第29話 前日
カリカリ、カリカリと、私は紙に字を書きあげると、すぐ傍にいたアリス先生へと声を掛けます。
「アリス先生出来ましたわ。確認してくださいます?」
「解りました、確認いたしますね・・・はい、問題ないです」
「ありがとうございますわ」
簡単な問題とはいえ頭を使ったので、私は置いてあったお茶とお菓子をつまみ、頭に糖分を補給して一息つきます。
「ふぅ・・・それではアリス先生、また明後日によろしくお願いいたしますわ」
「はい、ではお疲れさまでしたマシェリー様」
アリス先生は去り際に、明日は楽しい日になるといいですねと、ニッコリと笑顔を見せてくれました。
私は嬉しくなり、アリス先生に何かお土産でも買ってこようかなと決めつつ返事をしてアリス先生を見送りました。
扉が閉まりアリス先生の姿が見えなくなると、私はスキップしながらテーブルへと近づき椅子に座ります。
すると何時もの如くノワールがスッと近寄って来て新しいお茶を出してくれます。
「ご機嫌でございますねお嬢様。やはり明日が待ち遠しいのですか?」
「もっちろんですわ。明日はお友達と街へ繰り出すのですのよ?楽しみすぎて今日眠れるか心配するほどですわ!」
そうです、明日はいよいよマルシアが誘ってくれた街遊び!・・・街遊びと言ってもいかがわしい遊びではなくウィンドウショッピングや屋台で買い食いですからね?
そこの所勘違いなさらないで?と誰に言っているのか1人で心の中で突っ込みをいれてしまいますが、それほどに今私のテンションは上がっているのです。
そんな私にノワールがそう言えば・・・と話しかけてきます。
「お嬢様、明日のお召し物等はいつも通り私の選んだものでよろしかったでしょうか?」
「ん~、そうですわねぇ・・・偶には自分で選ぶのもいいかしら?」
基本的に私が着る服はいつもノワールが決めるのですが、明日はいつもと違う友達との街遊び、偶には自分で決めるのもいいかと思い、早速衣装部屋へと移動をする事にします。
「そうと決まれば衣装部屋にいきますわよノワール!」
「畏まりましたお嬢様」
私はサッと立ち上がると、ノワールを待たずスキップをしながら衣装部屋へと移動しました。
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ノワールと楽しく明日の為の服装を選んだ後、私は食堂で夕食を食べていました。
勿論その場にはお父様もお母様もいて食事の前後には何時も軽い雑談をするのですが、この日の雑談は勿論、明日の私のお出かけの事でした。
「マシェリー、明日はトリム家の街へと遊びに行くんだって?」
「ええ、そうですわお父様。マルシア様が誘ってくれたんですの」
「トリム家と言えば鉱物関係が強い家だったわよねアナタ?」
「そうだね、金属関係や宝石関係では国内トップクラスだったはずだよ」
そんな風に今日は比較的楽しく雑談をしていたのですが、お父様が急にこんな事を言い出し、私は吃驚してしまいます。
「そうだマシェリー、明日の事なんだが、付ける使用人と護衛をパパの指定した者と変えるからね?」
「え!?」
「・・・!」
吃驚したのは私だけでなくノワールもみたいで、声は出していませんでしたが、体が一瞬ビクッ!と跳ね上がっていました。・・・と言う事は、ノワールも初耳だったのでしょうか?
私は不思議に思い、お父様へと尋ねてみます。
「ノワールだと何か不都合でもありますの?」
「ん?いや、そんな事はないよ。唯ちょっとタイミングが良くてね?」
「タイミングですの?」
「ああ、丁度新しく使用人と護衛を雇う事になったんだけど、そのテストとして明日1日マシェリーに付けて見て様子を見てもらおうかと思ってね」
「なる・・・ほど・・・ですわ」
理由としては確かに解りましたが、何時も私と一緒にいるノワールと離れるのは寂しく感じてしまいます。
なのでノワールも一緒に行くのは駄目かと尋ねるのですが・・・
「あー、その使用人には明日ある倉庫の整理を頼もうかと思っているんだ。ちょっと先日賊が入りかけて滅茶苦茶になった倉庫があってね。何時もなら他の者を向かわせるんだけど、明日だと丁度空くだろう?」
事もなげに賊が入りそうになったと言いましたが、意外とある事なんでしょうか・・・?
とまぁ、ノワールを連れて行けない理由が解ったので、私は渋々了承しますが、ノワールをチラリと見ると『グヌヌ・・・』といった雰囲気を出していました。
その後夕食が終わり部屋に戻ると、ノワールから猛抗議を受けてしまいます。
「お嬢様!なぜ私をお連れ下さらないのです!私は・・・・・・」
ノワールはよっぽど私と離れたくなかったのか、大分咬みついてきましたがもうすでに決まった事、私はなんとか宥めます。
「大丈夫ですわよノワール。ノワールが1日離れたところで何も起こらないし、新しい護衛も明日だけですわ」
私は言った後、『ちょっとフラグ臭いですわね』とクスリと笑いかけましたが、何とか顔を引き締めてノワールの説得を続けます。
1時間以上かけて何とか宥めていると、不承不承といった感じでしたがノワールは「解りました・・・」と、私から1日離れる事を受け入れてくれました。
「ごめんなさいねノワール、お土産も買ってきますわ」
「はい・・・」
すっかりノワールのテンションが下がってしまったので、私は機嫌を取る為にお土産を買ってくると言ったのですが、対して効果はありませんでした。
このままノワールのテンションが低くても何かあるという訳ではないのですが、私の心情的にノワールがこんな様子なのはあまり好ましくありませんでした。
なので何とかノワールのテンションを上げようと思い、私はこれなら・・・と思いついた方法を試してみます。
「ノワール、今日は私と寝ましょうか?それで機嫌を治してくれません事?」
最近暴走気味のお嬢様大好き人間のノワールならこれで釣れるかと思ったのですが・・・
「そ・・・そんな事で・・・まぁ一緒に寝てくれると言うなら寝るのですが・・・しかしですねお嬢様、私は心配なのです。万が一お嬢様・・・・・・・・・」
爆釣でした。
またブツブツと言い始めてしまいましたが、まごうことなく爆釣です。
私は「残りはベットで聞きますわー」とブツブツ言うノワールの背中を押して、ベットのある方へと移動します。
「お嬢様!私は!」
「ハイハイ、聞きます、聞きますわー」
その後、ノワールは中々私を寝かせてくれなかったという事だけ教えておきますわ。
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マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「この後ふたりは・・・」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。
☆や♡がもらえると 私とノワールの秘話が・・・
マシェリーの一口メモ
【秘話など存在しませんわ。だってこの小説はKENZENですもの】
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