第109話・死霊神の恩人

「知らない天井だ」

「目が覚めましたのね。びっくりしましたよ。いきなり家の目の前で倒れていたのですから」

 そう何処か妹に似ている少女に言われた。


 辺りを見回すと、俺は素朴なベットに寝かされていた。

 俺は何でこんな所にいるんだ、確か俺は悪神と戦って、それで最後に呪いを喰らった、呪い?そう呪いだ。思い出した。俺はあの悪神を倒したけど呪いで何処かに飛ばされたんだ。

 ということは、あれか?偶々飛ばされた場所がこの少女の家の前で助けて貰ったてことか。なるほどね。


「そうか。それはありがとう。助かった」

 俺は心からの感謝を述べる。


「それは良かったです。それよりも体に異常はありませんか」

 そう言われたので確認するが特に異常は感じられない、むしろ力が湧いてくるような感じだ。何でも出来そうな万能感を感じる。

 多分だが俺が神になったからだろうな。


「ああ。大丈夫だ。それよりも何か欲しい物はあるか?こんなことを言って信じて貰えるか怪しいが。俺は神だ。死んだ人を蘇らせることも一生遊んで暮らせるほどの金銀財宝も不老不死だって、多分なんでも出来る。俺を善意で助けてくれたお礼に俺の出来る範囲ならば何でもしてあげよう」

 俺は少し傲慢な感じはしつつもそう言った。因みに傲慢に言ったのは神っぽさを演出しようとしたからだ。

 ただまあこの何でもしてあげたいという思いは言葉は事実だ。

 それとこれは少し俺の私情が挟んでいるのだが、この少女は俺の妹に似ていた。ついでに倒れてた俺を善意で助けてくれた心優しい人物だ。

 だから何か助けてあげたいという気持ちが湧いて来たのだ。


「ハハハハハ、貴方凄く愉快な人なんですね。急に自分が神だなんて。大丈夫ですよ別に。私は今両親が居て村の皆が居て幸せに暮らしいてるこの毎日が好きですから。それに一応好きな人はいますけど。そういうのは自分で叶えないと意味はありませんか」

 少女は何の迷いもなくそう言いきった。

 俺はその少女が凄く輝いて見えた、死霊神となり人の理から外れた俺には到底出来ない考え方だったからだ。まあ理解は出来るが。

 後まあ流石に恋のキューピーットになるのは死霊神である俺でも難しいな。女心は年齢=彼女いない歴の俺には分からん。


「そうか。それは素晴らしいことだね。ごめんね何か変な事を言って」

「いや。いいですよ別に。それよりもお腹減ってませんか、一応おかゆを用意しましたけど要りますか?」

 少女は愛らしい笑みでそう言ってくれる。

 何だろう別にお腹は減っていないが何か断るのも失礼だと思うし頂くか。


「では、ありがたくいただこうか」

「分かりました。では今持ってきますね」

 少女はそう言って部屋を出た。


「主様大丈夫でしょうか」

 一人になったと途端にそう闇助から念話が来る。


「ああ。大丈夫だ。問題ない」

「そうですか。分かりました。一応今すぐにお迎えすることは出来ますが、どうしましょうか?」

 お迎えか。そんなことすると俺を善意で助けてくれたこの家の人たちに迷惑がかかるし辞めてもらうか。


「いや。大丈夫だ。自分の足で戻る」

「そうですか。では主様のお戻りをお待ちしております」

 そう言って闇助からの念話は切れた。

 そうしてから数十秒後に少女がおかゆをもって戻ってくれる。


「どうぞ。私が作ったので少し不味いかもしれませんが」

 そう言って少し不安そうな声を出して近くにあった小さな机に置いてくれる。


「いや。そんなの気にしなくてもいいよ。じゃあ、ありがたくいただくね。いただきますっと」

 俺はそう言って体を起こし、おかゆを食べ始める。そのおかゆはかなり味が薄い気がしたが非常に心温まるおかゆだった。


「あのう。いただきますって言葉?もしかして異世界人の方ですか?」

 俺がおかゆを食べていると少女がそんな言葉を俺に投げかけてきた。


 ん?いただきますって確かに異世界の言葉かもしれないが。何でこの少女が知っているんだ。俺今まで異世界人の言葉って断定されたこと一度もなかったぞ?

 この子、異世界人と接点でもあるのか?


「ああ。そうだけど。どこって一体そんな知識を手に入れたんだい?」

「えっと。実はつい最近勇者様であるユウキ様が聖剣を探しにこの村に訪れまして、その時にいただきますっていう異世界の儀式をしていたので」

 マジすか。ユウキいたんだな。

 つか勇者様であるユウキ様って流石に草やわ。何か笑えるわ。にしても儀式ではないんだがな、まあでも知らない人からしてみればそう映るか。

 しっかし聖剣を探してって、絶対これ聖剣エンドミリオンやろうな。俺が持ってる奴だろうな。確実に途方に終わるやん。それで急にオークションに出しますというふざけた事態が起こって、てんやわんやするだろうな。うん。可哀そうに。まあ俺は知らんけど。


「ああ。そうだったのですね。まあ一応異世界人でもありますよ。いやまあ今は神なので異世界神かもしれませんけど。まあ確実なのはその勇者・ユウキとは異世界で同じ学校に通うライバル?みたいな関係だということですかね」

 嘘は言ってないつもりだ。まあ何だこの少女が勇者の話題を出したときに目がキラキラしてたので、あまり変なことは言えなくてさ。うんしょうがない。しょうがない。


「そうだったのですね。それにしてもいつまで自分が神だと言うのですか。正直飽きてきましたよそのネタ。それよりも勇者様と同じ学校に通うライバルって本当ですか?」

 いや。神なのは本当なのだが。

 それにしても凄い目をキラキラにさせてユウキについて質問してきたな。これはまあユウキがカッコよく映る感じで教えてあげますか。助けてもらった恩もあるしね。


「ああ、本当だよ。じゃあ今から勇者・ユウキの逸話でも話そうか。そうだね、じゃあまずは勇者・ユウキが助けた少女の話から始めようか・・・・・・・」

 そうして、俺は前、死霊虫で監視させていた時にユウキが行った数々の偉業?というかラノベ主人公的行動を面白おかしく、少々脚色してユウキがカッコよく映る感じで話していく。途中作ってもらったおかゆを食べながら。

 少女はそんな話を目を輝かせ、体を乗り出して、それはまあ心底楽しそうに聞いてくれた。そんなわけで楽しそうに話を聞いてもらえると俺も楽しくなってきて。更にいろんな話をする。

 そうして様々なユウキの話をしていた時だった。少女からとある突っ込みが入った。


「どうして、勇者様と互角以上に戦えるのに家の前で倒れていたのですか?」

 まあ、当然の疑問だと思うわ。だって俺勇者と互角以上に戦える=メチャクチャ強い化け物になってるもん。そんな化け物が家の前で倒れてたら、そりゃ不自然極まりないよな。


「ああ、それがね、悪い神と戦ってて、何とか勝ちはしたんだけど神の呪いで無理やりこんな場所に飛ばされて気を失てしまったの」

「そうだったのですね?悪い神と戦ってって、え?本当に神と戦ったんですか?神って、あの光神様のような?」

 光神様ってヤバいって俺が倒したのその光神様なんだけど、いやまあ正確には悪神なんだけど。ここは適当に誤魔化すか。


「ああ。そうだよ。正確に言えば光神の位を乗っ取ろうと暗躍した恐ろしい神、悪神・へレストスだよ」

 まあ、乗っ取ろうとじゃなくて、乗っ取ってるんだが。


「そうなんですか。それを倒したんですか?もしかしてその場には勇者様もいましたか?」

 目をキラキラに輝かせながらそんなことを言ってくる。いやいなかったけど。何かいないって言いにくいな。何らなメンバーが俺と俺の眷属に魔王というTHA悪みたいな感じだしさ。うん。ここは優しい嘘をついてあげますか。


「ああ。もちろんいたよ。聖剣を探す途中に悪神・へレストスの企みに気が付き。偉大なる最強の竜に俺と勇者と死から蘇り改心した魔王と共に挑んだ。そして死闘に次ぐ死闘の末、ようやく全員の力を合わせて放った神殺しの刃が悪神の心臓に突き刺さり。勝利って感じさ」

 まあ、勇者・ユウキがいないという点を除けば全て本当だ。


「おお。その戦いを詳しく。詳しく。詳しく教えてください」

 今日一番の輝いた目でそう言われてしまった。そんなことを言われたら、もう、話すしかないな。ただまあいままでと違ってこれは嘘の作り話だからな、中々に言葉を選ばなければ。まあ、それでも一応ユウキがいなかったこと以外は全て本当のことなんだし、何とかなるだろ。

 そんなわけで俺はいい感じで言葉を選びつつ、話を始める。軸としては俺の働きを分割する感じで、それでいて光系統の技はユウキが担当し闇系統の技は俺が担当しみたいな感じの協力プレイを見せる的な感じで。


「凄く面白いですけど、もしかして嘘をついていませんか?」

 そうして暫く話していたら、いきなり少女にそう言われた。

 何だと、何故バレた。結構いい感じで喋れていたし。死霊神である俺は普通の人よりも何千倍。何万倍レベルで思考を加速できる力があるんで。違和感がないように頭の中で考えてから話を進めて言っていたのに、何故バレた。


「どうして、嘘だと分かったのですか?」

 俺は誤魔化そうかと思ったが。この少女の鋭い眼光を見てあきらめて正直に白状する。


「それはですね。勇者様が強すぎるからですよ。今までの話に勇者様がこの世界でなしてきた偉業。それを全て総合的に判断しても。勇者様が悪神相手にそのような活躍を見せれるとは到底考えられません。また勇者様は専用武器である聖剣も持っていないという装備が碌に揃っていません、それなのに悪神という神相手に聖剣でも神剣でもない普通の剣で切り結ぶとは到底考えられません。そして何より。勇者様はお側にいるクソ虫、ゴホンゴホン、女性を大切にしクソ虫も勇者様を大切に思っているのでそんな重要な戦いで置いてけぼりをさせるとは考えにくいです」

 なるほどね。凄く納得した。というかよくわかったな。この少女何者だよ。一応鑑定をしてみるか。


 鑑定


 ステータス

 名前・アメリア 年齢・15歳 種族・人間 レベル3


 スキル

 家事 聞き上手 記憶力上昇 


 称号

【勇者・ユウキのガチファン】【片思い中】【死霊神の恩人】


 なるほどね。納得したは。勇者・ユウキのガチファンか、なるほど。そりゃ分かるわな。というか凄いなこの少女。あと称号に死霊神の恩人とか言う絶対にヤバそうなものあるんだが。一応詳細に確認してみるか。


 称号【死霊神の恩人】

 死霊神に恩人認定された者に与えられる称号。

 死霊系統の魔物から無条件で信頼される。

 死霊属性の才能が大幅に上昇する。

 死霊神の手が空いていた場合のみだが何かあった時に助けてくれる。


 わお。やらかしてますね。何というか、かんというかやらかしてますね。

 絶対にヤバいだろ。効果がまずヤバいだろ。ほんでもって最後の俺が助けるってのもエグイだろ。いやまあ確かに手が空いていたら助けて上げてもいいとは思うけど。


「あのう。私の推理は当たってたでしょうか?」

「ああ。大当たりだよ。それよりも君はもしかしユウキに恋をしているのか?」

 俺のその言葉を聞いた瞬間そりゃもう見事なまでに顔が真っ赤になった、これは図星だな。いやはや最初の好きな人って言ってたのまさかのユウキでしたか。うん。なるほどね。


「いや。あ。まあ、うん。はい。でも、私には何の力もないし勇者様には釣り合えません」

 釣り合えないか。いや俺の恩人になったから多分努力すればトップクラスの死霊魔術士にはなれそうだけど。

 でもそうだな。俺の恩人だし適当にスキルの書を上げますか。そんで強くなって貰ってユウキに近づくチャンスを上げるか。まあこれくらいは許されるだろう。

 というわけで俺は何十ものスキルの書を闇空間から取り出す。


「ほい。これを使えば多分かなり強くなれるよ。それこそユウキと釣り合いが取れるくらいには。それと君には死霊魔術の適性が超あるから、多分簡単に強くなれるよ。後まあ何だかんだでユウキは女の子には優しいから君が死霊魔術使いで仲間になりたいって言えばオッケーを出すと思うよ。後はまあ君の頑張り次第さ」

 俺はそう言って食べ終わった空のお粥の置いてある小さな机にスキルの書を置く。


「このスキルの書使っていいのですか?」

「ああ。全然大丈夫だよ。この程度のスキルの書なら何万って持ってるから。ささ遠慮なく使ってくれ」

 俺のその言葉に少し不安がリながらも。スキルの書という誘惑、そして想い人であるユウキに近づけるという想いに負けてスキルの書を使用し始めた。


「凄いですね。こんなに力が湧いてくるんですね。これなら勇者様に近づけそうです。ありがとうございます。今すぐ両親に勇者様の所に向かっていいか聞いてきます。では」

 そう言って少女もといアメリアはかけていった。


 うん。落ち着癒え考えたら両親的には自分の娘が勇者の追っかけ的な感じで危険な旅に出るの嫌がりそうな。


 ・・・・・・・・・・・・・


 まいっか。俺知らね?本人の意思が一番大切やろ。それにもしかした凄いく理解のある親で喜んでくれるかもしれないしね。うん。


 ―――――――――――


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