12 山賊狩りと帰りの出来事

 俺はレインくんとレイナちゃんの双子の兄妹に、一緒に来ないかと勧誘をかけてみたが、色よい返事をもらえなかった。


「少しだけ、考えさせてください」


「いいぞ。ただ、俺たちは明日にはこの村を出て行くから、今夜中に考えておいてくれ」


「分かりました」


 深刻そうになるレインくんとレイナちゃん。

 2人には何やら事情があるようだが、そこは俺には関係ないのでどうでもいい。


 この2人が、自主的に付いてくればOK。

 でなけりゃ、村を助けた俺たちの願いを無視するのかと迫って、この2人を無理やり俺たちの部下にしてしまおう。

 もちろん、後者のやり方は最終手段だ。



「ちなみに、君ら2人は魔力持ちだから、俺のところに来たらいい感じにしてあげるよ」


「魔力持ち……僕たち2人共ですか」


「ああ、そうだ。2人とも、その辺にいる魔法使いなんて目じゃない魔力がある」



 2人と話している時に気づいたが、この時代で魔法使いというのは、社会的にかなり高いステータスになるらしい。


『魔法使いになれば、自動的に貴族の仲間入りができる』


 2人はそんなことを口にしていた。


 村で生活している2人の話なので、真実とは限らないが、それでも魔法使いになれれば、それ相応にいい職業に就くことができるのだろう。



 その後、2人は俺たちに頭を下げて、部屋を出て行った。





 そうして部屋の中は、俺とチビ助の2人だけになる。


「はあっ、戦友の頭はまともな時とダメな時の落差が、どうして激しいんだ。

 これだから、凡人以下の脳みそは……」


 2人になった途端、チビ助がブツブツ言ってるけど、俺は気にしないからどうでもいい。



「それじゃ、俺はもう寝るから、お休み」


 てなわけで、夜も遅いので、俺はとっとと寝ることにした。




 兵士は体が資本。

 休めるときにきちんと休んでおかないと、翌日以降に響くからな。




△ ◇ △ ◇ △ ◇ △ ◇




 翌日。


 前日に捕まえた山賊をチビ助が拷問にかけて、山賊の拠点を聞き出した。

 拷問を受けた山賊の体が、お子様に見せられない形に変わっているが、燃やして地面に埋めてしまえば問題なしだ。


 村人にこんなことしている場面を見られたら、俺たちの正気を疑われかねない。

 疑われてもいいが、今すぐ村を出て行けなんて言われたら、面倒だな。



「略奪に行くか」


「我々は兵士のはずだが、いつの間に山賊狩りに転職したのだ?」


「どうせ大戦の末期も、敵から物資を漁ってたんだ、今さら気にしなくていいだろ」



 というわけで、俺とチビ助はライフル片手に魔導甲冑を纏い、聞き出した山賊の拠点を制圧して、物資漁りにいそしんだ。


 戦闘に関しては、大したことがなかったので割愛だ。

 ただ、食料と金貨を始めとした硬貨を手に入れることができ、俺とチビ助はホクホク顔で村へ戻った。


 空を高速移動できると、移動は一瞬なので、1時間半ほどの時間で済んだ。






 さて、そうして戻ってきたら、村の一角に村人たちが集まっていた。


 ただし、村の中央にある広場でなく、人目に付きにくい物陰。


 空から戻ってきた俺たちからは丸見えだが、村人たちは空にいる俺たちに気づいていない。


 集まる村人たちの中心には、レインくんとレイナちゃんの兄妹がいる。



「山賊に襲われたのも、きっとお前達兄妹のせいだ。

 魔法使い様に助けられたので全滅は免れたが、お前たちがいなければ、こんなことにならなかったのだ!」


「そもそも、あの魔法使いは黒髪に黒目だ。

 お伽噺に出てくる魔王と、うり二つの姿をしている。

 今は大人しくしているが、もしかすれば、村に何か災いを呼ぶつもりなのでは……」


「金髪の幼女も、不気味だ。

 見た目は子供に見えるが、平然と山賊を殺していた。あんなことをただの子供ができるわけがない!」



 昨日の話から、双子の兄妹が村人から嫌われているのを感じたが、どうやら俺とチビ助も、村人に好かれてないようだ。


 昨日は俺たちを見てビクビク怖がっていたが、あれは俺たちの持つ武力を恐れただけでなく、見た目の問題もあったようだ。



「戦友、散々な言われようだぞ」


「そうだな」


 村を助けておいてヒドイ言われようだが、俺は気にならないからどうでもいい。

 向こうが俺やチビ助に対して、害になることをすればその限りでないが、物陰でキャンキャン吠えている連中なんてどうでもいい。



「それより腹が減ったな。おーい、朝御飯をくれー」


 本当にどうでもいいので、俺は村人たちが集まっている場所に降り立って、朝飯の催促をした。


「ま、魔法使い様、まさか今の話を!」


「そういうのはどうでもいいから、早く朝飯を用意してくれ。

 一仕事してきたから、腹が減ってるんだ」



 俺の姿を見て、村長を筆頭に村人たちが慌てるが、俺は薄く笑っておく。

 俺の目は少々アレだが、笑顔を浮かべて置けば、好青年風に見えるのだ。


「ヒッ、ヒイッ」


 好青年に見えるはずだが、なぜか村人たちが腰を抜かして、地面の上に倒れ込んでしまった。


「頼むよ、お腹が空いたんだ」


 俺は笑いながら、魔導甲冑の腕を振る。

 すると、山賊の拠点で一仕事した際に着いた赤い雫が、地面にポタポタと垂れてしまった。



「い、急いで用意します!」


「よろしく」


 真っ青な顔して、村長と村人たちは俺たちの前から逃げ出した。


 その逃げ方にしても、腰が抜けたままなので、かなり無様な逃げ方だったけど、俺は何も気にしない。



「まったく。戦友、そういうのは場所を考えてやってくれ」


 村人たちが逃げ出した後、チビ助も俺の傍に降りてきた。

 呆れられたが、これくらいはしてもいいだろう。


「でも、場所って何のことだ?」


 俺にはチビ助が、何を言いたいのか分からない。

 するとチビ助は、顎をしゃくってある方向を示した。


 そっちを見てみると、レインくんとレイナちゃんの2人がいた。


「うっ、あっ」


「ひいっ」


「あ、ごめん」



 村人を脅かす際に、ちょっとやりすぎてしまったようで、俺の殺気に当てられたレインくんとレイナちゃんまで、腰が抜けていた。







 なお、この後俺たちの朝御飯が、昨日の晩以上に豪華だったことを記しておく。


 村人脅すと、ちょろいな。

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