第124話・春の蘇生大祭り

「勇者様が消えた?」

 とある大臣がそう呟いた。

 彼は今の状況がよく理解できていなかった。いきなり神と名乗る少年および勇者様のお知り合いが現れて帝国軍を壊滅させて絶体絶命であった我が国を救った。

 しかし、国王様がその力に目がくらみ、いや、正直言えばこの場にいる全員がその力に目がくらみ、邪な考えを抱いた。

 神の力を使い。全ての敵軍を殺しての世界征服。それは恐ろしく魅力的で実現可能なものだった。

 だからそれを口にしてしまうのは仕方のないことかもしれない、だけど、それを口にした国王様は殺された。

 一切の何の躊躇いもなく、それを勇者様は咎めなかった、というよりもそれを納得してしまった。

 そして勇者様と神と名乗る少年いや神は勇者様とよく分からない話をした後、勇者様が何処かに消えた。


 意味が分からなかった。


 何があったのか、何をどうしてこうなったのか。


 今現在この場には、味方か敵かは分からないが簡単に自分を殺せる勇者様以上の圧倒的な力を持つ神と、いきなりの事態によく呑み込めてない私含むこの国の重鎮たち、そして国王様もといお父上を亡くして泣いている王女様に勇者様の連れていた仲間一人だった。


 いや。どうするんだよこれ。どうすれば良いんだよ。

 何をすれば正解なのだ。どういう行動を取れば私はいやこの国は生き残れる。

 少なくとも帝国という脅威は去っている。しかしそれ以上の爆弾が存在している。これをどうにかして味方につける、もしくは、我が国に対する関心をゼロにして元の世界に帰ってもらう。

 それしかないな。しかしどうやって帰らせる。どうやって関心をゼロにさせる。

 ヤバい。分からない。マジで分からない。

 そうすればいい。どんな行動が正解なんだ。

 そして私は一つの結論を出した。


 そうだ。神に王になって貰おうと。

 神は最強の存在だ。少なくとも私の知る限りではあるが。

 そんな神がこの国の王になれば全てが上手く行く。

 どんな国だってこの国には戦争を吹っ掛けないだろうし。決して手を出さないと思う。むしろ戦争を起こされないように。我が国に頭を下げて媚を売って来ると思う。

 そうなれば。我が国は絶対的なる国となる。この世界で最も強く最も偉大なる国となる。

 なんたってありとあらゆる全ての存在を一瞬で殺せるだけの力を持つ神が国の主なのだから。


 良いぞ。いいぞ。この案は良いぞ。我ながら最も最良の案だ。

 さあ。後は提案だけだ。


 ――――――――――――――――――


「神様。お願いがあります。どうが我が国の王になって頂けないでしょう?」

 俺が勇気を元の世界に帰してから少し時間が経ってから多分この国の重鎮?っぽい人がそう言って俺に頭を下げた。

 王?王とな?この国の王?

 まあ、何だこの国の王になるというのは中々に面白そうではある。しかし。俺がこの国の王になったら。多分国家間のバランスが崩壊すると思う。

 いや、まあ帝国軍あれだけ皆殺しにしておいて言えたセリフでもないかもしれないが。それでも、俺という最強の存在が納める国なんて、そりゃもう全ての国が平伏することになるぞ。


 それは。何だろう。面白くないな。

 いや面白くなくはないかもしれないが、俺としては自由でいたい。この国の王になれば仕事とか出来そうだし。まあ、放り投げそうだけど。ほんで眷族にぽいだな。

 眷族?あ。そうだ良いこと思いついた。今さっき俺が殺した王様を眷族として蘇らせて再び王にすればええやん。これなら全て解決やろ。


「というわけで眷族になれ」

 俺は適当にそう言って国王を蘇らせてというか、素材に眷族を創る。


「さてと、命令だ。この国の王となれ」

 俺はシンプルにそう命令を出す。


「分かりました。主様」

「さてと。これでこの国に王はいるということになったね。というわけで俺は王にはならない。なるつもりはない。後まあそうだな、帝国軍には俺を召喚して生意気な事を言った罪は償わせたし。勇気も帰したし、帰ろっかな?」

 俺は一人そう呟いた。

 というわけでマジでどうしようか。

 正直言ってこのまま全てを放り出して帰るのもありっちゃあ、ありだ。

 でも、俺結構この世界で滅茶苦茶して多分世界のバランスとか崩れてるからそれの後処理くらいやるのもまあやぶさかでない。


 ・・・・・・・・


 うん。どうしようか。だって俺聖教国と帝国をかなり滅茶苦茶にしてるからな。自分でも中々に鬼だと思うレベルで滅茶苦茶にしてっからな。特に帝国とかあれだけの兵士を一気に殺されたら相当にきついだろうな。兵士達にも家族いるだろうし。


 ・・・・・・・・


 何だろう、少しだけ良心が痛んだ。いや。ぶっちゃけ兵士を殺した件には何とも思わないけど。その家族が可哀想だなって。


 ・・・・・・・・・


 ハア。しょうがない。眷族として蘇らすか。

 俺も何だかんだで人間だな。いや。まあ今考えている内容もやろうとしている事も人間を辞めてるけど。 

 後まあ、この国。確か山田王国だっけ?山田王国は多分大丈夫やろ。

 一応帝国には山田王国には手を出すなと伝えるつもりだし。王様も俺の眷族にしたから能力値上がってるだろうし。

 きっと前よりも良い国になるやろ。知らんけど。ぶっちゃけそこまで手を貸す義理はないしね。


「そんなわけだから俺は去るわ。後はお前らで好きにやってくれ。死霊転移」

 そう言って俺は適当にどっかの山の中に転移した。


 ――――――――――――――――――


「さてと、じゃあ。帝国軍を蘇らせていきますか。といってもどうやって蘇らすか?まあ、何となくでやってみるか。多分出来るやろ。俺神だし。神の権限発動・俺が殺した帝国兵たちを蘇えれ。そして俺の眷族となり。元の生活に戻り善良に生きろ。ただし山田王国には決して危害を加えるな」

 俺がそう言った瞬間に各地で倒れていた帝国兵は蘇り、自分達の住んでいる帝国に戻っていった。


「感覚的に何か眷族が増えた気がするな。てかあれだな。思った以上に疲れた。何だろう魔力ではない何かが使用された気分だ。神力的な物でも使ったか?知らないけど。後はそうだ思い出した村の人たちを蘇らせてあげよう。帝国兵によって無残にも殺されてしまった村の人たちをまあ、こっちは帝国兵と違ってしっかりと眷族化はせずに蘇生させるか。いや。それだてと精神的ダメージとかのケアが出来ないな。そういうの考えると面倒だし眷族化でいっか」


「ほい。というわけで神の権限発動・帝国兵によって殺された村人たちよ。俺の眷族として蘇れ」

 さっきと同じように神力的なものが消費されるとともに眷族が増える感覚があった。


「うん。これでよしと。さてと、じゃあどうしようか。元の世界に帰るか。いや?せっかくだし信者増やしでもするか。いや何だ、神になって今本格的に神の権限を使って思ったのだが。神力的な物が増えたら俺は更に強くなれるんじゃないかってな。更に力を得られる。そのためには信者を増やすのが最も効率的だ。というわけでこの世界の神にでもなるか。丁度元々この世界の神だった偽光神も殺したし乗っ取り出来そうやしね。うん実に楽しそうだ」

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