第119話・外伝・勇者は新しい仲間を手に入れた

 山田王国、それは勇者山田によって建国された国であり。

 豊かな資源を保有していた。大国とまではいかないもののかなりの国土を誇る国であった。

 しかし。侵略を主として活動している超大国である帝国により滅亡の危機に扮していた。

 それを救うべく。山田王国は伝承を頼りに勇者を召喚した。

 そして勇者は現れた。それもとびきり強い勇者が。


 彼の名前は勇者・ユウキ


 異世界から来た勇者であり。一騎当千レベルの莫大な力と強い正義感に屈強な精神を持つ絵に描いたような勇者であった。

 そんな勇者・ユウキの力により圧倒的に優位で合ったはずの帝国軍をどんどん撃破し、山田王国に希望という大きな光をもたらした。

 これは、そんな勇者・ユウキの物語である。


 ―――――――――――――――――


「流石ユウキ様です。ユウキ様のご活躍によってこの山田王国領土内にいた帝国軍は全滅しました」

 一人の可憐な少女がユウキに向かって嬉しそうに報告をする。

 彼女の名前はヤマダ・バレットス・レイラ。山田王国のお姫様であった。


「いやいや。そんなことはないよ。まだ帝国は諦めていないし。これからもっと戦闘は激しくなるだろう。だから俺はもっともっと強くならなければならない。だってまだ俺は弱いからね」

 ユウキは自分よりも強い存在を何人も知っている為。決して調子にはのらずそう冷静に判断をする。


「おいおい。ユウキが弱いって、冗談は止めろよう。お前は勇者で最強の存在だろ」

 そうため口で言ったのはビキニアーマーを着用し褐色肌と豊満な胸。そして片手に大きな斧を持った戦士・ライネルだった。


「いや。弱いよ。だって俺よりも強い存在はいっぱいいる。北先生にあの悪魔にクソ親父にいっぱいいる」

 ユウキは前の世界の人たちを思い浮かべてそう言った。


「北先生?それはもしかしユウキ様のお師匠様ですか?」

「ああ。そうだよ。俺の剣の師匠さ。北先生は一人で魔人って呼ばれる凶悪な魔物を倒し、何万という魔物を倒し、何千・何万という人を救った大英雄だよ」


「それは。凄いですね。それであの悪魔ってのは何ですか?ユウキ様より強い悪魔って、下手したら帝国軍よりも脅威になりませんか?」

「ああ。確かにそれは俺も気になるわ。教えてくれユウキ」

 二人に懇願されて、少し躊躇いつつもユウキは悪魔ことタイトについて話し始めた。


「悪魔といっても実際に悪魔ではない。多分人間だ。いやあれを人間というのは怪しいが。闇と死霊の力を使いこなし。何千・何万という眷族を従え。挙句の果てに漆黒の竜さえも従えている。アイツ一人でも非常に強く一対一で戦って俺が勝てるかどうかの相手だ。眷族を引っ張ってこられたら絶対に勝てない。そんな化け物だ。まあでもアイツは前の世界にいるだろうし。合う事は・・・待て?そういえば俺アイツと一緒に召喚されてね?いやでも俺一人だけやったし・・・・・うん。多分大丈夫だ」


「あのう。大丈夫ですか。ユウキ様」

「ああ。ごめん。ごめん。大丈夫だ」

「そうですか。それは良かったです。しかしその悪魔というのは恐ろしいですね。そんな化け物がいるなんて驚きです」

「ああ。そうだな。しかも何がおかしいってその化け物、俺と同じクラスで同じように授業を受けているんだよな」

「同じクラスって、え?その悪魔が学校に通っていたということですか?」

 レイラはユウキの話から勝手に何十メートルという巨体の紫とか黒色で覆われた触手とか生えた化け物を想像していたが。学校に通っていると聞きそのイメージが崩れる。


「ああ。そうだよ。一緒の学校にね」

「えっと。因みにその悪魔ってどんな姿形をしてるんですか?」

「どんな姿形って、普通に俺と変わらない人間だよ、黒髪で背も俺と同じくらいで。容姿はイケメンかは微妙やけど。そこそこカッコいい方では合ったと思うよ」

「なあ。ユウキ、その悪魔って犯罪とかに手は染めてたりするか。話を聞く限り、犯罪に手を染めてなさそうだけど」

「犯罪には手を染めてないと思うよ。まあ。闇という力を使い、死者を蘇らせてこき使ってるから。中々に酷い奴ではあったが」

「なるほどね。じゃあ。その悪魔ってのはユウキのライバルみたいなものか?」

 ライネルは特に何も考えずに本能的にそう思ったからそう言った。


「え?ライバル?ライバルか。確かにそうだな。ライバルだな。ハハハハハハハハハ。まあぶっちゃけ俺悪魔だ何だ言って罵った上にアイツを殺そうとした事もあるけど。今はそこまで嫌いじゃないんだよな。闇の力を使ってるけど。基本的に悪いことには使わなし、むしろ人助けしてるし、俺がどれだけ挑んでも、何だかんだでその戦いを受けてくれてた。逃げようと思えば逃げれるだろうに。そう考えたら俺は嬉しかったんだな。同年代で全力の俺と互角以上に戦えるアイツという存在が。口では何だ言いつつも心ではライバルとして切磋琢磨したいとか思ってたんだな。何だろう心のわだかまりが消えたよ。ありがとうライネル」


「お。おう。喜んで貰えたなら良かったぜ。あ、それでユウキのお父さんってのはどれだけ強いんだ?」

「お父さんか、懐かしいね。小さい頃はそう言ってたな。あ、ごめん。話が脱線したね。そうだね。強さで言えば俺が1000人集まって勝てるかなってくらいの化け物かな?」

「え?何それ本当に人間ですか?」

 レイラが思わずそう突っ込む。


「ハハハハハハ。そうだね。人間か怪しいね。多分人間じゃないと思うよ。だって地面にパンチをして地震を起こせるような化け物だよ。あれが人間だったら正直世界は終わると思うわ」

「そうか。そいつは凄いな。まあ出会う事はないだろうけど。もしそんな存在が帝国軍にいたらと思うと恐ろしいな」

「ハハハハハハ。そうだな。というわけでまあ、俺よりも強い人は結構いるからもっと俺は強くならなければならない。流石にクソ親父やあの悪魔、いや泰斗並みの化け物は出てこないと思うが。北先生レベルの強者がいる可能性は十分にあるからな」

「確かにそうですね。山田王国にも備えあれば憂いなしという言葉がありますし。ユウキ様が強くなるという備えは大切だと思いますよ」

「俺もユウキが強くなるという案は賛成だが。真面目な話。どうやって強くなるんだ?魔物をひたすら倒してレベルでも上げるのか?」

「そうだな。そこが問題だな。自分で言うのもあれがレベルは結構高いし。伸び悩んできている。スキルも前の世界でスキルの書を大量に使ってたおかげでほとんど獲得している。足りてないものと言えば武器かな?」

「あ、あああああああ。それですそれです。ユウキ様、聖剣です。聖剣を探しましょう」

 いきなりレイラがそう叫んだ。


「聖剣を探す?」

「はい。そうです。聖剣を探すんです。この世界に4つしかしないと言われている聖剣を。きっと聖剣があればユウキ様は更なるパワーアップをすると思います」

「そうか。それはいいな。よしじゃあ聖剣を探すか。二人共それでいいか」

「ああ。俺は大丈夫だぜ」

「私も問題ありません」

「よし。じゃあ。今から聖剣を探して見つけて帝国を討つぞ」

「「「オ~~~~~~~~~」」」

 そして三人で手を合わせてそう自分達で鼓舞をした。


 ――――――――――――――――――


 そんなこんなで勇者・ユウキによる聖剣探しが始まった。

 聖剣がどこにあるかというヒントはゼロに近かったため、村々を周って村に伝わる伝承を探して回った。

 その途中魔物や盗賊に襲われている村を助けつつ。聞き込みをしていく。しかし中々良い情報は集まらず停滞していた。

 そんな中だった。とある村で出会った少女がユウキの元に仲間になりたいと走ってきた。

 その村からユウキが出たの3日前でその村からかなり距離の離れた場所にユウキがいたにも関わらず少女がたった一人でユウキの所に来たのだ。

 ユウキはかなり驚きつつも。自分達の旅がどれだけ危険なのかを知っている為。村に少女を帰そうと思った時に気が付く。少女の力に。三日前にあった時は何の力も持たない少女だったのに。今では恐ろしく高レベルな死霊と闇の力を纏った存在であることに。


「あのう。勇者様。私も仲間に加えてください。これでも力はありますし。家事には自信があります。野営の準備も完璧に出来ます、死霊の力を活かした索敵も出来ます。勇者様の為ならば何だってします。身体だって捧げます。だから私を仲間に入れて下さい」

 少女はユウキの顔を見るや否やそう言って懇願を始める。


「その覚悟は分かったけど。本当に危険な旅になるよ。それに最終的には帝国に乗り込み帝国と戦争をするんだよ。そんな戦いに君みたいな少女は巻き込めないよ。というかその闇に死霊の力はどうしたんだい。俺の記憶が正しければ3日前はそんな力持ってなかったよね?」


「大丈夫です。私は勇者様の為ならば死ぬ覚悟は出来ています。それとこの力は優しい神様がくれました」

 ユウキはその言葉を聞き。頭の中に大量の?マークが浮かんだ。


「待って、待って。100歩譲って死ぬ覚悟の方はいい。いや駄目だけど。まあいいそれは置いておこう。優しい神様がその力をくれたってどういうこと?え?ごめんステータスを見せて貰ってもいい」

 ユウキは神という存在が何の対価も無しに善意だけで何処にでもいるような村娘に世界最強へと至れるレベルの莫大な力を与えるというのが考えられなかった。騙されて寿命を吸われていたり。洗脳されていたり。魂を喰われるとか。そんな契約をされていないか。怪しい点はないか。その少女の身を案じステータスを確認して確かめようとした。


「あ。はい。大丈夫です。それと私のステータスを見お役に立てると判断してくれたら仲間にしてください」

 少女はそう言って自分のステータスを見せてくれる。

 そのステータスは想像以上に凄いモノだった。


 ステータス

 名前・アメリア 年齢・15歳 種族・人間 レベル3


 エクストラスキル

 【闇死の少女】


 スキル

 家事 聞き上手 記憶力上昇 魔力強化 魔力上昇 魔力制御 魔法威力強化 身体制御 身体強化 身体能力上昇 足腰強化 腕力強化 筋力強化 骨強化 精神強化 闇耐性 腐敗耐性 魔法耐性 物理耐性 飛行 魂強化 美肉体 美骨格


 称号

【勇者・ユウキのガチファン】【片思い中】【死霊神の恩人】【闇死の少女】


「死霊神の恩人ってどういうこと?」

 ステータスを見たユウキの第一声はそれであった。


「えっと。家の前で神と戦ったとかで倒れていた死霊神を介抱したら貰えました。因みにその死霊神にスキルの書をたくさん貰ってこうなりました。後その人に勇者様の事をいっぱい教わりました」

 ユウキはその言葉を聞きふと。そう、ふととある人物がというかタイトという存在が頭を過ぎった。

 そして久しぶりに自分のステータスを確認してみた。

 ステータス


 名前・純武  年齢・15歳 種族・人間 レベル85


 エクストラスキル

 【勇者】【万能者】【剣豪】【主人公属性】


 称号

 【女たらし】【ハーレム王】【勇者】【悪人の天敵】【魔物の天敵】【悪魔の天敵】【魔人の天敵】【勘違い多め】【トラブルメーカー】【次元渡航者】【死霊神のライバル】【帝国軍の天敵】【組織潰し】


 ・・・・・・・・・・・・


 そしてユウキは全てを察した。

 そりゃもう完璧に全てを理解した。

 タイトが死霊神になってるという事実を理解してしまった。

 そして。一応、そう一応念のためにユウキは質問をする。


「もしかして、その死霊神の名前泰斗じゃないか」

 と


「はい。そうです勇者様」

 少女は満面の笑みでそう答えた。


「そうか。そうか。なるほどね。アイツのせいか。やっぱりアイツは悪魔だ。何でこんな少女にこんな力を与えちゃの?馬鹿なの?善意で与えたかは知らんが。危ないだろ。どういう神経をしてんだよアイツは。ハア。まあしょうがないか。こうなった原因はまあ称号見ても分かるが俺にあるしね。レイラとライネルはこの少女を仲間にして良いと思う?」


「私はユウキ様がそう望むなら」

「俺も勇気がそう決めたならそれでいいぞ」


「そうか、ありがとう。じゃあアメリアこれからよろしくな」

 ユウキはそう言ってアメリアに握手の為に手を差し出した。


「はい。よろしくお願いします」

 アメリアは憧れの勇者様との握手となり震えつつもしっかりと手を握りそう言った。


 そうして、新しくアメリアが仲間になった。


 ――――――――――――――――――

 仲間になったアメリアはかなり凄かった。

 まず凄いのが情報収集能力だ。


 たくさんの死霊を操り聖剣が何処にあるのかをいとも簡単に突き止めた。

 それで、その結論が。

 オークションにあるだった。

 まあ、つまるところ主様の恩人に当たるわけで主様の眷族がアメリアに対して様々な情報を与えるのだ。

 そんなわけで必死こいて探していた聖剣は死霊神であるタイトが持ってるという恐ろしい事実が発覚した。


「ハア。どうしようか。聖剣探すの無理やん。オークションって一体聖剣にいくらの値がつくのか。多分国家予算並みの値段がつくだろうな。レイラ一応聞くが俺らが使える予算で聖剣を落札出来ると思う?」


「申し訳ないですが。多分無理だと思います。流石にそんな大金は用意できません」

「だよな。稼ぐってのも無理だし。かといってアイツに頼んで頂戴と言ってくれるとも考えにくい。ハア諦めるか」

「そうですね。それしかありませんね」

「あのう。勇者様私が聖剣をくれないかって頼んでみましょうか。一応私は何でもしてあげると言われているのでもしかしたら貰えるかもしれませんよ」

 アメリアはユウキの役に立ちたいという一心でそう言った。


「いや。大丈夫だ。別に聖剣が無いと帝国に勝てないわってわけじゃないしな。それに流石に聖剣を頂戴ってのは虫が良すぎる話だしな。しょうがない」

「そうですか。分かりました」

 ユウキの役に立てなくて少ししょんぼりとするアメリア。ユウキはそれを見て頭を撫でる。


「気にしなくてもいいから。大丈夫だ聖剣なんかが無くても俺は十分に強いから」

「勇者様。ありがとうございます」

 二人だけの空間を作り出す。それを打ち壊したのはライネルだった。


「で、どうするんだよ。今から。帝国に攻め込むか?それとも強くなるために修行でもするか?」

「そうだな。取り敢えず帝国を攻め込むにしても俺ら4人だけはキツイし、修行とかするにしても時間がかかるし、一旦城に戻るか」

「そうですね。私もそれが良いと思います。幸いにも今は帝国軍の動きはほとんど無いですし。この機会にこちら側の戦力の確認等をして態勢を整えましょう」

「うん。じゃあ今から王都にある王城に戻りますか」

 そうして勇者御一行は山田王国の王都にある王城を目指して歩き出した。

 しかし。これが新しい死霊の王を生み出すことになるとはまだ、誰も知らなかった。


――――――――――――――――――

 補足説明

 お姫様であるレイラちゃんは攻撃魔法と補助魔法を得意とする魔法使いです。

 ライネルちゃんは巨大な斧をぶんぶん振り回す戦士です。

 二人とも山田王国ではトップクラスの実力者です。

 三人のみで行動していた理由は勇気が強すぎる為。変に数を連れても足手まといになるのと。少数精鋭ということで非常に小回りが利き。どんな場所にでもすぐに駆け付けられるからです。

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