第7話 新しい家、そして家族
魔界来訪初日、諸々の手続きを終えた私たちはサニーさんの家……というか屋敷に到着した。家じゃないじゃん!これは日本の感覚ではお屋敷って呼ばれるやつですよ! 広い庭もついてるし!これは魔界標準サイズ?それともサニーさんがいいところの家柄なだけ?
「ただいまー!」
「お邪魔します」
立派な家にお邪魔するときって緊張しませんか?私はめちゃくちゃします。
「お帰りなさいませ、お嬢様。そちらがお話にありましたキリコ様でよろしいでしょうか?」
「そ、リーゼ曰く私のひ孫のキリコ・シロガネよ。よろしく頼むわね」
「魔王様が……承知しました。キリコ様、わたくしこの家に仕えております召使でございます。名はありませんのでお気軽にじいやとお呼びくださいませ」
「白銀桐子です。こちらでお世話になります、どうかよろしくおねがいします」
「皆様お待ちしておりますよ、立ち話もなんですから移動しましょう」
荷物をじいやさんに預け食堂に移動しました。
夕飯も一段落した所でご家族の皆さんと歓談タイムです。相変わらずサニーさんは大量に食べていましたが、この人どれだけ食べるんでしょうか?どうしてそんなに食べて体型が維持できるんですか?基礎代謝おかしくないですか?
「それじゃあ、キリコちゃんも養成所に入る予定なのね?娘のアイギスと同期じゃない!仲良くしてくれると嬉しいわ」
そう言って素敵な笑顔を向けてくるのがサニーさんの双子の姉のステラさん。コネで推薦枠にねじ込まれましたが合格したわけではありません。
「試験を受けるだけでまだ合格すると決まったわけでは……」
「サニーが面倒見るんでしょ?合格なんて決まったようなものじゃない。そうだ!アイギスも一緒に鍛えてもらったら良いんじゃない?」
「えっ!?私も!?」
そして私の試験対策訓練に巻き込まれそうになっているのがステラさんの娘で私と同い年のアイギス、訓練はともかくとして魔界に来て同年代の友人ができるのはとても心強いです。
「私は構わないけど、娘なんだし姉さん達が面倒見ればいいじゃん?」
「できればそうしたかったんだけどね、今年の試験担当私の班なの。だからお願いしようかと思って」
「じゃあしょうがないかぁ。アイギスも桐子も頑張ってついてきてね」
「が、がんばります……」
「おばさんには負けないから!」
「……そう。」
部屋の温度が急激に下がった気がしました、寒くないのに寒気がします。アイギスー!それたぶん言ったらだめなやつだから!血縁上はおばさんで合ってるけど本人に言ったらアウトなやつだから!
……明日からの訓練が厳しくなりそうな予感がします。
「東西の次期領主も来る予定だからな今年の試験は楽しみなやつが多いぞ。いつもより賭博も盛り上がりそうだな!」
「うげっ、できれば会いたくないなぁ……」
「サニー、いい加減にけじめを付けてきなさい。あなたが避け続けて一人になるのはあの子の方なのよ?」
「と、ところでレイヴン、お義兄さんの息子さんもそろそろじゃなかった?」
「あー……その話聞きたいか?」
過去に何があったのかは知らないけれど露骨に話を逸らすサニーさん、そして転換された話に歯切れの悪い回答を返すのがレイヴンさん。レイヴンさんはステラさんの旦那さんでアージェント家には婿入りだそうです。
「兄貴の息子は2年連続で不合格だ。今年がラストチャンスだな」
「……嘘でしょ。あの試験内容で落ちるやついるんだ……」
「いるんだよなぁ、それが。そういえばナタリーには会ったか?あいつだいぶ寂しがってたぞ」
「日中に一度ね。どうしてあの子は……」
リビングの扉が勢いよく開け放たれました。
「お義姉様が帰ってきたと聞いて!」
「ナタリー、誰も帰ってきたなんて言った覚えはないんだけど?」
「私のお義姉様センサーにビビッときたので!ビビっと!」
「そう……」
勢いよく抱きつくナタリーさんと諦めたような表情でそれを受け入れるサニーさん。いい年した姉妹の愛情表現にしてはいささか行き過ぎのような気もしますが。
「……ナタリー」
「はい」
「3ヶ月後、養成所の入所試験がありますね?」
「そうですね」
「今年はアイギスとそこにいる桐子が試験を受けます」
「なるほど」
「私は二人の面倒を見なければいけません」
「……養成所を爆破してきます」
至って真面目な顔つきでテロ行為を宣言するナタリーさん、この人だいぶやばい人なのでは?
「待ちなさい。試験前の2週間はナタリーに二人を預けようと思います。ふたりとも良い成績で合格できたら、一日付き合ってあげましょう」
「約束ですよ!?お姉様とデート♪お姉様とデート♪ふふふ……ふへへへ……」
だらしない笑顔を浮かべるナタリーさん。なんか嫌な予感しかしませんが、明日からは試験に向けた訓練が始まります。諸々を済ませ早めに寝ることにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます