第51話 サークル新設の過程

 話はサークル設立の為に職員棟へ行った時へと遡ります。


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 私はノワールを後ろに従え、スキップでもしだすんじゃないかというほどウキウキとしていました。


「んふふ、何のサークルにしましょうか。やっぱり戦闘系のサークルかしら」


「外へ出る方が何かと都合が良いので、探索系のサークルもよいかも知れません」


「それも一理ありますわねー」


 何を目的としたサークルにしようかノワールと喋りながら歩いていると、職員棟入口へとつきました。

 サークル設立の申請は誰に出していいのかもわからなかったので、取りあえずシフロート先生の所へと行こうと思い、道行く方に尋ねながら進みます。

 やがてシフロート先生が居るという『1年担当』の教員室へとついたので、シフロート先生の姿を探します。


「んー、あ、いましたわ。シフロート先生」


「はい?あぁ、マシェリーさん。どうかいたしましたかな?」


 シフロート先生に声をかけると優しい笑顔で対応してくれ、私も先生方にまでは悪役ムーブをする気はなかったので、丁寧に来た理由を説明します。


「成程、ではこちらの『サークル設立申請書』に必要事項を記入をして、その後私に渡してくれればよろしいですぞ。その後は、1週間以内に返答を私からお伝えいたします」


「解りましたわ」


「注意事項を説明すると・・・・・・」


 シフロート先生から申請書を受け取ると、その場で数個注意事項を伝えられます。

 それは、あまりにおかしな活動内容だったりすると不可、サークルの部室は申請が通ってから学園側が指定する等、注意事項とも言えないモノでしたが、最後に少し悩ましい事を言われました。


「そしてこれが最後ですが、サークル設立にはメンバーが10人必要です。明らかに名前だけを貸したような状態は不可となっており、これは設立後に顧問教員がチェックをしますぞ。以上です、何か質問はありますかな?」


「えっ!?10人必要ですの?それも幽霊部員は不可?」


「はい。といっても、週1、2回でも出ればいいので、ご心配なく」


「そうですの・・・」


 週1でも顔を出せばいいので条件緩いですよーと言われましたが、そもそも私達の場合10人集めるというのがネックになっていました。

 知っての通りだとは思いますが、私は学園内で悪役ムーブを行っています。それは初めてもう2か月ちょっとになり、他学年にまで薄っすらと噂が広がっているほどでした。

 そんなことになっている私達なので、後4人も人を連れて来ると言うのは結構難しい事でした。


「あー・・・ごほん・・・」


 シフロート先生も私が眉間に皺をよせているのを見て察したのか、ちょっと気まずそうな顔をした後、声のトーンを控えめにして話しかけてきました。


「マシェリーさん達が本当はいい子だって私は思うのですが、噂が広がってますからね。まぁ実際そのような現場も見ているわけですが・・・何かこう、わざとやっている様な・・・」


 どうやらシフロート先生、私の悪役ムーブに何か勘づいているご様子。他の教員の方々は騙せている様な気がしていたのですがねぇ・・・

 勘もいいし性格もいい、おまけに顔もいい。完璧なイケおじ紳士ですわね等と考えていましたが、今は優しい目をしたシフロート先生を誤魔化さなくてはと思い、日本で身に着けていた秘儀『曖昧に笑っておく』を発動しました。


「あー・・・その・・・オホホ・・・」


「む・・・?あー・・・いや、なんでもないですぞ」


 察し力とイイ人力が高いシフロート先生はそれ以上何かを言うのを止め、代わりにこんな提案をしてきました。


「あー、良ければ私が他の生徒に声をかけますぞ?」


「え?本当ですの?」


「ええ、活動内容を見てから、それに合った人に声をかけてみましょう。きちんと人を選びますのでその分少し時間はかかるかもしれませんが、良いですかな?」


「勿論ですわ!ありがとうございます先生!」


「いえいえ、では申請書を受け取り次第動き始めますので」


「はい!直ぐお持ちいたしますわね!では後程!」


「ええ、いつでも来てください」


 シフロート先生からのとてもありがたい提案を受ける事にして、先ずは申請書だと部屋に戻ります。

 留守番していた面々に挨拶をすると、私は早速教員棟で聞いてきたことを話します。


「・・・ってことですの」


「成程」


「じゃあ活動内容をさっさと決めて申請書だそやお姉様」


「うふふ・・・何にします・・・?薬草採取サークルとか・・・?」


「あ、それなら私も得意です!」


 とにかく活動内容について決めなければいけなかったので、皆でワイワイと相談をしながら案を出していきます。

 薬草採取サークルから始まり、魔物素材採取サークル、古代遺跡探索サークル等々いろんな案が出ました。


「んー、悩みますわねぇ」


「「「「んー」」」」


「私の一押しとしては、お嬢様と大自然でBBQ出来るサークル~女性限定~でございます」


「「「「あー!」」」」


「却下ですわ。と言うかそれ、多分申請通りませんわよ」


 真面目なのかネタなのかよく解らない案を出してきたノワールを切り捨てつつ、出された案の中で良さそうなモノをピックアップして1個1個考えていきます。

 案の多くは既存のサークルと活動内容が被っていますが、新設すれば私がルールを決められるので、寧ろ有りです。


(あんまり奇をてらってもあれですし、既存のサークルに同じようなモノがありますけど、活動内容的に一番応用が効くこれがいいですわね)


 あれこれ考えた結果、私的にはこれかなという案を上げてみる事にしました。


「私的には『冒険家サークル』がいいかなと思うのだけれど、いかがかしら?」


「イイかと思われますお嬢様。それですと色々応用が効きそうですし、何よりお嬢様が選んだもの、私は大賛成でございます」


「「「「おなじくです」」」」


「ふむ・・・」


 私に倣えみたいな感じでちょっとあれですが、正直書類に記した内容通りに活動しなくてもいいですし、何かあってもこれなら誤魔化しやすいでしょう。


 ならば・・・


「じゃあ『冒険家サークル』で決定ですわね。活動内容等は適当に書いてしまいますので、署名だけお願いしますわ」


「「「「はーい」」」」


「こちらペンとインクでございます」


 深く考える事もないかと『冒険者サークル』に決定をし、サラサラっと必要事項を記入してしまいます。


 記入が終わると私は直接シフロート先生へ書類を提出しに行き、お願いしますと丁寧に礼をして書類を渡してきました。・・・これは丁寧にしておけば印象も良くなって尽力してくれるかなとの打算です。

 少しだけ効果があったのか、何時もより笑顔が1割増しになったシフロート先生に後を託し、私達は申請が通る日を待つこととなりました。


 その結果が・・・



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「サークルメンバーになったグウェル・フォン・ファースタットだ。よろしく頼む」


「同じくペイル・フォン・クロスブレーです。よろしくお願いします」


「同じくサミュエル・ド・ラッセルです。よろしくお願いしますね」


「私はイリス・ウェンディゴブルーですっ!よろしくお願いしますっ!」



 これでした。



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 マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「BBQ・・・パリピかな?」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。

 ☆や♡がもらえると アナタも私と一緒にBBQでパーリーですわ。


 マシェリーの一口メモ

 【ロマンスには、古代に超魔法文明があったとかなんとかいう設定がありますわ。古代遺跡はその名残ですわね。因みにですが、RPGパートでダンジョンとして探索もできますわよ】

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