第4話 幕間~白銀桐子について~
桐子の魔法練習を終え当面の衣類を買い揃えたサニーは、事務所兼自宅に戻り日常生活のアレコレを済ませると自室にあるベッドでゴロゴロしていた。どのみち翌朝には魔界へ移動するので何かに手を付けるような気力もなく、ただただ眠気が来るまで手元のスマホをいじっている。
コーイチは近所に自宅があり妻と娘がいるのですでに帰宅済みである。素晴らしきかな定時退勤、緊急時には呼び出されてしまうのだが。
なお、桐子には翌朝の起床予定時刻を伝えた上で、普段使っていない客間に放り込んだ。
しばらくするとメッセージアプリ宛にコーイチから連絡が入った。
『桐子の様子はどうだ?』
『順調すぎるくらい順調ね、本当に魔法が暴発したのか疑わしいくらい』
『なるほど』
彼女に対して抱いた少しばかりの違和感、正直なところあの程度ならわざわざ過去に送ってくる必要なんてなかったのではないかと思う。元いた時代とのつながりを切り捨ててまでリーゼロッテは何がしたかったのだろうかと考える、桐子の魔法が暴発したのまではきっと事実。ならばその先は?家庭や地域に居場所がなくなった?あるいは本当に魔法の扱いを教えられる人員がいない?いや、それはリーゼロッテ自身が教えてあげれば済む話だ。居場所だって彼女の権限を持ってすればどうにかなる。
考えたところで結論が出そうにないので思考を放棄することにした。
『お前に付き合ってる彼氏とかはいないんだよな?』
『煽ってるの?私が亜種だってこと知ってるでしょ』
『すまん。隠し子とかあり得るかと思ってな』
亜種、正式には固有魔法継承不全。何らかの理由で発症する生まれてくる子供に固有魔法が正しく引き継がれない症状。固有魔法が遺伝に近い性質を持つからおそらくは突然変異的ななにかだと思ってる。
桐子は魔力を消費することで武器を作ることができたけれど、私にはあれができない。何度やっても武器を形作る手前の段階、銀の光が出てくる所で止まってしまう。これはこれで使いみちがあるのでそれに関してはあまり気にしていないが。
問題なのは子供が高確率で亜種になってしまうこと。技能の継承や戦力の維持を考えるとこれは非常に痛い。故に私を含めた亜種の人達は独り身であることが多い。
私に友人がいないとかそういうのじゃないからね!決して!ほんとだよ!
『とりあえず、桐子を死なせたりするなよ』
『そんなヘマすると思う?』
『そうか?俺はお前にやらされた訓練で何度も死にかけたが?』
『あの程度で死ぬほうが悪いのよ』
私もやった普通の訓練をしただけなのにコーイチったら貧弱ですね。桐子次第ではありますが人間用の訓練メニューを考えないといけないかもしれません。それはめんどくさいなぁ。
『嫁が呼んでるから切り上げるぞ』
『ほどほどにしておきなさいよ』
コーイチの嫁は性欲が強い、それに応えられるあいつも大概だけど。いや、たまにダウンしてることもあるから応えられてはいないのかもしれない。
未来に桐子がいるってことは私にもいずれそういう機会が来るはずで、けれどもいまいちイメージが沸かない。とっくに成人しているし、そういう欲求がないわけでもない。生まれのせいもあって、それが満たされることのないものだと思っていたから突然選択肢が増えてもいろいろなものが追いつかない。
愛とか、恋とか、それ以前に私は誰が好きなんだろう。
迷走する思考に振り回されながら、私は眠りについた。
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