第44話 予定されていた出会い
何時ものグループ+1人で入学式が行われる講堂へと辿り着くと、並べられた席にはまばらに人が着席していました。
入口に張ってあった案内には『決まった席はございませんのでご自由にご着席下さい』とあったのですが、暗黙の了解なのか最前列から身分の高いグループで固まっているらしく、最前列中央には身分が一番高いあの方とお付きの2名、そのグループの左側には侯爵家のグループ、そして右側には・・・本日の第一目的である1名が座っていました。
(さてと・・・いよいよ本命がお目見えですわね。そしてあちらにとっても初お目見え、更に好感度調整も有りますから・・・かましますわよ!)
「行きますわよ皆様。私に相応しい席へ」
「「「「はい」」」」
「え?あ・・・はーい・・・」
急遽加わったイリアスはどう振る舞っていいか解らないようでしたが、他の4人は私と知り合って早3年程、勝手が解っているので直ぐに返事をしました。
そうして私達のグループは最前列へと向かって行くのですが・・・
「・・・ひっ!」「・・・うわっ!」「・・・ちょ・・・なにあの・・・」「ばっ・・・黙って!」「あれが・・・あの・・・」「貴族様の中でも一際ヤバそうだぞあのグループ・・・」
等と、原作でも無かった様なざわめきが生まれてしまい、最前列に座っていた方達も何だ?と振り返ってしまいました。
(あらぁ・・・。ま・・・まぁ大丈夫ですわ。これくらいなら問題なし問題なし)
ちょっとだけ予定が狂ってしまったのですが問題は無しとして、本来考えていたムーブを取ります。
「・・・ちょっと貴女、そこどいてくださる?」
私はすでに座っていた1人の人物の前に立ち、懐から取り出した扇子でシッシッと追い払う様な動作を取りました。
普通だと私の姿を見てなんとなく察し、謝りながら去っていくのですが、その方は・・・
「・・・え?私ですか?」
『なんで?席なら周りにいくらでも開いているじゃないですか?』と言わんばかりの返答を返してきました。・・・まぁこの後実際に言うのですが。
(うーん・・・。立場が変われば見方も変わるとはこの事ですわね)
私は顔に出さない様にそんな事を考えた後、会話を続けます。
「貴女以外誰が居りますの?いいからそこをおどきなさい」
「え?でも席なら周りにいくらでも開いているじゃないですか?」
「貴女・・・私がだ「あぁ?お姉様のいう事が聞けんのかわれぇ!?」
「・・・っひ!?だれぇ!?」
そうして私がまさに名乗りを上げようかと言う時、私の言葉を遮る様にチンピラA・・・サマンサが割り込んできました。
(ちょっと!せめて私が名乗ってから入ってきてくださいまし!)
「お姉様のいう事は絶対ですよ?」
「うふふ・・・そうです・・・だからどきなさい・・・」
「あ、えっと・・・その・・・おらおらー」
(貴女達までぇ・・・!というか、イリアスまで・・・)
チンピラAに続き、B,C,Dが続き、黙っているのはノワールのみとなり、チンピラ達に絡まれた方は凄く焦っていました。
しかしです、少し予定とは違う絡み方になりましたが、この後の流れは予定通りに行くはずです。
(予定だとすぐ横の身分が一番高いお方・・・グウェル殿下が止めに入って、後日教室で出会った時に『貴方はあの時助けてくれたっ!』という感じになるのですわ。だからそろそろ止めに入ってもよろしくてよグウェル殿下?・・・グウェル殿下?)
私の可愛いチンピラ達がオラオラ―と絡んでいるのに、一向にグウェル殿下が止めに入ってくれません。何故?と横目でグウェル殿下の方を見ると、グウェル殿下は護衛共々・・・逆方向を向いて見ていないふりをしていました。
(えぇっ!?何でですのっ!?)
グウェル殿下は真面目な性格で人間としては至極真っ当なお方。魔王に覚醒して怖いものなしになるのはもう少しだけ後ですが、それでもこのような蛮行は止めに入るお方の筈。
それなのに何故止めに入らずに小鹿の様にプルプルしているのかと不思議に思っていると、ノワールがそっと私の耳元で囁きます。
「お嬢様・・・魔力が少し漏れて威圧になっております。恐らく其の所為かと・・・」
「えっ・・・あ、本当ですわ・・・」
ちょっと気合が入り過ぎていたのでしょう、私は知らず知らずの内に魔力を外へ漏らしてしまっていました。
慌ててそれを抑えて完全に外へ漏れていた魔力を止めると、その内魔王に成るだけあって魔力に敏感なグウェル殿下は調子を取り戻してようやくこちらを向き、私達に声をかけてきました。
「マシェリー様、そこまでです」
(来ましたわねっ!この次の台詞はこれですわっ!)
「グウェル殿下っ!でもこの小娘が座っているせいで私達が殿下の横へ座れませんのよ!?」
「ふぅ・・・席位良いではないですか」
「殿下っ!良くないですわっ!私達は婚約者ですのよっ!?それなら隣り合って座るべきでは!?」
「確かに婚約者かも知れませんが、それを盾に横暴に振る舞うのは良くありません」
「・・・もういいですわっ!行きますわよ貴女達!・・・行きますわよ?」
「「「あ、はーい」」」
「あ・・・は・・・はい!」
「・・・ぴ・・・ぴぃ・・・」
原作通りに会話を進め、『仕事が終わったのでクールに去りますわ』と移動しようとしたのですが、未だにオラオラとチンピラちゃん達がオラついていたので引きはがし、今度こそクールに去るのですが、去り際にチラリと絡んだ少女を見ます。
(フラグ管理はそちらではなくこちらが行いますわ、藍の聖女『イリス・ウェンディゴブルー』)
こうして私はロマンスの主人公『イリス・ウェンディゴブルー』と無事?ファーストコンタクトを終えました。
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『ではこれにて第486期の入学式を閉会いたします』
主人公とのファーストコンタクトを終えた後は普通に入学式を受け、今締めの挨拶がされた事で終わりを迎えました。
「ふぅ、終わりましたわね。皆様、この後私の部屋でお茶でもどうかしら?」
本日はこの後それぞれ寮へと入り、荷解きや明日の授業選択で何を選択するかを決めたりするだけとなっていたので、私はグループのメンバーを部屋へと招待しました。
何時もの面々は直ぐに了解してくれたのですが、新参のイリアスはまだ遠慮があるらしく、本当に自分も言ってもいいのかと聞いてきたので、私は「勿論ですわ!」とイリアスも部屋へと招待しました。
何となくここまで一緒に行動して来たのですが、私的にはこのままお友達になれたらなと思っているのです。
(ロマンスでの役割があるキャラでもないし、いいですわよね?・・・可愛いし)
もしイリアスが主要キャラやサブキャラといった話に出て来る人物ならば関わる事はしないのですが、幸いと言っていいのか彼女はモブキャラ、話に何の関わりもないのでお友達になっても良い筈なのです。
本来の悪役令嬢の私がイベントに登場する時も、信号機娘の他に何人か取り巻きが居た時もあったのでイリアスが居ても問題はないでしょう。
問題なし問題なしとルンルン気分で新しくできた友達を喜んでいると、割り振られた寮の部屋へとつきました。
「着きましたわね。ノワール、お茶の準備をしてもらってよろしいかしら?」
「畏まりましたお嬢様」
ノワールにそう事付け、私達は先に椅子へと向かいます。
そして2,3分もしない内にお茶を持って戻ってきたので、それを配ってもらうとノワールも席に着く様に促しました。
「さて・・・、イリアス」
「は・・・はい!」
「出会ってからここまで私以外を紹介していなかったので、改めて紹介いたしますわね?」
「あ、はい!そうですね!お願いします!」
出会ってからバタバタしていたので、イリアスは私以外の事はふわっとしか知らない筈です。なので落ち着いた今、改めて皆の事をイリアスに紹介する事にしました。
「先ずは先程お茶を配ってくれた方、ノワール・マクリスですわ。私の使用人兼護衛ですの。服装はこうですが、女性ですわ」
前述しましたがノワールは男物の制服を着ていて、更にモデルの様なすらっとした体型なので一見すると王子様にも見える美形です。
「よろしくお願いいたします」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
「続いてマルシア・ド・トリム。仲良くしているお友達ですわ」
マルシアは以前誘拐された時に髪を切られショートヘアーになっていたのですが、今はすっかり元のポニーテールに戻っていました。
しかし矢で射られた足は完全に元には戻らず、それを補助する為に魔道具でもあるニーハイグリーブを着けていました。
「よろしくお願いします。因みに、お姉様に不敬を行うと蹴りますよ?」
「は・・・はいっ!」
「マルシア・・・イリアスもお友達ですわよ?仲良くしなさいね?」
「・・・解りましたお姉様」
因みにですが、あの誘拐事件に関わるあれこれで、マルシアもサマンサと同じく私をお姉様と呼び始め、ちょっとアレな感じになってしまいました。
「ふぅ・・・と、続いてサマンサ・ド・マルドール。彼女も前から仲良くしているお友達ですわ」
サマンサは昔と変わらずにツインテールをした糸目の女の子・・・なのですが、彼女も誘拐された時の傷が残ってしまい、それを隠すために口元に薄いベールをしていました。
その為彼女に抱く印象は普通だと『色っぽい』とか良い感じになるのですが、ふとした時に呟いてしまった『関西弁似合いそうですわ』の発言で関西弁っぽい喋りになってしまったものだから、『マスクしたヤンキー』みたいな印象に・・・。
「よろしゅう!因みに、お姉様ファンクラブの会長兼会員No1はウチや!・・・名誉会長も居るけど・・・。まぁとにかく、あんたは今日から会員No58や!No強奪戦もあるからがんばりや!」
「わ・・・解りました?」
初めて聞く情報がありましたが、まぁ取りあえず先へ進みましょう。
「最後に、シーラ・ド・キーピス。彼女も前から仲良くしているお友達ですわ」
彼女も昔と変わらずおかっぱで小柄な女の子。ですが彼女もマルシア、サマンサと同じく傷が残っており、目の部分に薄いヴェールをかけています。
元々彼女は陰気・・・いえ、ミステリアスなオーラがあったのですが、かけたヴェールによってそれが増幅され、ちょっと色っぽい感じが出ています。
「うふふ・・・よろしくね・・・」
「は・・・はい・・・」
しかし喋り方は前と変わらないので、喋ると色っぽいからちょっと変わってしまいます。
因みに、彼女もマルシア同様私をお姉様と呼び始め、私過激派になってしまいました。
と、ここまで周りの方達を紹介してきましたが、最後に自分も自己紹介しておくことにします。
「そして私も再度自己紹介しておきますわ。私はマシェリー・フォン・オーウェルス。今は高々オーウェルス公爵家の令嬢ですが、いずれ魔王に成る者ですわ」
私はすっかり元通りになったツインドリルヘアーを揺らしながら、目指す地位を宣言しました。
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マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「主人公さん、可哀想じゃない?」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。
☆や♡がもらえると 主人公がオラつきますわ。
マシェリーの一口メモ
【講堂に入った時に『アイツラやべえやつ』と思われていたのは、主に信号機トリオの恰好もあっての事ですわ。金属脚鋼ガチャガチャ、ヤンキーみたいなのがオラオラ、魔女みたいなのがジロジロ、そりゃぁやべえ!ってなりますわ】
マシェリーよりお詫び:第3話の最後の方、精霊の儀と学園入学までの時間を修正しましたわ。
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