第2章 師匠と弟子たち

13 師匠と先生

 小さな村に、長居するつもりはない。


 というわけで、俺とチビ助は、この辺りにある大きな街を目指して、旅立つことにした。



「アルヴィス様、リゼ様、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


「ん、よろしく」



 ちなみに、昨日の夜勧誘したレインくんとレイナちゃんも、旅に同行。

 俺たちに弟子入りだ。



 この兄弟は、


「僕たちは村にこれ以上いられないので、アルヴィス様たちについて行きます」


 なんて殊勝なことを言って、快諾してくれた。



「違う、選択肢がないだけだ」


 チビ助には、そんな風に言われたけど、俺の都合のいいようにいったので万事OKだ。





「ところで2人とも、俺たちに敬語は不要だ。様付けもしなくていいぞ」


「でも、2人は魔法使い様で……」


「そういう堅苦しいのはいいって」


 俺は手を振って、止め止めと言う。



「わ、分かりましたアルヴィス……さん」


「ジー」


「師匠」


「おっ、そういう呼び方をするか!」


 レインくんとレイナちゃんは、戦略魔導歩兵として育て、俺の部下にする予定だ。

 軍の訓練設備なんてないので、教育に困る部分もあるが、その辺のことはおいおい何とかしていこう。


 でも、そうなると俺は2人の師匠ポジになるな。

 軍隊だったら、教官と呼ばせておけばいいが、今の俺はもう軍人じゃない。



「まさか俺が師匠呼びされる時代が来るなんて、思ってもみなかった」


「そうだな。2人に言っておくが、戦友は師匠なんて柄の人間じゃないぞ。敬うだけ無駄だからな」


「「は、はあっ」」


 せっかく魔法の師匠呼びされたと思ったら、チビ助に茶化されてしまった。




 それはともかく、俺とチビ助の旅に、新たにレインくんとレイナちゃんの兄妹が加わった。


 まだ目覚めて数日なので、千年後の世界で特にやりたい目標はないが、そのうち戦争に参加してドンパチをしよう。


 硝煙の匂いを嗅ぎながら、人を殺していると心が落ち着くので、俺は千年後の世界でも、割と平気で生きていけると思う。




「それと私のことはリゼでいいぞ。戦友みたいに師匠呼びする必要はない」


「じゃあ、リゼ先生って呼びます!」


 さて、俺がこれからのことを考えていたら、チビ助の呼び名も決まっていた。

 先生呼びをしたのは、妹のレイナちゃんだ。


「せ、先生だと?」


「ダメですか、リゼ先生?」


「ま、まあいいだろう。私は師匠なんて呼ばれるほど、大仰な存在ではないからな」


 小首をかしげて、ウルウルした目のレイナちゃん。

 可愛い女の子の視線にやられたのか、チビ助が少し照れている。



「リゼ先生」


「リゼ先生」


 その後レインくんも加わって、チビ助は、双子兄妹から先生呼びをされた。



 まあ、その先生は見た目が10歳児にならないくらいの幼女なので、レインくんとレイナちゃんより、背が低いけど。



「幼女先生か」


「戦友、死にたいのか?」


 おっと、双子の兄妹につられて思わずそう呼んだが、睨まれてしまった。


 幼女先生を怒らせると怖いので、俺は口笛拭いて、しらばくれる。

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