第129話・怪盗アルセーヌが現れた(本物)
「皆様。大変お騒がせしました。しかしご安心ください。賢者の石は無事でございます。こんなこともあろうかとこちら側で事前に賢者の石を安全な場所に保管しておりました。あの怪盗アルセーヌが盗んだのは私共の方で用意してありました偽物です」
闇助がマイクを片手に会場全体に響き渡るようにそう言った。
ついでに俺が精神魔法・精神安定を会場全体にかけて混乱を鎮める。
それにより怪盗アルセーヌこと俺の出現によって混乱していた会場は一瞬で静かになり、元の様子を取り戻す。
いやはや、我ながら面白いように上手く行くな。
そんなわけでオークションが再開された。
「というわけで皆様。ひと悶着ありましたが。賢者の石のオークションを行います。金貨1万枚からどうぞ」
あ、どうでもいいかもだが、最初は賢者の石強化Verと言っていたが、今は賢者の石そのまんまを言わせた。
まあ、賢者の石を使えば死者蘇生も可能だし、あくまで優秀な魔術師がいればという話ではあるが、それでも賢者の石自体がしっかりと価値のある物だし。問題はない。
一々突っ込む野暮な人はいないだろ。
「おい。さっきは賢者の石強化Verと言っていなかったか?」
いたよ野暮な人。フラグ回収が早すぎるよ。一級フラグ回収者の称号でも持っているのか俺は、いや持ってないと思うけどさあ。
ハア。さてどう誤魔化そうか。
いや、別に誤魔化す必要なくね。今現在賢者の石は闇空間の中にある。それを今速攻で俺が強化を施せばええやん。もちろん世界のバランスを崩さない程度で、ほんで闇助が言い間違えましたって、失礼しましたって言えば済むことやし。
というわけで賢者の石強化タイムクッキングの始まりです。
まず最初に賢者の石を用意します。
賢者の石に闇の成分を抜いた純粋足る魔力を注入します。
完成です。
鑑定
賢者の石強化Ver
一回のみ生命を自由に蘇らせることが可能。
ただし死体が原型をとどめている形で残ってる場合に限る。
また。この賢者の石強化Verを服用した者は寿命が大幅に伸び身体能力に魔力が上昇する。
よし。オッケーと。じゃあこれで出品させますか。
闇助に適当に念話で説明をしてと。うん説明終わり。
「おい。どうしたいきなり黙り込んで」
さっきの人からまた声が飛ぶ。まあちょっと時間かかったし当たり前か。
「いやはや。大変申し訳ございません。今我が神からお言葉を頂いておりました。まずこの賢者の石はしっかりと強化されています。従来の物とは違い。この賢者の石単体でも死者を蘇らせ。この賢者の石を服用すれば寿命に身体能力・魔力が大幅に上昇するという非常に優れた物となっております。紛らわしい発言をしてしまいまして大変申し訳ございませんでした。ではでは。オークションを再開いたします。賢者の石もとい賢者の石強化Verを金貨1万枚からどうぞ」
「金貨10万枚だ」
「金貨13万枚じゃ」
「金貨20万枚」
「金貨21万枚でどうじゃ」
「金貨24万枚出す」
「金貨25万枚」
「金貨26万枚だ」
「金貨27万枚じゃ」
「金貨30万枚」
「金貨40万枚出そう」
「金貨45万枚じゃ」
「金貨55万枚だ」
「金貨76万枚でどうじゃ」
「金貨77万枚だ」
帝国の皇帝のその言葉以降沈黙が走る。
これは、金貨77万枚で落札か。
さあ。どうなる。
・・・・・・・・・・・
まあ、沈黙ですよね。
流石に金貨77万枚を超える人はいるか。しっかし賢者の石強化Verが金貨77万枚か。いやはや何か幸運な数字ですな。
「では。誰も居ませんね。というわけで」
「ちょっと待った。金貨100万枚出そう」
オークション会場に声が響く。
男とも女とも分からない声だ。誰だ金貨100万枚なんて大金出せる人は。つか。何処からこの言葉聞こえた。あれ?姿が見えないな?何処かに隠れているのか?まあいっか、そっちの方が面白そうだし。
「お、金貨100万枚が出ました。他に出せる人は今いませんか?」
闇助の声が響く。
しかし誰からも声は上がらない。
まあ、流石に金貨100万枚は化け物か。つか払えるのかな?払えんかったら。まあ、払えんかったでその時か。
「というわけで。落札したのは番号42番さんです。さあ。こちらに来て賢者の石を受け取ってください」
「分かったわ」
そして声の人が会場にいきなり姿を現す。
その姿は俺のさっきしてた服装とほとんど同じであった。
つまり何が言いたいかというと。怪盗アルセーヌさん(本物)が来ちゃったという事だ。いやはや面白いですな。
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