第5話 魔導列車と焼肉弁当
こんにちは、白銀桐子です。私は今、王都へ向かう魔導列車というものに乗っています。
意図しない状況で魔法を暴発させてしまったのが一昨日のこと。リーゼロッテさんによって過去に送られ、サニーさんと出会って魔力と魔法の扱い方を軽く教えてもらったのが昨日。サニーさんが魔界に行ってる間、人間界の担当になったリリーさんと入れ替わるようにして魔界へやってきたのが今朝のこと。
そして今、サニーさんによって魔界に連れて行かれた私は魔界の中心である王都へ向かう列車に乗っています。
どうやらサニーさんとリリーさんは旧知の間柄のようでしたが、会話の内容は私にはさっぱり。なにやら本がどうとか言っていましたが、本って確か過去に存在した資料の保存形式のことですよね。端末があれば検索できたのですが、こちらの時代に来る際に持ち込むことができず、その……
裸だったんですよ、私!全裸!15の乙女が!ありえないでしょ!
リーゼロッテさんは一段落ついたあたりで殴ろうと思います。
「桐子、食べないの?これ結構美味しいよ」
「いただきます」
未だに困惑しつつある私の前にあるのは『魔界名物!!焼肉弁当』と銘打たれたパッケージ。駅弁っていうやつだと思います、歴史の授業で出てくる過去の資料写真で見た覚えがあります。
隣に座るサニーさんはすでに2つ目に手を付けています、食べ過ぎじゃないですか?昨晩もそうでしたが胃に穴でも開いてるんですか?
弁当の蓋を開けると、タレで味付けされた豚肉がご飯の上一面に敷き詰められていました。確かに美味しそうです。
味の方はどうでしょう?口に含むと濃いタレの味を強く感じます、これは男子が好きそうな味ですね。私もまぁまぁ好きです。
噛み締めていると肉の旨味、これは旨味?なんか独特のクセというか野趣?これは本当に豚肉ですか?
「サニーさん、これなんの肉ですか?」
「これ?この辺にいるかな……」
そう言うとサニーさんは窓の外に目を向けました。この辺に養殖場でもあるのでしょうか?それとも野生?
「いた!あそこにいる真っ黒いやつよ!あれ!」
「黒い……イノシシ?」
窓の外に列車と同じ方向に走る黒いイノシシの集団が見えます。サイズは1m以上ありそう、結構大きいですね。
「あれはまだ小さいやつね、大きくなるとこの列車ぐらいのサイズになるの」
「ええっ!?」
大きいというかそれはただの怪物なのでは?魔界ってひょっとしてこういうのがゴロゴロいるんでしょうか?私、こっちで生きていけるかな?
思い悩んでいると群れの内の一匹が列車の方に近づいてきました。列車と並走するように近づいてきて……近づいてきて……グシャ!!
列車の窓に鮮血が飛び散りました。
「うぇっ……」
「あー、よくあるんだよね。到着予定が遅くなるかも、ごめんね?」
よくあるんですか!?こういうのが!?ちょっと私こっちで生きていく自信がなくなってきました。
『業務連絡、業務連絡。E03通過後魔物との接触あり、回収班の手配願います。続きましてお客様にご連絡いたします。当車両は次の王都東部駅におきまして、車両の整備点検を行います。以降の駅につきましては、到着が遅れることご了承くださいませ』
列車内に響くアナウンスがこちら側の日常を強く印象づけてきました。
私、こっちで生きていけるのかな……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます