第131話・楽しい楽しい質問タイム

「というわけで最初の質問だ。盗んだ物は何処にやった?」

 俺は多分一番気になってる人が多いであろう質問を投げかける。


「誰がお前らなんかに教えるか」

 思いっきり悪態をつかれる。うん反抗的な態度を取るな。今の状況を理解していないのか?


「そうか。じゃあ闇触手を強く縛り上げろ」


「グアアアアアアアア」

 痛みで悲鳴を上げる怪盗アルセーヌ。本当に馬鹿だろ。こうなること分かってただろうに。


「ハア。そういうのいいから。早く自白しましょうね」


「だから誰がするものか。空間魔法・空間転移」


「魔法破壊」

 往生際の悪いことにまだ抵抗してくる。


「この魔法はあまり連発出来ないから使いたくなかったけどしょうがない。時魔法・時戻し」


「魔法破壊」

 俺はいつもの要領で魔法を破壊した。ぶっちゃけ今の俺に破壊できない魔法なんてほとんどないからな。それこそ俺よりも魔力が上、もしくは特殊な条件が揃ってない限りは。


「へ?」


 怪盗アルセーヌから間抜けな声が出る。

 まあ、あれだな前学園で会ったときは滅茶苦茶に強い存在だと思ってたが。今の俺は神だからな。

 文字通り格が違う。

 ぶっちゃけクソ雑魚だ。


 まあでも神じゃない俺だったらな戦ったら勝つだろうが。この状況になった時に逃げられていた可能性は高そうだな。

 まあ、今考えても仕方がないか。

 あ。それとせっかくだし心折ってみるか。いやもちろん魔法でごり押せば簡単に自白させれるし、精神を操れるだろうけど。それじゃあ流石に芸がない。

 後面白くない。


「取り敢えず。キャンディー先生でしたっけ?怪盗アルセーヌをやってることが生徒達にバレたらどう思われますかね?」

 俺は小声で耳打ちする。

 その瞬間に面白いように顔が真っ青になる。


「な、何故それを知ってるの?」

「いやまあ。そんなことを言われましても。さてと。ではいいことを教えてあげましょう。今貴方の命は私に握られています。もし逃げれたとしても私は貴方の名前・職業・住んでる場所・年齢・好みと様々な情報を握っています。ようは今現在貴方はまな板の魚という訳です」

 まあ。後半は知らないけど。この脅しは効くだろうな。


「もしかして。お前は日本人か?」

 え?何でバレた?

 あ。そういえばまな板の魚って言葉使ったな。確かに異世界にそんな言葉ないな。知ってるの日本人ぐらいだよな。

 ああ。どうしようか。いや普通に誤魔化して尋問を続けるか。


「いや。ちょっと何を言ってるか分かりませんね?まあ。それはいいとして早く盗んだ物をどこにやったか白状してくださいよ。ほら言わないと痛い目を見ますよ」


「くっ。殺せ」

 おい。絶対この人やりたくてそのセリフ吐いただろ。本当に今の状況分かってるのか。そういえば学園であった時大分頭お花畑の天然だったな。

 それが素かは分からないけど。まあうん色々とねじが飛んでるな。


「闇触手、縛り付けろ」


「グアアアアアアアア」

 さっきと同じ光景を繰り返す。


「はい。早く白状してください。ほらオークション会場に来てくれた観客の皆さんも待ってますから」


 ・・・・・・・・・


 少しの沈黙の後。俺はもう一回闇触手で縛り上げる。


「グアアアアアアアア。分かった言うわ」

「最初からそう言ってくださいよ。さて、で?盗んだ物はどうしましたか?」


「全て元の持ち主に返したわ」

 噓探知で嘘と出た。


「闇触手・強く縛れ」


「グアアアアアアアアああああああ」


 ボキ


 骨の折れる音が聞こえる。


「さてと。反転・再生魔法・再生・反転解除」

 俺はサクッと骨を治してあげる。いやはやなんて優しいのだろうか。


「嘘はよくないですよ。嘘は本当のことを言ってください」


「分かったわ。全て私の空間魔法の中にあるわ」

 今度はしっかりと本当と出た。


「じゃあ。全部出してください。そんで私が返しますよ。幸いここには各国からの重鎮に商人がいますからね。全部とは言いませんがほとんど返すことが出来ますよ」

 俺のその言葉は眷属の用意してくれた拡散機を通して会場全体に広がった。

 その瞬間に今までにない程会場が沸き立つ。


 まあ。そうだな。今まで盗まれて絶対に返ってことないと思っていたものが返ってくるんだからな嬉しいわな。


「嫌に決まってるわ。私の集めた宝物なのよ」

「いや。人から盗んだ物だろ。返せよ。普通に返せよ。本当に今の状況理解してるのか?」

「それでも嫌だわ。死んでも私は私の宝物を返せない」

「ハア。何でそんなにこだわるの?返せばいいだけやん。別に俺も鬼じゃない。同郷のよしみという訳で物を返すのならば、制約をかけるけど見逃してあげるよ」


「同郷のよしみって、やっぱり貴方日本人なのね」

 あ。思いっきり失言したな。でも別にばれても問題はないか。


「まあ。そういう訳だ。で?どうする?」


 ・・・・・・・・


「貴方、元の世界に帰りたくはない?日本人ならばこの気持ち分かるでしょ」

 何故か勝ち誇ったように俺にそう言ってくる怪盗アルセーヌ。

 いや別に俺は自由に行き来できるし問題ないんだが。


「いや。俺は俺の力でこの世界と日本を自由に行き来できるから何も問題はないよ」


「は?ちょっと待って、え?貴方も自由に行き来できるの?」

 いきなり顔色が変わったようにそう言ってくる。

 つか待てよ、貴方もって貴方もって逆にあんたも異世界に自由に行き来できるのかよ。


「まあ。そうだな。さてとそれじゃあ俺元の世界というか日本でそこそこの権力と伝手があるから、もし今返さないというなら、日本で、いや世界にいられなくするぞ。今簡単にお前を拘束した俺の力を知ってるのならば、それが本当だと分かるだろ」

 俺は少しアプローチを変えて、そう脅しをかけてみる。


「そ。それだけは辞めて。お願いそれだけは」

 そしたら俺に縋るように叫んできた。流石にこれは効いたか。まあ日本の方が圧倒的に便利で娯楽に溢れてるからな、そんな場所にいられなくなるのは辛いだろう。


「じゃあ。分かってるよな。盗んだ物を返せ」


「嫌よ」

 堂々とそう言い放ちやがった。


 え?お前は馬鹿か。本当に今の状況を理解しているのか?何だろう。流石にこのやり取りにも疲れてきたし。観客も飽きてきただろうし。どうしようかな?

 しょうがない一番簡単な方法を取るか。という訳で殺して眷属にするか。


「ハア。じゃあ。しょうがない。死ね」

 俺は神の力を使い。サクッと殺す。


「じゃあ。次だな。死霊魔法・死霊生産」

 俺は慣れた手つきで死霊として蘇らす。


 パリン


 その瞬間だった。

 急に俺の魔法は破壊されて、怪盗アルセーヌの体が輝きだす。


 そして殺したはずの彼女の周りに歯車のようなものと時計が出現する。

 そして出現した時計の針が激しく逆回転を始める。


「な。何が起こっているんだ?」

 オークション会場にいる誰かの呟きが会場全体に響き渡る。

 俺としては知らないよ。こっちが聞きたいよだ。


「取り敢えず。魔法破壊」


 パリン


 俺の放った魔法破壊が破壊された。

 いや、正確に言うならば発動する前の魔力に無理やり変換されて、歯車の中に取り込まれた。


 何だこれは?

 本当になんだ?何なんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る