第110話・ようやく神と信じて貰えた

 今俺の目の前にアメリアちゃんの両親がいる。

 面白いことに両親もどことなく俺の両親に似ていた。


「アメリアから話は聞いた。お前がアメリアにスキルの書を渡した犯人らしいな」

 アメリアのお父さんが俺に怒ってような顔でそうすごんでくる。これは駄目だった系かな?


「はい。そうです」

 俺はまあ誤魔化しても無駄なので正直に白状する。


「そうか。そうか。うん。ありがとう。アメリアはずっと世界を救った勇者様に憧れていて勇者様と共に戦いたい。生きたいといつも言っていた。だからその願いの手助けをしてくれて本当にありがとう」

 そう言って俺に頭を下げてきた。

 いやはやまさかのお礼ですか。この父親は多分心から娘のしたいことを尊重するいい父親なんだろうな。なんか俺の父親を思い出したよ。うん久しぶりに会いたくなってきた。


「頭を上げてください。私は介抱してもらったことに対する当然のお礼をしたまでです」

 なんか父親に似ているせいもあってかつい敬語を使ってしまう。


「そうですか。それでお体のほうは大丈夫ですか?」

 そう心配されて、そういえば俺家の前でいきなりぶっ倒れていたことを思い出す。確かにそれは心配するわな。


「ええ。おかげさまで大丈夫です。元気いっぱいです」

 俺はベットから立ち上がり力拳を付けるよう感じでそう元気よく言った。


「そうかそうか。それは良かった。そういえば君ご家族、もしくは保護者はいるのかい?」

 ああ、確かにごもっともな質問だな。まあ一応家族は要るけど異世界だしな。まあ保護者というか俺の眷属達がいるしそいつらに向かいに来てもらうか。

 それとせっかくだし、眷族に貴族の従者っぽい格好させて謝礼を渡すか。まあやっぱり感謝の気持ちとして何か上げたいしね。


「はい。います。多分後10分ほどで迎えが来ると思います」

 俺はそう言うと同時に念話を使って10分後に眷属に貴族の従者っぽい恰好をして俺を迎えに来いと命令を下す。

 そんでもってついでに謝礼金も用意して渡せとも命令をする。

 これで大丈夫だろう。


「そうか、そうか、それは良かった。というかどうして10分後に迎えが来るなんて分かるのかね?」

 絶対に怪しまれた。まあ確かに怪しいわな。ここは適当にスキルですって言っておくか。まあ嘘ではないしね。


「ああ。それは私のスキルによるものです」

「そうか。スキルかそれなら納得だ。じゃあ10分間だけだが。まあくつろいでおくれ」

 そう言ってアメリアのお父さんは部屋から出て言った。うん。スキルですで納得してもらえるんやな。凄いなこの言葉、万能過ぎるやろ。


「私からも礼を言わせてもらうわ。ありがとう。娘に勇者様に近づける力と希望を与えて。母親である私としても勇者様という叶わぬ恋をし、いつも勇者様、勇者様って言ってる娘が少し不便だったの。それが、今こうしてその憧れの勇者様に近づける力を手に入れ。叶わぬ恋が叶えられる恋に変わったこと本当に感謝してるわ」

 アメリアのお母さんが俺にそう言って頭を下げてくる。

 この人も娘思いのいい人だな。

 しっかし叶わぬ恋か、まあ、ぶっちゃけると、ユウキは死ぬほどハーレム体質だから、多分第7ヒロインとかそんな立ち位置で収まりそうだけど大丈夫か?いやまあ。本人が納得しているし大丈夫か。うんそれに英雄色好むというしね。皆そな辺は分かっているやろ。分かってるよな?


 ・・・・・・・・・・


 俺知らね。そこまでは面倒見切れないっす。後はアメリア次第っすね。

 それにもしかしたら、メインヒロインの座を奪えるかもしれないしね。うん。頑張れアメリア。


「そうですか。私としてもアメリアさんの恋が叶うことを祈っております」

「そうね。私も母親として光神様に祈らして貰うわ」

 うん、光神様俺デストロイしちゃってるよ。うん。まあいっか。一応俺も適当にいるかも分からない恋愛の神様にでも祈るか。


「もう。お母さんやめてよ。そんな恥ずかしい」

 お母さんって俺は言っていいのかよ。

 まあ、でも確かに年頃の少女が母親に恋愛が成功してくださいって祈られるのは恥ずかしいわな。うんうん。


「あら。ごめんね。まあとにかく。私はアメリアの幸せを祈ってるわ。頑張りなさいよ、じゃあ私はお夕飯の支度をしなきゃならないから出るね」

 そう言ってアメリアの母親は部屋から出た。

 そうして俺とアメリアの二人っきりになる。


「あのう。お名前聞いてもいいですか?」

 突然アメリアにそう言われて俺がまだこの少女に自分の名前を告げていないことに気が付く。


「ああ。確かに俺名前を言ってなかったね。俺の名前はタイトだ。ウエノ・タイトだ。改めてよろしくね」

 俺はそう言って手を差し出す。これはまあ握手をしようって感じの癖だ。それを見てアメリアは一瞬戸惑いつつもユウキのファンだけあって、異世界の知識が豊富なのか。元々広まっていたのかは知らないが、すぐに理解して俺の手を握ってくれる。


「はい。よろしくお願いします。といっても後数分でタイトさんは家に帰っちゃいますけどね」

「ああ、確かにそうだな。まあそれでもなんだ。これは何かの縁だ。もしもアメリアが困ったことがあった時俺に頼ってくれ。俺の出来る範囲であれば何でもしてやる。俺はこれでも神だからな」

「もうまた。でも。はい。ありがとうございます。タイトさんが神だってこと少しだけ信じてみます」

 アメリアはそう言って可愛らしく笑った。

 その笑顔は凄く自然で柔らかい。100万円出してもいいと思えるような笑顔だった。まあ俺の金銭感覚が狂てるだけかもしれないけど。

 というか少しだけ信じるって、そこは信じるって言ってほしかったな。まあいっか。ステータスを見れば死霊神の恩人ってあるから気がつくだろう。


 そっから暫く俺はユウキを落とすために効果的な気がする方法をアメリアに教えた。

 まあ、方法といっても。出来る限りユウキのそばにいること、ユウキに近づく女の子に危害を加えたら好感度が下がる可能性があるため、そういう人たちともうまく立ち回ること。

 ユウキのピンチを助けてあげたり、逆に助けてもらったりして好感度を上げることや、子供好きのことをアピールしたり、悪を許さない姿勢を見せてユウキの性格に合わせること等々、まあ余計なお世話かもしれないし、ユウキのガチファンである彼女ならば知っている可能性も高いが、凄く熱心に聞いてくれた。

 そんなこんなで気が付いたら俺の眷属達がお迎えに来てくれる時間が迫ってきた。


「さてと。じゃあ。そろそろ10分経ってお迎えが来そうだし。俺はもう行くね」

「はい。分かりました。ではまたいつか」

「ああ。またいつか」

 そう言って俺は部屋を出て思う、あれ?出口どこだろ?


「あ、ごめんなさい、玄関教えるの忘れていました」

 そう言って慌てて俺の方に駆けて来るアメリア。うん。まあ何だろう良い感じで挨拶をしたのにそれが無意味になった気分だ。知らんけど。


「ああ。そうだね。じゃあ玄関教えて貰える」

「はい、えっとこっちです」

 少し気まずくなりつつも数十秒ほどで玄関に着く。

 そのタイミングを見計らったかのようにドアにノックをする音が鳴った。


「すみません。主様をお迎えに来ました」

 主様って、まあいいけど。貴族っぽいしさ。つかこの声闇助やな。闇助が来たか、まあイケメンやし見た目人間やし、ええか。


「あ、良かったですね。丁度いいタイミングでお迎えの人が来ましたね」

 アメリアはそう言ってドアを開けた。

 その瞬間凄いのが目に入った。


 金銀ギラギラで上空には竜が舞い、大きく豪華な馬車が何十台と連ね、屈強そうな騎士がそれらを護衛している。

 そうして、俺の顔を見た瞬間に、竜が地に降り、騎士が跪き、闇助が跪く。


 うん。俺は神ですか?


 いや神だけど。想像の100倍レベルで豪華何だが。よく10分で出来たな、いやまあでもデスキングの力とか俺の化け物眷族の力を考えたら出来そうではあるが、それでもようやったな。


「お前ら、もう少し穏便には出来なかったのか。アメリア含め村の人たちが腰を抜かして驚きまくって声も出なくなってるじゃないか」

「いや。声は出せますよ。タイトさんって、違うあのう。もしかしていやもしかしなくても、本当にタイトさんって神なんですか?」

 まあ。この豪華なお出迎えを見たらそう思うか。


「ああ。そうだよ。何回も言ってるじゃないか。ほんじゃあまあ、俺は帰るわ、色々とありがとうねアメリア、ユウキについて話してて楽しかったよ。じゃあ今度こそまたどこかで、さようなら」

 俺はそう言って戦闘の一際豪華な馬車に乗り込む。


「さてと、じゃあ闇助、適当に金貨渡しといて」

「もう既に渡してあります主様」

「流石、仕事が早いね。じゃあ次は適当に人のいない場所に向かってくれるかな。少し試したいことがあるから」

「は。分かりました。主様」


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 補足説明

 アメリアというキャラについて。

 このキャラはまだまだ出番があります。

 というか結構重要な役割を持たせる予定です。

 一応設定としましては、子供の頃に両親が読ませた勇者物語に憧れを抱き。勇者に対する思いが人一倍強い女の子でした。しかし。勇者・ユウキが召喚された上に、実際に勇者・ユウキに会い思いは爆発。

 更に追い打ちをかけるように、ご都合展開で村に魔物が襲ってきて、絶体絶命のピンチの中颯爽と現れて助けられ、完璧に惚れたという設定です。

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