第14話 兆し
ゲームの中や転生して最初にあった時のイメージと少し違ってきたノワールに激しく不安を覚えた馬車での移動、それもある光景を見た事により、不安より疑問が強くなりました。
「ふふ・・・お嬢様を何としてでも魔王へ・・・ふふふ・・・」
「少し落ち着きなさいノワール・・・」
私はノワールの手を取って優しくポンポンと叩きます。
(ノワールから黒いオーラが見える様ですわ・・・って本当に黒い何かが見えますわ!?)
そう言えば同じような光景を・・・と私は同じ様な物を見た事を思い出します。
(確かサマンサを抱きしめてあやしている時・・・でしたわね)
今ノワールの周囲に見えている黒い何かは、色は違えどサマンサの時見た光景と同じ感覚を覚えました。
(サマンサの時は黄色っぽい感じでしたけど、ノワールから見えるのは黒っぽい・・・?)
「お・・・おねえさ・・・お嬢様・・・」
「あら・・・ごめんなさい」
ノワールから発せられている黒っぽい何かに目と思考を奪われていると、ノワールの熱っぽい声が聞こえて来たので握ったままの手を放します。
手を放すと若干残念そうな表情を見せましたが、直ぐに何時もの無表情へと戻りました。
(私の知っているノワールは何時もこの顔でしたのに・・・不思議な感覚ですわ)
本来の
(見えていた黒い何かが消えた?)
ノワールから発せられていた黒い何かが消えてしまったのです。そういえばサマンサの時も、いつの間にか見えなくなっていましたね。
これは一体何なのでしょう?と、私は気になり、もう一度見てみるにはどうしたらいいかと考えます。
(簡単に思いつくのは見えていた時の状況再現をする事ですわね。えぇっと・・・)
確か見えたのはノワールの手を取った後ですから・・・
「おねっ・・・お嬢様!?」
再びノワールの手を取ると表情が微妙に変わり、慌てた感じになりました。
(やはり、もうあの静かだったノワールはいないのですわね・・・って、勝手に決めつけて残念がるのは良くありませんわね)
私はふいに、転生前の早乙女玲であった時にも犯してしまった事のある『勝手に他人を決めつけていざ違う所を見ると失望する』という、人として少し恥ずべき行為をしてしまったと感じてしまいました。
(先日サマンサに自分で言っておいて私は・・・)
この時何故か、転生前や先日の事が強く思い出され、自分が恥ずかしくなり落ち込んでしまいました。そんな私の様子を、手を握っていたノワールは気付いたのか優しく手を包み返してくれました。
「お嬢様・・・どうかなされたのですか?」
「ノワール・・・」
ノワールの心から気遣うようなその行為に私の落ち込んでいた心は暖められ、体まで熱くなってきました。
「い・・・いえ、なんでもないのですわ・・・」
「そうですか・・・それならばよいのですが」
「え・・・ええ」
私がそう言うと、ノワールは自分が私の手を包み込んでいることを意識しだしたのか、また熱い視線を私に向けてきました。
「お嬢様・・・」
「ノ・・・ノワール・・・」
(ま・・・まずいですわ!胸がキュンキュンしてきますわ!・・・あら?)
私的に好感度が高めのノワールに絆され、あわや禁断の関係になってしまいそうでしたが、私の目に再びあの黒い何かが見えた事によりそれは回避されました。
「お嬢様ぁ・・・」
「ノワール、ちょっとストップですわ」
「はい・・・」
鼻息が荒くなってきたノワールに停止をかけ、私はジッと黒い何かを見つめます。
「うーん・・・ノワール、ちょっと質問があるのだけれども良いかしら?」
私が真剣に何かを見ていた事に気付き、少しクールダウンしたノワールが何でも聞いてくれと答えます。
「何でございましょう?」
「ノワールの体からこう・・・オーラと言うか
「オーラや靄みたいなもの・・・ですか・・・」
ノワールは私の質問に考え込み、まさか・・・と言った顔になりました。
「いえ・・・そんなまさか・・・」
心当たりがありまして?と聞こうとしたのですが丁度馬車が動きを止めたので、私は発言を止めて降りる準備をします。
しかしノワールは口に手を当てながら何かをブツブツと呟き、馬車が止まった事に気付いていない様でした。
「ノワール、着きましたわよ?」
「・・・っ!も・・・申し訳ありませんお嬢様!」
仕方がないので声をかけると慌てて動き出し、それから部屋までの間、ノワールの動きは何処か精彩を欠いていました。
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まだ夕食には早い時間でしたので、一旦お父様を分かれて私は自室へと戻りました。
部屋へと入るとノワールが「お茶を入れます」と言ってくれたので、私は2人分入れる様に言います。
ノワールは不思議がっていたのですが2人分のお茶を入れてくれたので、私は1人分のお茶を受け取ります。
「お嬢様・・・?」
「もう1つはノワール、貴女の分ですわ。先程から動きが変でしてよ?お茶でも飲んで落ち着きなさい」
「も・・・申し訳ありません」
「よろしくてよ。さぁ、座って飲みなさい」
「はい・・・失礼します・・・」
ノワールは椅子に座るとお茶をチビチビと飲み始めたので、私も同じくお茶を飲み始めます。
暫くは無言でお茶を飲んでいたのですが、2人共が飲み終わった頃に私から声を掛けます。
「少しは落ち着いたかしら?」
「はい、ありがとうございます」
見た感じではいつも通りに戻っていたので、私は改めて質問する事にしました。
「さてノワール、馬車での質問の続きですわ。貴女の体から見える靄の様なモノ、これに何か心当たりがあるんですのね?」
馬車でこの質問をした後から明らか様に様子がおかしくなったので、確実に何か心当たりがあるのだろうと踏んでの質問でした。
「あ・・・はい、いえ・・・その・・・」
しかしノワールは良い淀み、中々答えてくれません。
「ノワール、取りあえず言ってみてくださらない?例え荒唐無稽な話でも、聞いて見なければ解りませんわ」
「解りました・・・」
答える様に促すと、ようやく覚悟を決めてくれたのか喋り始めました。
「有り得ない・・・いえ、お嬢様だから有り得るのかもしれませんが・・・」
(私を何だと思っているのですノワール・・・)
話を遮らない様に心の中で突っ込みを入れたのですが、次の言葉を聞いて・・・そんな配慮は消えてしまいました。
「恐らくそれは・・・魔力だと思われます・・・」
「ぇ・・・?ぇぇぇえええ!?魔力ですって!?」
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マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「何の兆し何です?キマシタワーですか?」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。
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マシェリーの一口メモ
【正直作者も『
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