第128話・怪盗アルセーヌ

 さてと。怪盗アルセーヌになって賢者の石もとい死者の石を盗むことを決めたのだが、ふと思う。怪盗アルセーヌって男、女どっちだ?

 いや常識的に考えれば男だが、最近の傾向からして女ってのも結構あるからな。マジで分からん。


「といわけで眷族、質問だ。この世界で活動している怪盗アルセーヌは男か女、どっちだ?」

「はい。主様。私共の情報によりますと女でございます」


「そうか。じゃあ女体化するか。ほほいのほいっと。さてと女体化完了、でもこのままだと服があれだな。というわけで、眷族良さげなのある?」

「はい。もちろんそう言うと思いまして用意してあります」

 

 眷族が闇空間から怪盗アルセーヌなりきりセットを取り出して俺に渡してくれる。流石眷族だぜ。用意がメチャクチャいいね。


「お。流石だね。ありがとう。じゃあ早速着替えますか」


 着替えること5分。


「ほい。着替え完了っと。自分で言うのもあれだが中々似合ってるな。大きなシルクハットに紫色のタイツ、右腕には赤色の腕ストッキング、左腕には青色の腕ストッキング、紫を基調として作られた大きなワンピース、更にその上から紫で大きなフリフリのスカートが重なる。ほんで更に紫色の大きなマント。そして最後に顔を隠すために紫と黒で作られた仮面と。うん。良いね。そう思うだろ眷族」


「はい。もちろんでございます」

「そうかそうか。じゃあちょっくら賢者の石もといお前らの作ったクソ危ない死者の石を盗んできますわ」

「すみません。私共のせいで迷惑をかけてしまい」


 そう言って眷族が俺に土下座をしてきた。やっぱり忠誠心はMAXなんだよな。今回は忠誠心が行きすぎた結果なんだよな。

 まあ、ぶっちゃけ今現在怪盗アルセーヌ状態で盗みを働くという凄く楽しい場所を用意してくれた眷族に感謝でいっぱいなんだが、やらかしの事とか一切気にしてない。失敗は誰にでもあるしね。


「ああ。いいよ、別に気にしなくても。まあこれから気をつければいいよ。お前らに悪気がないのは分かってるから」

「慈悲深きお言葉ありがとうございます。主様」

「おう。じゃあ華麗に盗んできますわ。というわけで死霊転移」


 そして俺は今現在司会を行っている闇助のすぐそばに転移した。

 つまり俺の目の前に死者の石があるというわけだ。


「さあさあ。皆さん。こんちには怪盗アルセーヌです。今宵、人を蘇らせるという世界のバランスを崩しかねない賢者の石を頂きに参上いたしました」

 俺はそう言って綺麗に礼をする。


「闇魔法・闇の鎖・アイツを捕らえろ」

 闇助が大量の鎖を出現させて俺を捕まえようとする。もちろん眷族間の念話を使い。この場にいる眷族全員に今回の件及び俺が今怪盗アルセーヌとしてこの賢者の石こと死者の石を盗むのは分かっている。

 つまり。パフォーマンスだ。


「砕けろ」

 俺がたった一言そう唱えるだけで大量に出現した闇の鎖は一斉に砕けて小さな小さな闇の破片となって辺りを舞う。結構神秘的だ。


「闇の鎖が効かぬか。ならば。警備隊一斉射撃だ」


「「「「「闇砲」」」」」

 闇助の言葉に従いオークション会場にいる警備員たちが全員俺に向かって闇の砲撃を浴びせて来る。

 因みに今来ている客には被害が出ない様にしっかりと調整はしてあります。流石俺の眷族達そういうのはしっかりと心がけてるよ。


「さてと。じゃあ闇吸収。からの死霊転移」

 俺は闇砲の全てを吸収した後。後ろの方にいる警備隊眷族の所に転移する。


「何。何処へ消えた怪盗アルセーヌ」

 俺の意図を察したのか闇助がそう叫んでくれる。


「ここだ。我はここにいる」

 俺は後ろの方でマントを闇の手を使いはためかす。いやはやカッコよく決まったわ。


「いつの間にそんな所に。流石怪盗アルセーヌ。だが無駄だ。行け警備隊。怪盗アルセーヌを捕まえろ」

 闇助の声がオークション会場に響き渡り。警備隊もとい俺の眷族が剣を俺に向けて走って来る。

 そして俺は飛行の能力を使い飛び立った。因みに神になったおかげか。翼とか出さずに。それでいて超絶自由自在に飛行することが可能となった。


「さあ。空飛ぶ我を捕まえて見ろ。ハハハハハハハハハ」

 俺は少しいやらしい感じで笑おうとしたが女体化してるせいか。思った以上に可愛らしい声で笑ってしまう。何か少し拍子抜けするな。まあいいか。


「警備隊追いかけろ」

 警備隊が俺と同じように飛行して追いかけながら攻撃をしてくる。


 俺はそれを全て躱すか。吸収していく。

 まあ、一種のパフォーマンスだな。


 そうして暫くパフォーマンスを続けたら。賢者の石のあるすぐ隣に着地して。マントをはためかせて賢者の石を隠すと同時に闇空間に仕舞う。


「おのれ。怪盗アルセーヌ。賢者の石を何処にやった」

 闇助の怒声が飛ぶ。うん。良い演技だ。


「さあ。何処かな。ではこれにてさようなら」


 パン


 俺はそう言って眷族が用意してくれていた煙玉を闇空間から取り出して噴射。辺りを煙で立ち込める。

 そしてそのまま死霊転移でVIP席に戻り。速攻で着替えてから女体化を解除する。


 煙が晴れた頃にはあら不思議。怪盗アルセーヌも賢者の石もなくなってました。


 はい。任務完了っと。


「いやはや。思った以上に楽しかったな。怪盗アルセーヌごっこ。さてと今メチャクチャ混乱してるし当初の予定通りに俺が出向いて人を生き返らせますかって、まてよ。なあ。眷族。この賢者の石もとい死者の石って闇の力を俺の神の力を使って抜けば賢者の石に戻るんじゃね?」

「はい。戻りますよ」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


「そうか。やっぱりそうだったか。じゃあ。今戻すから。戻し終わった後に闇空間にぶち込んで。闇助に実は怪盗アルセーヌに盗まれたのは偽者で本物はしっかりと別の場所に保管してありましたから無事ですと言わせてくれ。そしたら全部解決じゃん」


「そうですね。はい。確かにそうすれば全部解決ですね。ではそうします」

「オッケー。ありがとう。じゃあ死者の石を賢者の石に戻すわ」

 俺は闇空間から死者の石を取り出して神の力を使って。というか闇魔法闇吸収を使って闇の力を全て吸収する。


「さてと。これで完璧だな。ほい一応鑑定」


 賢者の石

 錬金術を極めた者が生物の命を凝縮させて作り出せる禁忌の品。

 この石を飲み込めば寿命が大幅に伸び、体のありとあらゆる機能が全盛期で固定される。

 また、この石を媒介にすれば死んだ者を蘇らす禁術・死者蘇生の行使が可能となる。


「うん。完璧だな。じゃあこれを闇空間に仕舞ってと。はい。完璧。これでよし。じゃあオークションの続き見て行きますか」

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