第8話 試験対策集中講座
「どご~ん!」
気の抜けた間延びした声とともに体に衝撃が走る、流れる景色、回転する世界、床に叩きつけられ再びの衝撃。
「こら~!ちゃんと受け身取らないと怪我するよ~!」
再び聞こえる気の抜けた声とともに視界に映る吹き飛ぶアイギスの姿、この訓練はどう考えてもおかしい。どうしてこうなった。
訓練開始時の話をしようと思う。
私とアイギスはサニーさんによって魔王軍所有の屋内訓練施設に連れて行かれた。食堂と医療、宿泊施設が併設されていて天候を問わずいつでも訓練漬けになれる、そんな施設のアリーナでのこと。
「さて今日から試験日まで訓練漬けの日々を送るわけですが、アイギスも桐子も基礎体力が全然足りません!戦法だの戦術だのは後回し!試験2週間前まで全部基礎トレーニングに費やします!……そういうわけで、はいこれ」
サニーさんから私とアイギスに手渡されたのはすごく柔らかい素材でできた棒のようなもの、振るとよくしなり叩くとポスンという頼りない音を奏でてくれる。少なくとも怪我はしない……はずだと思う。
「これから二人にはそれを持って私を追いかけて叩いてもらいます」
サニーさんってちょっとおかしな人なんでしょうか?
「しかし!私もただやられるわけにも行かないので、全力で来ない場合反撃します!」
訂正します、だいぶおかしな人の間違いでした。
「ちなみにサニーさん、全力ってどういうことですか?」
ただ走って棒きれのようなこれを振り回すだけではないような気がする、ちょっと嫌な予感がしたので聞いておくことにした。
「あれ、説明してなかったっけ?桐子、全身に回す魔力の量を増やしてみて」
されてないですよ!とか知りませんよ!と言いたい気持ちを飲み込んで全身をめぐる魔力量を増やしてみる。えーっと、魔力操作はイメージだから……こうかな?
「そうそう、そのまま軽くジャンプしてみて」
これで一体何が変わるのか、若干の疑問を残したまま地面を蹴ると
「えっ!?うわっ!あわわわわ!あぶなっ!」
予想以上に高度の出たジャンプに慌てながら両手をついて着地する、軽く跳んでこれなら基礎体力が全然足りないというのも頷ける、そもそも身体能力の基準が大きく違うんだ。
そんなこんなで始まった基礎トレーニングは現在、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「魔力を流すのを止めなーい!」
吹き飛ぶ私
「相手から意識を切らすなー!」
吹き飛ぶアイギス
「息が上がっても足を止めるなー!」
さらに吹き飛ぶ私
「疲れるからって手加減するなー!」
さらに吹き飛ぶアイギス
ダメ出しを受けるたびに叩かれ吹き飛ばされる私達二人の地獄はまだ始まったばかりだ。
2ヶ月半も生き残れる気がしないんだけど……
「今は訓練に集中しろー!」
幾度となく吹き飛ばされた私は考えることを放棄した。
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