第43話 出会い

「は・・・はい・・・ありがとうございました。あ・・・!あの、私イリアス・ロバニエルって言います!」


 名乗った少女の名前を聞いて私は衝撃を受けます。


(イリアス・ロバニエルですって!?)


 私は改めて少女の姿を確認します。


 小さな顔にすらっとした手足、発育はまだまだですが将来性が見込める腰つき、そしてその形の良い小さな顔に美少女フェイス。


 そう・・・その容姿は正に・・・



(知らない子ですわね?)



 私の記憶にない子・・・つまり、モブでした。



「私の名はマシェリー・フォン・オーウェルスと言いますわ。よろしくお願いいたしますわね」


 ですがキラキラとした目でこちらを見つめて来るのが可愛らしく、私は微笑みかけながら丁寧に自己紹介をしました。


 すると彼女・・・イリアスは小さく「うっ」という呟きと共に胸を押さえて俯いてしました。ですが直ぐに顔を上げ、蕩けた様な顔をしながら私を上目遣いで見て口を開きました。


「あ・・・あの、私と・・・お友達に・・・いえ!下僕でも構いません!お傍においてくださいませんか!?」


(えぇぇ・・・この子いきなり何を言いますの・・・。でも、可愛いしお友達になるのは有りですわね)


 いきなりの下僕宣言にちょっと引いてしまいましたが、お友達位ならアリでは?と思ったので、イリアスにそれを提案する事にします。


「イリアスさん、よろしk「ちょっとまちぃ!」・・・え?」


 しかしそれは、ある人物の一声により待ったが掛かります。


「あんたイリアス言うた?誰に断ってウチのお姉様に粉かけとるんや?あぁ?」


「っひぇ!?」


 その人物は関西弁みたいなイントネーションで喋りながら、まるでチンピラの様にイリアスにメンチを切っていました。

 その態度を見て頭が痛くなり額に片手を当てていると、更にチンピラ2号と3号が加わってしまいます。


「お姉様に気安いですよ?離れなさい」


「うふふ・・・お姉様に対して不敬です・・・不敬・・・この薬飲ませますよ・・・?」


 チンピラ軍団はイリアスに前と左右からガンを飛ばし、まるでそれはカツアゲ現場の様でした。

 少し止めるのが遅くなっただけでこんな様に・・・と両手で頭を抱えそうになりましたが、今は止めるのが先とチンピラ達にストップをかけます。


「おやめなさいサマンサ、マルシア、シーラ。何を怖がらせているんですの?」


「「はーい」」


「えぇ?解りましたお姉様・・・。けどこんな感じで行く言うてませんでした?」


「そんな事・・・言った気がしましたわね?」


 イリアスへのガンつけを制止させると、サマンサが私がこうしろと指示した!と言ってきたのですが、よくよく思い出すと確かに言った覚えがありました。


「まぁあれは・・・今回はいいですわ。イリアスにはもう遅いですし」


「そうなんです?」


「ええ、まぁ次からは私もそういう動きでいきますわ。そしたらそれに合わせてくれたらいいんですの」


 事前にノワールと3人娘にはちょっとだけ話してあったのですが、私達は学園にいる間悪役ムーブをする事になってました。

 そしてその悪役ムーブを完全に把握しているのは私のみとなっていたので、ノワールと3人娘には私の動きに合わせる様にしてほしかったのです。


 それを言うとサマンサは快く了承してくれたのですが・・・


「解りました。了解ですお姉様。でも・・・この女はボコしてもええんですよね?」


「・・・だめですわ」


 昔から私ラブのサマンサはイリアスが私にくっ付いていたのが気に喰わないらしく、計画とは別にボコボコにしていいかと聞いてきたのですが、勿論それは駄目です。

 だって・・・イリアスはこんなに可愛いし私を慕ってくれた様なのです、本来関わるべき人物でもないので危害を加える必要もありませんし。


「ちぇ・・・」


「・・・ふぅ」


 私ラブ過激派のサマンサを抑え込めたところで安心をしていたのですが、『ならば私達!』がと、謎に過激派2,3が名乗りを上げてきました。


「それでしたらお姉様、私がボコボコにしてもよろしいですか?」


「駄目に決まってますわ!?」


「うふふ・・・それなら・・・私が・・・」


「それならも奈良漬もありませんわ!」


「「えぇ~・・・」」


 過激派2,3にも却下を出すと、「私達のお姉様に気安く触れる不埒者に粛正が出来ないなんて」等と呟いていたのを聞いてしまいます。


(育て方を間違いましたわ・・・。いや、別に私が育てた訳ではないのですけれど)


 と、心の中で嘆いていると・・・


「じゃあやっぱりウチがやります!」


 何故かまたサマンサが名乗りを上げ、それに続く様にマルシアとシーラも再び名乗りを上げます。


「だから駄目だと・・・」


「じゃあやはり私が!」


「いやだから・・・」


「うふふ・・・私がやります・・・」


「いやいや・・・」


 過激派達が執拗に「私が!」「いや私が!」と繰り返すので、この方達何を言っているの!?と少し頭の動きが鈍くなったところで、サマンサが私にガァー!とがなり立ててきました。


「いやや!いやや!てそれなら如何するんですかお姉様!じゃあお姉様がやってくださいよ!」


 普通だと「何言ってますの貴女?」となる所ですが、頭の鈍っている私はついついそれに・・・


「え?解りましたわ??」


 と、了承をしてしまいました。


 すると・・・


「「「じゃあお願いします」」」


「え?はい?・・・ってこれあれじゃないですのっ!?」


「「「?」」」


 何処で知ったのか、これは完璧にあのレジェンド達の・・・


 と、馬鹿な事をしていたのですが、この騒ぎに関わらなかったノワールが声をかけてきました。


「お嬢様、そろそろ移動をしないと入学式が・・・」


「あっ!そうですわね、貴女達!行きますわよ!」


「「「はーい」」」


 言われて思い出したのですが、今日は入学式があるので遅れてはいけない日です。私は声をかけて先を促し歩き出しますが、1人来ていないことに気付き、振り向いて手を差し伸べます。


「何をしているんですのイリアス。いきますわよ?」


「え・・・?あ、はい!」


 ・

 ・

 ・


 こうして、後の魔王軍最高司令官イリアス・ロバニエルと私は出会ったのです・・・



 まぁ、最高司令官とか嘘ですが。



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 マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「イリアス!モブなんかーい」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。

 ☆や♡がもらえると イリアスが本当に後の魔王軍最高司令官に・・・なりませんわ。


 マシェリーの一口メモ

 【イリアスの正体は・・・まごう事なくロマンスでは登場しない人物『モブ』!

・・・なのですが、現実だと埋もれた人材かもしれませんので、後の展開に乞うご期待!ですわ!】

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