下ろしているのに驚き腰を抜かす。


「よ~し、ボウおばちゃんでたたかわせよう」


 棒おばちゃんとはいつも子供たちを棒で叩き「しつけ」と言い虐待してきた30代の女性だった。白く巨大な手が棒おばちゃんをつかみ、外に出ると深く掘られた砂の穴に落とした。


「げほっ!! だ、出してぇ!! 何をするの!?」


 砂でせき込みながらも棒おばちゃんは子供たちに手を伸ばし助けを求める。


「おばちゃん、いつもボクたちをたたいてたから」


「つよいかも」


「そうだよね。つよいよね」


 気に入らないことがあればすぐに頭やお尻を棒で叩かれてきた子供たちが口々に言い、砂場の穴に黒い何かが落とされた。


「ひぃ!! いやぁぁぁぁ!!!!! こないでえぇぇぇぇ!!!!!」


 棒おばちゃんの目の前には巨大な蟻がいた。子供たちが言っていた「たたかいごっこ」とは大人達と虫を戦わせる残虐な遊びだった。


 蟻は棒おばちゃんを見ると鋭い黒い牙を動かした、蟻を見て棒おばちゃんは逃げるが。


 「いやぁぁぁぁ!!!!!」


 砂を必死にかき這い上がろうとするが、蟻地獄のように砂に戻されて上がることができない。やがて、背後から来た蟻につかまりのしかかられる。


「おばちゃん、ちゃんとたたかってよ!!」


「たたかえ、たたかえ、たたかえ!!」


 子供たちを棒で虐待して楽しんでいた女は、今度は子供たちに玩具として見下されている。恐怖で既に腰にある棒を取ることなどできず、そのまま首を蟻にかみつかれた。


「あぐぅぅ!! いだぁぁぁぁ!!!!! たづげでぇぇぇ!! お願い!! もうだだがないがらぁぁぁぁ!!!! ゆるじでぇぇぇ!!!!! ぐぇ、えぐぅ…」


 蟻の牙から獲物を溶かす酸が流れ、首の皮膚や骨が解けて声がかすれる。そのまま、抵抗もなく蟻に食われてしまい子供たちはがっかりと首をかしげた。


「あ~あ、おばちゃんたべられちゃった。つまんない」


「それじゃ、こっちのぶきのあるほうにしよう」


 孤児院の大人達が入れられた箱とは別のおもちゃ箱には、剣や鞭など武器を持った奴隷商人たちが入れられていた。


「く、くるんじゃね!! この化け物ども!!」


 自分達に伸びてくる手に向け奴隷商人たちは武器を持ち応戦するが、子供たちの手には傷がない。地獄に堕ちた者はエルフの魔法だろうがドワーフの怪力だろうが地獄の住人に対して無力なのだ。


「あぁ、もうめんどうだぁ!!」


「ぜんぶいれようぜ!!」


 子供たちは奴隷商を捕まえるのをあきらめ、おもちゃ箱を蟻のいる穴に傾けて全員が穴に落ちた。


「ひぃ、ひぃぃ!!!!」


「ば、バケモンだ!!」


 すでに捕食された棒おばちゃんの死体と、巨大蟻を見て奴隷商たちは叫んだ。


「くそ!! このぉぉぉぉ!!!!」


 奴隷商の男達はそれぞれ武器を持ち迫ってくる蟻を囲んだ。戦闘経験があったおかげで誰一人も死なずに蟻の動きを鞭やロープで防ぎ、首を切り落とすことができた。


「あ~あ、やられちゃったね…じゃつぎは…」


「おい、ふざけんなぁ!! このクソがきども!! くそったれな、夢だぜ!!」


 子供たちを爆殺していた奴隷商の頭かしらが叫んだ。どうせ酒の飲みすぎで見ている最悪な夢だ、と思い子供たちを挑発した。頭かしらの行動を見て男達も「お前らなんてこわくない」「ガキがっ、ぶち殺してやる」と挑発した。それが、自分達を絶望に追い込むことになるとは知らず。


「もうっ!! うるさくていや!!」


「ありはあきたから、アレにしよう!!」


「そうね、アレならつよいから」


「そっか、アレだったらおもしろいかも!!」


 子供たちが口々に言う「アレ」が落とされた。緑の体に鋭い牙と鎌を持った蟻より巨大なカマキリだった。両手の鎌をこすり合わせてまるで剣同士がこすれた金属音が鳴る。


「おい、いい加減にしろよクソガキどもぉ!! そんなんで…」


 びびると思ったのかよ と言うはずが、鞭を持った男の首が落とされた。気づいたら、カマキリは大きな羽をはばたかせ、男達の背後にいた。


「ひぃ、ぎいぃやぁぁぁぁぁ!!!!!」


 仲間の首が落とさられ、奴隷商達がパニックを起こし武器を捨て砂の壁を這い上がろうとする。だが、決闘所は蟻地獄となっており這い上がない。


「ぐげぇぇぇ!!!!」


「いだぁぃぃぃ!!!!!」


「だづげでぇぇぇぇ!!!!!!」


 背後からカマキリが男達の腕や足を切り落とし、腕の鎌が紅に染まっていく。


 このカマキリは先ほどの蟻とは違い捕食ではなく、血を求めて一人また一人と切り裂く。


「くそぉぉぉ!!!!!」


「このバケモンが!!」


 奮闘して銃で応戦しパンパンと銃声が鳴るが、鎌が銃弾を切り次の瞬間には、銃ごと男達はバラバラに散った。


「はぁ!? 夢にしてはずいぶんと、本格的だなぁ!!」


 頭かしらはまだこれが夢だと思い笑みを浮かべた。腰に下げた袋から黒い玉を出し、血を流しているがまだ生きている仲間のそばにいるカマキリに向け投げて玉が爆発した。


「爆ぜろぉぉ!!」


 ドォン!!


「はっはは!! バケモンがぁ、調子に乗んなよ!! 俺様特性の爆弾は、何度もガキどもをバラバラにしてきたんだぁ!!」


 頭かしらは自身の切り札を高らかに自慢していた。手製爆弾の威力を試すために何度も怪我や病気で使えなくなった子供たちに爆弾をくくりつけて爆殺してきた。嫌がる少女や、恐怖で失禁した子供たちが肉の塊になる姿に興奮する、最悪の趣味。


「おい!! ガキども!! 目が覚めたら…」


 頭かしらの胸をカマキリの刃が貫いた。口や鼻からあふれる血や息苦しさで頭はこれが夢ではないと気づく。だが、気づいたとしてもすでに手遅れだった。カマキリは頭の体を真っ二つに引き裂き残りの奴隷商たちを切り刻んでいく。


「あ~あ、ばくだんおじさん、しんじゃった」


「ばくだんあるから、いけるかなって、おもったのに」


「じゃ、つぎはぼくたちも」


「ばくだんであそぼぉ!!」


 カマキリの惨殺劇が終わり子供たちは火薬を集めた。


「ひ、ひぃぃぃぃ!!!!!」


 おもちゃ箱でよみがえった頭かしらはこれが夢ではないと思い知った。胸を貫かれた痛みや、体を割かれた感触。カマキリに蹂躙された奴隷商たちは恐怖で震えた。


 子供たちに暴力をふるい人身売買をしてきた彼らは、今度は子供たちに遊びという名の暴力により何度も死ぬことになる。


 おもちゃ箱に火薬が大量に入れられ、子供たちの手には巨木ほどの火のついたマッチが握られていた。


「や、やめろ…」


 これまで子供を爆殺してきた頭かしらが失禁した。そして、子供たちは奴隷商のおもちゃ箱にマッチを放り投げ逃げると口をそろえて、


「「「はぜろぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」


 頭かしらの言葉をまねた瞬間。ドォォンと巨大な音を立てておもちゃ箱は木端微塵になる。


「すごかった!!」


「ばくはつたのしぃぃぃ!!!!!!」


「もういっかい、もういっかい!!」


 興奮する子供たちの前でおもちゃ箱が再生する。もちろん、中にいた奴隷商たちも生き返り再び火薬が入れられ「はぜろ」の言葉と爆発は十回以上続いた。


 ここは、玩具地獄。子供の未来を弄んだ大人達が永遠に弄ばれる地獄。


 奴隷商だけではなく、虐待して売り飛ばした施設の大人達も残虐に弄ばれる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る