第96話・反乱

「というわけでどうしますか、マリアお嬢様、私の力を使えば今ここにいる第二王子含む反乱軍を一掃した後、王様と第一王子を蘇らせることは可能ですが」


「そうね、じゃあ、クズとビッチは私の前に縛り上げて頂戴。他は皆殺しでいいわ。王様と第一王子は蘇らせて貰えるかしら」

 お嬢様は悩むことなく俺にそう告げた。

 その姿は堂々たるもので、少なくとも今目の前で自分の住んでいた国が燃えているのを目の当たりにしている人には到底思えなかった。

 これは普通に王女として人の上に立つ才能がありそうだな。お嬢様をこの国の王女にするのも楽しそうだな。まあ。お嬢様が乗り気じゃなかったら無理だけどね。


「分かりました。マリアお嬢様、ではその様に致しましょう。千鬼死霊大行進発動・命令だ。今この場にいる。全ての反乱軍を殺せ。ただし、第二王子とその女は生かして縛り上げて連れてこい」


「「「分かりました。主様」」」

 俺の眼下にいた千の鬼と万の死霊は一斉に跪き。俺の命令をこなす為に散開した。


「さて、じゃあ次だな。オイ、デスキングの仲介人って奴、空間魔法使えたよな」

 俺が念話を使ってそう問いかけたらデスキングの仲介人が俺の前に現れて跪く。


「はい。使えます。死霊王様」


「そりゃよかった、じゃあ、あそこにいる第一王子と王様の死体を今すぐ取ってこい」


「はい。分かりました。死霊王様今すぐに」


 30秒後


 仲介人が俺の目の前に第一王子と王様の死体を持ってきた。


「ほい、良くやった下がっていいぞ」


「はい。分かりました。死霊王様」


「というわけで、死霊魔法・死体接合からの死者蘇生」

 俺が放った魔法は簡単に成功して第一王子と王様を蘇らせた。

 あれだな、死体自体は首と胴体がおさらばしてる上に、結構ボロボロで時間も立っている。前の俺だったら成功するか微妙なラインだったけれども、死霊王になってレベルも上がったおかげで結構簡単に成功できたな。うん。素晴らしい。

 多分だけど結構ぐちゃぐちゃな死体でも今の俺の力ならば蘇生は可能そうだな。


「というわけで、マリアお嬢様。国王と第一王子を蘇らせましたよ」


「よくやったわタイト、さて、国王様にアレン様ご気分はいかがでしょうか、何か体に異変は感じますでしょうか?」

 あのお嬢様が国王と第一王子を心配しているだと。

 てっきり俺は「私が助けたのよ。これからは私がこの国を支配するわ」とかいい放つかと思ってた。

 少し驚き?いやでも、そうでもないか、普通に考えてこの国の王にその継承権第一位である第一王子だしね。

 まあ、一応公爵令嬢なわけだしね。そりゃ敬意を払うのは当たり前か。


「ああ、特に異常はない。いやそれよりも儂は何故生きておるのじゃ、確か首を切断されたはずじゃ・・・・」

 不安そうに呟く王様。

 まあ、そりゃそうだな。死んだと思っていたのにいきなり蘇ったわけだからな。不安になるわな。


「なんて禍々しい魔力だ。ハハハハハハハハ、お終いだお終いだお終いだ、こんな化け物がいるのならばこの国は終わりだ。ハハハハハハハハ、う、オロオロオロオロオロオロ」

 第一王子が俺の顔を見て盛大にゲロを巻き散らかした。


 そういえば心眼のマリッサ?やっけ、あの貴族令嬢も俺の顔を見てゲロを吐いていたな。

 そうなるとこの第一王子も人の力を見るスキルでも持ってる口か。まあ、そう考えると納得だな。一応俺は死霊王だしな。


「ちょっと、タイト。アレン様に何をしたの」

 お嬢様に怒鳴られた。いや理不尽なと言いたいけど、俺が原因だからな。普通に申し訳ないな。


「すみません、マリアお嬢様、どうやら私の力に当てられてしまったようです。まあ少ししたら慣れると思います」


「そうなのね。じゃあいいわ」

 いいのかい。まあこっちとしてもそれで助かるのだけど。軽いなオイ。


「ちょっと待ってくれ。マリアンヌ。何故あの化け物がマリアンヌに付き従ってるんだ」

 口元に少々ゲロを残しながら心底驚いたように叫ぶ第一王子。

 恐ろしいくらいにかっこ悪いな。というか口元のゲロをふけよ。


「それはですね。タイトが私の騎士だからですわよ」

 お嬢様がない胸を張ってそう答えた。漫画だったらバンって効果音がなりそうだな。あらやだカッコい。


「は?待ってくれ、どういうことだ。マリアンヌがその化け物を騎士にしたのか。いや違う。その化け物がマリアンヌを主として崇め護衛をしているのか?どうしてだ?マリアンヌに一目惚れでもしたか。いや、それとも魂を対価に契約でもしたのか?」

 第一王子、結構酷いことを言い出すな。つか。魂を対価に契約って俺は悪魔かよ。いや死霊王だけど。そんな事はしたことないぞ。少し面白そうと思ったけど。流石にせんよ。


「お言葉ですがアレン様、私の騎士のことをそう何度も化け物と罵らないでいただきたい、タイトはただ。楽しそうだからと私に従っているだけです」

 お嬢様が俺のために怒ってくれた。

 ちょっと嬉しい。ただ、別に俺としては化け物と罵られようが何一つ間違っていない事実なので、否定はできないというか、別にどうてもいいって感じなのだがな。

 後、こうやって。お嬢様の口から楽しそうだから付き従ってるとか聞くと。俺って中々狂ってるなと思うわ。いや。まあ良いんだけど。


「そうか、それはすまなかった」

 第一王子が俺に頭を下げた。

 マジかよ普通に謝るのか。自分の非を認めて頭を下げる意外とできない人多いしな。普通に好感持てますな。王子って言ったらクズばかりなイメージがあったわ。


「いいよ。別に気にしていないし」


「寛大な心感謝する」


「いやいや。そんなかしこまらなくてもいいって。俺はマリアお嬢様の騎士なんだから」


「そうか。マリアお嬢様の騎士か。マリアンヌが愛称で呼ばせているとはな。信頼されているのだな。勝手なお願いだとは思うがマリアンヌをよろしく頼む」

 第一王子がそういってまた俺に頭を下げた。つか。愛称って、そうか。俺はお嬢様に好かれいてるのか、なるほどねそれは中々嬉しいな。


「安心してください。第一王子、何があっても絶対に私が守って見せますよ。まあ、死んでも蘇生させるだけですがね」


「蘇生。そうだ。蘇生だ。何故私が今こうして生きているんだ。私は死んだはずだぞ」

 いきなり乱心し始める第一王子。情緒不安定かよ。大丈夫か?


「いや何。対したことはないですよ。私が死んでいた第一王子を蘇生させただけです。ついでに国王様も蘇生させました。いやあ。私にかかればある程度制限はありますけど。死んだ人を蘇らすなんて簡単なことですからね」


「そうか、私は一度死んで蘇っているのか。・・・・・・タイト殿、私を蘇らせてくれたこと感謝する。今はまだ愚かな弟に国を奪われたが、どうにか取り返して。必ず褒賞を渡そう」

「ああ、元ではあるが国王である私からも国を取り戻した暁には必ず褒賞を渡すと誓おう」

 第一王子がそう言うと結構混乱していてだんまりを決め込んでいた国王も俺にそういってきた。


「いや。別に国を取り戻す必要はないよ。だってもう取り返したから。おい。お前らもう終わってるだろ。早く来い」

 俺がそういって手を叩くと。ダダダダダダって音とともに眷属達が俺の元に集まった。


「「「遅れて申し訳ございませんでした。主様」」」


「いや。別にいいぞ。それに。本当はもっと早く終わっていたけど俺が会話してるから空気を読んで出てこなかっただけだろう」

 まあ、来たときは結構第二王子派閥のクズどももとい反乱軍が暴れてうるさかったのに途中から一切それが聞こえなくなったからな。その時点で俺の眷属が第二王子派閥をほとんど殺したのはわかったよ。


「「「寛大なお心感謝します。主様」」」


「まあ、いい。それよりも今回の主犯の第二王子とビッチを出せ」


「どうぞ。こちらなります。主様」

 そう言って一人の死霊が裸で紐のようなものにぐるぐる巻きにされた。若い男と若い女を俺の目の前に出した。なるほどね。この二人が第二王子とその女か。


「マリアお嬢様。この二人であっていますか」


「ええ、あっているわ。にしても流石タイトね。こんな短期間で捕まえてくるなんて」


「いや。まあ、私の手にかかればこの程度は楽勝ですよ」


「そう。それは良かったわ。じゃあ。次の命令よ。タイト今からこのぼろぼろになった王都を直しなさい。そして。今回の反乱で死んだ無実の人々を蘇らせなさい」

 相変わらず結構無茶な事を言うな。まあ、俺にかかれば簡単に出来るけどな。


「分かりました。マリアお嬢様。ではその通りに。というわけで、お前ら新たな命令だ。この王都を立て直せ、そして。悪魔法を使って無実の人を探し出して俺の元に持ってこい」


「「「はい。分かりました。主様」」」


 ――――――――――――――――――

 1時間後

 ――――――――――――――――――

 というわけで。

 なんということでしょう。

 あれだけボロボロで血に塗れて辺りに肉片が散らばっていた王都がすっかり元の綺麗な王都に元通り。

 さらに、なんということでしょう。反乱によってかなりの死傷者が出ていたはずなのに。そのほとんどが生き返りました。流石にぐちゃぐちゃの死体は無理だった。


 主犯格も全員確保し。裏で援助していたデスキング(俺が眷属にした幹部との情報伝達が遅れて第二王子の命令で計画よりも早く反乱を実行した部隊)も全員殺して順応な眷族に早変わりしました。

 王様も第一王子も俺が生き返らせたんで。ピンピンしています。

 うん、完璧だな。王都が燃え盛っていた時は少々焦ったがふたを開けてみれば何も対したことはなかったな。

 さてと、じゃあ王様と第一王子に褒賞を貰い受けにいきますか。俗に言う謁見だ。謁見。楽しみだな?ラノベあるあるで一度はやってみたいと思ってたしな。


 ―――――――――――――――

 補足説明

 第二王子の反乱でこんな簡単に国が落とされるとかある?

 一応。設定としてデスキングによって結構な数の貴族が捕らえられていました。その貴族たちはほとんどが第一王子派閥や王様に心からの忠誠を捧げている人ばかりであったため。その人たちがいなくなり結構国は混乱していました。

 その上で王城の地図を第二王子が盗み、もとい王族権限で拝借して。デスキングに渡せば戦闘能力の高い優秀なデスキング先鋭部隊の力によって。簡単に主要貴族含め王様と第一王子を殺すもしくは捕まえることが可能です。

 そうなったら、後は残っている忠誠心の高い騎士や貴族を殺して反乱の目を摘むって感じで国は支配完了でした。

 ただ、その最中に主人公が現れて全てをハチャメチャにして、せっかく殺した貴族も蘇らせって、まあ。主人公がいなければ第二王子はあの国の王になれたという事です。計画自体は結構良く出来ていました。

 以上。

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