第17話 魔力について

 その後、ノワールに部屋の中を確認してもらいましたが、部屋の中にはやはり私達以外には何もいませんでした。

 ジャパニーズホラーに恐怖した私はノワールにしがみ付いていましたが、それも外が明るくなってきた事により終わりを迎えました。


「明るくなってきましたわ・・・救いの光ですわ!」


「私としてはもう少し暗いままでもよかったのですが・・・」


「黒はノワールの色で好きですが、今はお黙りなさい」


 そんな会話を挿みつつ、私達は朝食に向かう事にしました。


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 時間は飛んで夕方、勉強と習い事が終わり夕食までの自由時間の事です。


 私とノワールは部屋の椅子に座りながら向かい合っていました。


「さてノワール、先日の話の続きをいたしますわよ。考えは整理できていて?」


「畏まりましたお嬢様。考えはそうですね・・・私なりにはですが、出来ております」


「よろしくてよ。私も使用人兼護衛に学者の様な事は求めませんわ」


「ありがとうございますお嬢様」


 朝時間があれば話していたのですが、あの出来事のせいで時間が無くなったので伸びてしまいましたが、いよいよ今から魔法についての話をしようと思います。


「さて・・・まずは最後に話していた事でも話しましょうか。ノワール、貴女は私が言った靄みたいなものを魔力かも知れないと、そう言いましたわよね?」


「はい、そうです。因みにですがお嬢様、その靄の色は何色に見えますか?」


「黒ですわね」


「それならばやはりそうだと思います」


 ノワールはそう言うと、片手を突き出しました。


「見ていてください。・・・どうです?」


「・・・?・・・あぁ、ノワール、もう片方の手を差し出してくれないかしら?」


「こうでございますか?」


「ありがとうございますわ」


 私はノワールが差し出してくれたもう一方の手をそっと握ります。


「言っていませんでしたが、どうやらノワールに触れていると靄・・・いえ、魔力が見える様なのですわ」


「成程・・・!」


 私に手を握られてご機嫌そうなノワールに、もう一度先程やろうとしていた事をしてくれるように促すと、不思議な光景が見えました。


「これは・・・人形?」


 ノワールの触れていない方の手の上には、黒い魔力で創られた人形の様な物が踊る様に動いていていました。


「そうでございます。これは私が魔力にて創った人形、その名も『お嬢様人形バージョン8』でございます」


「・・・なんですって?」


「私が魔力にて創った人形『お嬢様人形バージョン8』でございます」


 確かによくよく見るとその黒い人形は私の姿によく似ていました。細かい所は少し雑になっていましたが、私の人形ですと言われれば「確かにマシェリーだ」と見た人が納得しそうな造形でした。


「私の人形なのは解りましたが、バージョン8ってなんですの?」


 バージョン8があるならば1~7までも有り、3は水着マシェリー、4は剣士マシェリーとかなんでしょうか?


「そのままの意味でございます。最初からここまで上手く作れたわけではなく、改良に改良を重ねて今のこの形になっておりますので。因みにバージョン1はこのような感じでした」


 ノワールが魔力を操作したのか、黒い人形が一度解ける様に崩れ、その後再び人形が出来たのですが・・・


「かろうじて人型・・・ですわね」


「はい」


 新しく出て来た『お嬢様人形バージョン1』とやらは、人型をしているのが何とか解るといった程度のもので、流石にこれだと私の人形だとは誰が見ても解らないでしょう。


「まぁそれは一旦置いておきまして、私は魔力を使ってこの人形を作りました。そしてそれが見えているという事は、やはりお嬢様が見えた靄は魔力なのでしょう。私も最初自分の魔力が見えた時には靄っぽいと思った事から、この結論が出てまいりました」


「成程ですわ・・・。因みにですが、魔力は精霊の儀を行って魔法を授かった方ならどなたでも見えるモノですの?」


「はい、見ようと意識すれば見る事は出来ます」


「では・・・黄の魔力はこう・・・黄色の球が浮いた感じでその間を何かがパチパチっと雷が通っている感じですの?」


「はい、その様な感じでございます」


 私はノワールの靄以外で見た魔力と思われるモノ、お茶会でサマンサを抱きしめていた時に見えた光景を思い出し、その様子を話すと、ノワールはそれを肯定しました。

 しかし、肯定された事によりあの時のモノが魔力だと解ったのはいいのですが、1つ疑問が浮かんだので、それをノワールへと聞いて見ます。


「実はノワールの魔力以前にも魔力を見たことがあるのですが、1つ気になる事がありますわ」


「何とっ!私の魔力が初めてではなかったのですか!?無念でございます・・・っは!?申し訳ありません、何でございましょう?」


「・・・何が無念なのかは問わずにしておきますわ。・・・おほん、それで、魔力を見たのはサマンサに抱き着かれた時なのですが・・・サマンサはまだ精霊の儀を終えてませんわよね?」


「そうですね・・・そのはずでございますが・・・」


 ノワールにより見えたのは魔力だと確定したわけですが、サマンサは私と同じ年齢でまだ精霊の儀は受けていないはずなのです。それなのに魔力が見えたと言うのはおかしいのでは・・・?

 ノワールは私の質問を受けて考え込む様に顔を俯けていましたが、直ぐに顔を上げました。


「もしかしたらその時魔力を出していたのがサマンサ様ではなかった、魔力を出していたのは周りにいた使用人の誰かだった、とかは考えられませんか?」


「成程・・・可能性としてはありますわね・・・」


 現状、完全に魔力が見える法則を見つけ出していないので、もしかしたらそれも有り得るのかもしれないのです。一度実験をするべきなのかも?と私は思い、それをノワールに言います。


「これについてはまた後日に実験でもしますわよ。という事で、この話題は置いておき、次にまいりますわ。・・・と言っても、それについては半分程はわかったのですが」


「?」


 次に話そうと思ったのは、『今の私でも魔力を使えるのか』だったのですが、ステータスを発見したことにより半分ほどは解っていました。


 その解った半分とは『魔法を使う事は可能』だという事です。


 実は朝~現在の間に、私は発見した方法で人々のステータスをチェックしていたのですが、魔法が使えるであろう方々は『使用可能:〇色』となっていたのですが、魔法を使えない方々・・・精霊の儀で魔力を授からなかった大人と、まだ精霊の儀を行っていないであろう子供は『使用可能:無色』となっていたのです。

 私の場合は『使用可能:全』となっていましたので、使用自体は可能という状態なのでしょう。


(だけどもまだ解らない半分、これはノワールに聞かなければ解らないですわ)


 私は自力では解りづらいであろう事をノワールに尋ねます。


「何でもないですわ。それで次の話題はズバリ『魔力の扱い方』ですわ」


 魔力の扱い方、これは長く時間を掛ければ解らなくはないかもしれませんが、使える者に直接聞いた方が絶対早い事です。

 先程ノワールは魔力で人形を創っていましたし、段々とバージョンアップさせてきたとも言っていたので魔力の扱い方は確実に解っている筈です。なので私は教えてもらう気満々で聞いたのですが、ノワールからは芳しくない返事が返ってきました。


「魔力の扱い方、でございますか・・・」


 ノワールならば、私が教えて?と言えば喜んで教えてくれそうなイメージでしたが、そうではないのでしょうか?

 もしかして精霊の儀を終えていない者が魔力に触れると危険があるとか・・・?


「私には教えられないのかしら、何か教えるのに不都合がありまして?」


「不都合と言いますか・・・解らないのです・・・」


「解らない、ですの?」


 ノワールの答えは予想外でした。先程魔力を扱っていたのは何だったのでしょうか?


「先程私のお人形を上手く創っていたではありませんの?それなのに解らないと・・・?」


「申し訳ありませんお嬢様。何分魔力の動かし方は、精霊の儀にて魔力を授かった時に『解った』事なのです。それまでは魔力の欠片ですら解らなかったのに、元から知っていたかのように『解った』のでございます。なので魔力の扱い方を教えると言うのは、尻尾が無い人に尻尾の使い方を教える、この様な事なのでございます」


「そういう事ですのね。それは確かに解らないかもしれませんわ」


 上手く例えられたので何となくわかったのですが、つまり精霊の儀は『魔力を授かる』のではなく『魔力という存在を与えて理解させる』という儀式なのでしょう。

 という事は、私が魔力を扱うためには、精霊の儀を受けるまで待つ、若しくは時間をかけて自分で理解をする、この2つの選択肢が存在する事になります。

 魔王を目指す私としては勿論・・・


「よろしくてよ。私は魔王を目指さんとする(悪役)令嬢ですわ。魔力の扱い位自力で何とかできなくて何が魔王になるですか、やってやりますわ!」


「はい!お嬢様ならば必ずできますとも!私は信じております!」


「よろしくてよ!オ~ホッホッホ!」


 興が乗った私は立ち上がり、原作で『悪役令嬢マシェリー』がよくしていた高笑いを決めてしまいますが、これは少し気持ちいいかもしれません。


 私はそのまま高笑いを決めつつ、「話はこれで終わりですわ、夕食に行きますわよ!」と、時間もいい感じになっていたのでノワールを伴い部屋を出ようとしたのですが、ノワールの一言により一気にテンションが下がってしまいました。


「畏まりましたお嬢様。あ、お嬢様、月末恒例のパーティーの事を夕食後に話したいのですがよろしかったですか?」


「ホ~ッホッホッ・・・今何と・・・?」


「ですから月末行っているパーティーの事でございます。一応グウェル殿下と婚約したわけですし、変更などあると思いまして」


 悪役令嬢わたくし、そんな事を行っておりましたの・・・?


「聞いていませんわぁぁぁあああ!!」



 私の叫びは部屋に響き渡りました。



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 マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。

 次回予告をいたしますわ! 次回!ドキッ、イケメン一杯貴族パーティー!

 ☆や♡がもらえると デュエル(意味深 がスタンバイしますわ!


 マシェリーの一口メモ

 【設定では本日3・3は私、マシェリーの誕生日ですわ。ついでに言っておくと転生前の私、早乙女玲と作者も誕生日という設定?ですわ。それと17話時点の日付設定では3月の終わり頃、私は少し前に8歳になったという設定らしいですわ。ロマンス本編は私が11歳の4月に始まりますから、原作開始まで後約3年程ですわ】

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