第117話・元クラスメイトとの邂逅

 というわけで俺は今女体化してダンジョンに潜ってます。

 いや。正確にいえばダンジョンの入り口でナンパ?のようなものをされているのだが。


 取り敢えず人気の高い水属性のダンジョンの入り口に今いるのだが、当たり前だが人気があるダンジョンだけあってすごく活気にあふれていた。

 闇カスダンジョンとは大きく違い、ダンジョンの入り口にはダンジョン連合の支部があり、そこで激しい売買が行われていてすごく楽しそうだった。

 他にも一緒にダンジョン潜りませんかというパーティー募集や酒場のような感じのお食事処もあり、なんかこう異世界の冒険者ギルドに少し似た感じがした。


 そんで。まあ俺みたいな美少女がそんな場所に行ったらどうなるかなんてものは火を見るより明らかでナンパだ。


 いや正確に言えば、一緒にダンジョン潜りませんかとパーティー組みませんかと誘われる。

 しかも誘ってくるのはオッサンばかり。これは何だろうね。妹が一人でダンジョンに潜るなんて言い出す気持ちはわかるわ。凄く分かるわ。しかも何が立ち悪いって、闇系統魔法である欲望魔法・欲望感知を使って、ナンパ?をしてくるオッサンの俺に対して抱いている欲望を感知してみたら、まあ中々にエグかった。


 まず大きく分けると3つのパターンのようなものに分かれ、一つ目はただ女の子にカッコいいところを見せたいというあわよくばモテたいという小心者なオッサンと、若い子を騙して犯そうとゲスイことを考えるヤバいおっさんと、ただ純粋に若い女の子がダンジョンに潜ることを心配して助けてあげようと考える優しいおっさんの3パターンだ。


 体感的に一つ目が一番多かった。

 というか若い人はほとんどいなかった。まあ、当たり前かもしれんけど。だって今日平日やん。妹は今日設立記念日とかで学校が休みだったらしいけど。普通の良い子ちゃんたちは学校に行く日やん。


 まあ、もちろん中には俺みたいな15歳とかでダンジョンに潜り成功する人もいるけど。そんなのは極々稀だ。そう考えると俺って超凄いな。自画自賛。

 さてと。しっかし流石にオッサンに囲まれながらダンジョン探索は嫌だな。というかキツイな。何だろう止めようかな。


 せっかく設定考えて近くのダンジョン連合で女物の防具に武器揃えたけど、200万円かかったけど。今の超絶金持ってる俺にしてみれば何も痛くもかゆくもない金額だし。


 うん。帰ろ。


 俺はそう結論を出したら死霊転移を使って家に帰ろうとした時だった。


「そこの君。可愛いね。よかったら俺らと一緒にダンジョン潜らない?」

 やけに若い男の声が聞こえた。


 なので気になって振り向くと、そこには元クラスメート達がいた。

 確か名前は本井と村井と東井の井が付く仲良し3人組だったな。何だかんだで中学校の時はダンジョンの話で盛り上がったな。懐かしい。

 よし帰ろうと思ってたけど昔のよしみだ一緒に潜ってあげますか。


「丁度私も一緒に潜る人を探してた」

 取り敢えずダンジョンの外では口数の少ないおとなしい少女という設定でいくと決めていたのでそう答えてみる。


「そうか。それは良かった。じゃあ潜るか。何こう見えて俺たち強いから安心して」

「そうそう。絶対に君は怪我させない様に守ってあげるよ」

「だから俺たちを信じてついて来てくれ」

 何だろう。凄いキザだな。まあこんな美少女を前にしたら仕方がない気もするが、それでも元クラスメートにこんなセリフを吐かれるとは。何ともまあ人生何が起こる変わらないものですな。


「はい。お願いします」

 俺は少し俯き気味で男の保護欲をくすぐるようにそう言った。


 ――――――――――――――――――


 というわけで4人でダンジョンに潜り始めたのだが。まあ根本的に魔物がいないね。因みに一応潜る前に簡単な自己紹介はした。といっても名前と得意な技位だけど。

 ほんで話を戻そう。魔物がいないという問題についてだ。


 そりゃ当たり前かもしれんが人気のダンジョンだけあって。魔物が湧いた瞬間に皆倒すからな。それに今潜ってるのは、まあ本業でダンジョンを潜ってるベテランのオッサンばかりだしね。

 多分いつも潜っているから大体どの場所に魔物が湧くのかも知ってるし。どうすれば一撃で効率よく倒せるかも知っている。

 うん。そんな状態の中に俺らみたいな15歳の素人が行って魔物を狩れるわけがないか。


「どうする。魔物がいないぞ。このままでは彼女にカッコいい所を見せられない」

 三人組が小声でコソコソと話し始める。しかし。悲しきかな神である俺の聴力の前ではコソコソ話すという行為はマジで無意味だ。丸聞こえだ。


「そうだな。どうするもっと奥に潜るか」

「でも危険じゃないか?」

「いや。大丈夫だろ。それに最悪何か合っても近くにいる冒険者が助けてくれるだろ」

「確かにそうだな」「というか俺ら強いし、まあ大丈夫やろ」

「うん。じゃあ奥に進むという方針で」「分かったそれでいこう」「そうだな。それでいこう」


 盛大にフラグを立てる仲良し三人組。

 うん、絶対これ危ない目に合うやつやん。

 まあ、俺がいるし大丈夫やろうけど。それでも危ないな。三人だけならどうぞご自由にだが。俺みたいな女の子を巻き込んじゃダメでしょう。これは少し痛い目を見せて上げるか。

 まあでも、取り敢えずは一旦様子見して、何か何も問題なく終わりそうだったら俺が眷族使って適当に脅して、何か問題が起これば俺が解決してから叱ってあげるか。


「というわけでイトちゃんついて来てください、魔物と戦う為に奥に進みますよ」

 というわけでってお前ら。どういうわけだよ。コソコソ話してたろ、まあ良いけど。

 どうしようか。一応ここで忠告入れて上げるか。


「あのう。奥に進んで大丈夫ですか」

 少し怖がってる感じでそう言ってあげた。もちろん何一つ怖くはないけど。まあ演技だ演技。俺って結構演技の才能あるかもな。


「大丈夫ですよ。俺達強いですし。それにこのままじゃあ碌に魔物と戦えずに終わりますからね」

 そう言って楽観的な言葉を言い放ち奥へと進みだす。

 さてと。どうなるかな。まあ正直言えば俺は称号でトラブルクラッシャーってのあるし。問題起こりそうだな。


 そんな訳であからさまなフラグを立ててから前へと進んでいく。

 でまあ、案の定というべきか、当たり前というべきか問題が起こりました。

 最初は結構スムーズに進めていけたし。人の数も少なくはなったが。まあそこそこいたけど。そんでもって魔物も良い感じで現れてくれて適度に苦戦しつつも倒していき。ドロップ品の魔石を獲得していった。

 その都度自慢してくるのは少々うざかったが。凄いドロップ品に魔石を献上しようとしてくるから。これが俗に言う姫プレイなのかなって思いつつ割と楽しく進んでいった。


 因みにボス部屋の方も結構順調にクリアできた。


 話を聞けば三人だけで3階層のボス部屋までを知り合いを含めた8人パーティーで5階層のボス部屋まで攻略したことあるらしい。

 そんで今現在調子にのあった3人は4階層のボス部屋を俺も少しは援護したがほぼ3人だけでクリアし調子に乗りまくり。5階層のボス部屋に突っ込んだ。


 ほんで、まあここで大変珍しいことが起きました。

 ようは、レア魔物が現れたのだ。

 レア魔物には俺がまだ一人闇カスダンジョンをせっせとクリアしていた時にあった奴と似たような感じだ。青色の角が生えていて肌は赤色で目が三つある。


 いや。そこまで似てないな。うん、しっかし懐かしいな。あの時は凄い激戦を繰り広げたわ。俺としてもマジで死ぬかと思った。

 そんでも何とか勝って二刀流極という超素晴らしいスキルを獲得したんだっけな。うん。懐かしいわ。


 でもあれやな。今パッと見た感じの強さはあの時のレア魔物とほとんど変わらないな。何だろう?レア魔物は全部強さ統一されているのかな?


 知らんけど。

 あ、戦闘が始まった。


 といっても速攻で殺されるだろうな。

 だってアイツら弱いもん。

 多分アイツらの持ってるスキルは水魔法と身体強化と風魔法かな?

 後はまあ、もしかしたら他にも補助系のスキルあるかもしれんが。まあ大きく考えればこの3つだろうって、いや待てよ。別に鑑定すればええやん。すぐ俺は鑑定という超絶便利な存在を忘れるな。


 鑑定


 ステータス

 名前・元井 連夜 年齢・15歳 種族・人間

 スキル

 身体強化1 魔力強化1 水魔法1 風魔法1 剣術1


 ステータス

 名前・村井 浩二 年齢・15歳 種族・人間

 スキル

 身体強化1 水魔法1 風魔法1 身体制御1 弓術1


 ステータス

 名前・東井 勝也 年齢・16歳 種族・人間

 スキル

 身体強化1 水魔法1 風魔法1 魔法威力上昇1 逃げ足1 下半身強化1


 うん。弱いな。

 いや本当に弱いな。可哀想なレベルで弱いは。でもこれがある意味普通の強さなのかもな。

 俺みたいに使えきれない程のスキルの書を獲得できるわけでもなければ。何千・何万という魔物共を殺して力を上げれるわけでもない。この強さが普通の冒険者だな。

 俺が完璧に異常なだけやな。


 さてと。そんなことを考えているうちに殺されそうですね。

 まあ。当たり前やな。さてとそろそろ助けてあげますか。一旦見殺しにしてから蘇生させるという案も浮かんだが流石にそれは鬼畜だと思うんでな。


「精神魔法・精神支配」

 俺は適当に魔法をかけてレア魔物を支配する。

 昔の俺なら絶対に不可能だけど今の神である俺ならこの程度の魔物を支配することなど容易だ。超簡単お手軽に出来る。


「おい。止まれ」

 俺は支配したレア魔物にそう命令を出す。


「はい」

 支配はしっかりと効いているので簡単に止まる。

 素晴らしい。


「今のは一体?」

 驚く三人、まあ当たり前か。

 さてと、じゃあ今から軽く説教をしてやるか。まあでも正味今回レア魔物が出たのは俺が原因っぽいけどな。それでもあんな風に無謀にダンジョンの奥に潜るのはよろしくないのでな。


「なあ。クソザコ共。お前らは死にたいのか」

 俺が急にそんな口の悪いことを言うので更に三人が驚く。


「え?イトちゃん、どうして急にそんなことを言うの」

 うわ。元井が急に舐めたことを言いやがった。


「急にって、お前。この場にいた女の子が俺みたいに強くなかったら全員死んでるんだぞ、分かってんのか?あ?」


「え、あ、それはその」

 俺の言葉に元井が詰まる。


「でも。助かったからいいじゃないか」

 東井が馬鹿なことを言い放つ。うんコイツ反省してないな。


「あのさあ。私がもしも悪人で今からあんたらを拷問するとか言い出したらどうするつもり?ここはボス部屋で助けは絶望的。強さ的にもお前らクソザコ共がどうあがいても私には絶対に勝てない。分かる?」


 ・・・・・・・・・・


 少し沈黙が走る。


「でも。イトちゃん優しいし、そんなことしないよね」

 村井がそう言って沈黙を破る。まあ確かにそんなことをするつもりは毛頭ないが。せっかくだしもう少し脅すか。


「拷問はしないよ。でも実験はしたいな。このレア魔物とクソザコ共が何処まで戦えるかっている実験をね。というわけで。レア魔物やれ」

 俺の命令に忠実に従いレア魔物が動き出す。


「ちょっと待ってくれ、いや、待ってください俺達が悪かったです。申し訳ございません」

 元井が謝る。それを見て他の二人も謝って来る。

 うん。反省してるようだし。許してやるか。まあ仮にも元クラスメートでそこそこ仲良くやってたしな。


「止めろ。さてと。まあもちろん私はお前らを殺すつもりはない。だがな、お前らが勝手に奥に潜って死ぬのは勝手だが。誰かを巻き込むような真似は止めろ。私が今回は運よく強かっただけだ。普通ならば全員魔物に食われて死んでいたという事実を決して忘れるな。じゃあ私はこれで」

 そう言って俺は洗脳したレア魔物の共に無詠唱で死霊転移を使い闇カスダンジョンに転移した。


――――――――――――――――――


 補足説明

 レア魔物を倒さずにダンジョンから連れ出すという変な事をしたためドロップ品等は一切ありません。ただ扉は開いています。

 一応ドロップ品出そうかとも考えたのですが、絶対に三人が揉めそうなのでやめました。

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