第17話 特徴11:ためを思えば免罪符

 前にも書きましたけど、もう一度。


 まあその、無能という手合いは自分に能力も自信もないものですから、そのままでは相手の関心を引くことができないし、相手にさえもされない。

 下手に気安く相手に接触しても、しまいにはサンギョーハン、そうそう、三行半(みくだりはん)を突き付けられてしまいますから、そこは、うまくやるの。

 そのためのことばが、これ。


 憎くて言っているのではない。

 あんたの「ため」を思って言っているのだ。


 ためを思えば、内容なんか何でもいいということだろうよ。

 思ったこと、感じたことを書きましょうという作文教育の劣化版みたいやね。

 自分の思ったこと、感じたことを、率直に相手に述べましょう、ってか?

 やれやれ。


 内容なんかよりも、相手を思う心のほうが大事なのです。

 そうでも、言いたいのだろうか?


 もしそうでなくて、実はテメエの利益が云々で、というなら、そのほうがある意味対処は簡単かもしれんわ な。要は、相手にする必要ないと判断して終わり。というか、相手に利益が行ったとしても、こっちにそれなりの利益が得られる余地があるなら、まあ、話くらいは聞いてやってもバチは当たらんのかも、しれん。

 ただ、その「利益」というのが、目先のはした飯だの程度じゃ、引き合わんぜ。

 言って置くぞ、ここは。

 で、実際、そういう手合いの出してくる当方の「利益」なんて、その程度なのだから、始末に負えない。

 食べ物には罪はない。だから、それについては食べ物にあたったりしてはいかん。

 だが、実際問題として、テメエの飯くらいテメエで食えばよろし。

 わしゃ、乞食じゃねえ!

 これで、ええと思うけどな。


 で、本気でそういうことを思っていたとしたら、ちょっと、怖いぞ。

 まさにこれ、「君子危うきに近寄らず」を実践しないといけない。

 どうしてもそんな御仁に接触をせねばならんとなったら、そのときは、とにもかくにも、丁重に「敬遠策」をとるより他、ないわな。なんせ相手は、本気で自分の「ため」とやらを思ってくれているのだからね。

 だったら、気持ちだけでもありがたくお聞きして、無視すればいいだろうと思うおめでたい人もおいでであろうが、そんなおめでたいことを抜かすなとだけ、くぎを刺しておきますね。五寸釘だけど(わっはっは)。

 無視はまあええとしても、「ありがたくお聞きする」などというのが、実に、無駄。そこは、もう、極力「聞く」余地自体を少なく、極力ゼロに近づけるようにしておかないといけませんな。


 それにしても、「相手を思う心さえあればいい」というのも、以前お話した「出来損ないの仮定法」の典型ではないかなと、ふと、書いていて思い至った次第。

 それこそ、「人間としてよければ」「相手を思う心さえあれば」、あとは何とでもなるという発想自体が、まさに、「イワシの頭も信心」状態としか言いようがないですな。それを述べれば、酒なんか1滴も飲まずして、テメエの美辞麗句に酔える。

 そして、金も払わずして、免罪符を得られて天国にでも行けるのかな? 死んだあかつきにというより、死なないまでも今その言葉を相手に述べたその時すぐに?

 という、実に、おめでたいお話で、慶賀に堪えませんね。


 少々のはした酒程度では酔えんわしには、無理や、そんなこと・・・。

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