第95話・楽しいのが一番重要だよ

 お嬢様にキレられた。ほんで泣かれた。うん。でもあれだな。泣き顔のお嬢様も中々可愛いな。

 しかしどう答えようか。適当に誤魔化すか。いや止そう、俺の思ってることをそのまま話してみよう。


「お嬢様私はですね。楽しいことがしたいのですよ。今私がお嬢様にこうして付き従っているのはお嬢様と一緒にいたら楽しそうだからですよ。それだけです。これでも私はかなり力を持ってます。死者を自由に蘇らせ。魔法一つで何万という人を殺せる力を持ち。何万という死霊を従えてます。あの邪竜すらも私の手にかかれば簡単に殺せます。それだけ私は強いです。基本的に何でもできます。それと私を縛るものも特にありませんし、私がやりたいと思ったことをやりたいようにしているのです。そんなわけでまあ、楽しいことが好きな私は今こうしてお嬢様に楽しく付き従っています。少なくとも私が飽きるまではお嬢様に付き従い喜々としてお嬢様の命令をこなしてみせましょう」

 こんな感じかな。まあ、これが俺の本心だしね。因みに変に敬語を使っているのは俺の趣味っす。せっかくずっと騎士プレイでやってきてるんだしこのまま続けようと思ったから。以上。


「そうなのね。じゃあ私はとてつもない幸運の持ち主ね。本当だったら盗賊に捕まった時点で人生詰みだったのを気まぐれで貴方に助けてもらい。その後私の為に色々としてくれたのだから。・・・・・・・あの。ごめんなさい。私は結構貴方に無茶を言っていたわ。あの時は盗賊に捕まって少し情緒が不安定だったの。今こうして。ご飯を食べてゆっくり睡眠をとって、落ち着いて考えたら私がいかに愚かだったか分かるわ。本当にごめんなさい」

 謝られちゃったよ。別に俺としては気にしてないのだが。むしと我儘で可愛いという感情の方が強かったのだが。


 うん。困ったな。どう反応をしてあげればいいかな。俺としてはあの我儘なお嬢様、いや、そっちよりもツンデレお嬢様の方が好きやな。

 ツンデレってのは可愛いからな。まあ今の今まで二次元でしか見たことはないけど。少なくとも順応なお嬢様は嫌だな。

 そういうのがしたければ眷属にすればいいだけだしな。よし、決めた。お嬢様をツンデレに育て上げよう。題名はそうだな、ツンデレ悪役令嬢の育て方とか?いや、流石に怒られるか。止めておこう。というかツンデレって育てられるもんか?うん。無理だな。いいや面倒だ。無難に適当に対応をしよ。


「別に謝る必要はありません。私にとってはお嬢様の命令は何ら苦ではありませんから」


「そうなの」

 少し泣き止んでるけど、泣いた後で顔が赤くなったお嬢様が俺に上目遣いでそう言ってきた。

 おう。これは死霊王になったのと性別反転で性欲がほとんどなくなっていたからよかったが、性欲が合ったらヤバかったわ。可愛すぎだろう。反則やって。マジでこれは可愛いな。


「はい。そうです。というわけでお嬢様これからも私にドンドン命令を下さい」

 俺はそう言って自分の胸をドンと叩いた。


「分かったわ。ありがとう。じゃあ早速命令をするわ。貴方の名前を教えなさい」

 涙を服の袖でふき取って、ソファーの上に立ち上がりいつもの様に上から目線でそう言った。

 うん。それでこそ俺のお嬢様だ。素晴らしい。


「では改めましてお嬢様、私の名前はウエノ・タイトです。これからもよろしくお願いします」


「そう。ウエノ・タイトって言うのね。分かったわ。じゃあ今度から貴方の事をタイトと呼ぶわ」


「分かりました」

 タイトって呼ぶわ、か。タイトって言われるの何か久しぶりで新鮮な気がするな。そう俺のことを呼ぶのは家族と友人くらいだったな。少し前の世界が懐かしくなったわ。


「それじゃあタイト命令よ。これからは私の事をお嬢様ではなく。マリアと呼びなさい」

 マリアか、なるほど。そんな名前だったのか。中々どうしてありがちな名前だな。まあ似合ってはいるな。


「では。これからはマリアお嬢様と呼ばせて頂きます」


「ええ、それでいいわ。じゃあさっきの話の続きだけれども。タイトは今デスキングを支配しているということで合っているかしら?」


「はい。その通りですマリアお嬢様」


「じゃあ。そいつらを使って私を陥れたであろうクズの第二王子に復讐をする手伝いをさせましょ」


「分かりました。マリアお嬢様。では私の手を握ってください。今からデスキングの所に向かいますよ」


「それは、嫌よ」

 まさかの断られた。


「え?何でですかマリアお嬢様」


「何でって、あのデスキングよ。邪悪極まりない人体実験を繰り返し、自分の身体に魔物を埋め込んだり、人の死体を埋め込んだりして強くなるという恐ろしい化け物よ。会いたいわけがないじゃない」

 マジかよ。アイツらそんなえぐいことやってるのか。そうか。うん。お嬢様が会いたくないって言うならばしょうがないか。合わせないで上げよう。


「分かりました。ではマリアお嬢様はデスキングには合わないという事でよろしいですか」


「ええ、そうよ」

 意思は固いようだな。


「ではマリアお嬢様、一応お伝えしたいことがあります。内容は簡単です。この度マリアお嬢様が襲われ、バビリオン家のお嬢様が襲われた事件含め、全ては第二王子が国家転覆の為にデスキングに依頼したことでした」


「ちょっと、それを早く言いなさいよ」

 お嬢様に怒鳴られた。うん、さっきまであれだけ俺を恐れて泣いていたのに、切り替えが早いな。まあでもこうやって怒鳴ってくる方がマリアお嬢様って感じがするわ。まあ、我儘お嬢様ないし悪役令嬢的なあれだけど。


「すみません。マリアお嬢様」


「まあいいわ。でもこれでハッキリしたわね。あのクズとそのビッチは殺すべきだわ。それも民衆の前で磔にして、石を投げさせて殺させましょう。さあ、タイト、あのクズを殺すために行動を始めましょう」


「分かりました。お嬢様」

 いいね。素晴らしい。国家転覆を図ろうとする第二王子を元婚約者であり第二王子に陥れられた令嬢が復讐をすると。素晴らしい。実に実に楽しそうだ、面白そうだ。ああマリアお嬢様に付き従って良かった。

 俺はこういうのを求めていたんだよ。

 さあ。楽しい楽しいパーティーの始まりだ。


 ―――――――――――――――

 それから俺はデスキングに向かい、マリアお嬢様に言われた通りに準備を開始する。

 その準備、というよりも計画はこうだ。


 まず第二王子の依頼により捕らえられた貴族を全員一か所に集めて、今から惨殺すると告げ王都の近くにある洞窟の牢に放置する。

 不安に貴族たちが怯える中、颯爽と俺とマリアお嬢様が登場して全員を救出する。

 これで恩を売るとともに、デスキングが第二王子の依頼でこのような行為に及んだという証拠の依頼書を見せる。

 そして味方につけ、一緒に第二王子を断罪しようと誓わせる。


 その後、マリアお嬢様と捕らえられていた貴族たちと一緒に王都に行き、王城に乗り込む。

 取り敢えず一番最初に王都に乗り込む。一応これには理由があって。先にマリアお嬢様の両親の住む公爵家に戻ったりすると、第二王子に怪しまれて逃げられる可能性があるからだ。


 というわけで王城に乗り込んで王様に直接会い、今回第二王子のやろうとしている悪事を王様に告白した後、第二王子と第二王子派閥やビッチを引っ張り出して処刑する。


 終わりっと。


 もちろん。この途中に第二王子と第二王子派閥はかなり抵抗をするだろうがそれは。俺の圧倒的な力でねじ伏せる。

 後はまあ、処刑前とかマリアお嬢様のターンでめちゃくちゃ第二王子を煽って欲しい。凄い見ていて楽しそうなんでな。


 ――――――――――

 というわけで準備を終わらせて計画を始めた。

 計画は取り敢えずは上手くいっているように思えた。

 自作自演でデスキングによって捉えられていた貴族たちを助けて、感謝されて第二王子が黒幕だと明かして、協力を誓わせて、計画通りに事は運び王都まで向かった。

 で、ここで計画が盛大に崩れた。


 つまり、何があったかというと、王都が激しく燃え盛っていた。

 ようはもうすでに反乱が起こっていたということだ、そんでもってしかもその反乱は成功していて、王様も第一王子も首を刎ねられて晒されていた。

 うん、これはこれで楽しそうだな。


 ―――――――――――――――――――

 補足説明

 マリアお嬢様の本名は

【マリア・エレクトリ・アセロラ・ハートアンダー】

 です。

 親しい人からはマリアと呼ばれています。


 主人公の行動原理は楽しそうだからをコンセプトにやっています。

 その為ならば結構エグイことも平気でします。後、主人公はそれなりにオタクですので今の状況を結構楽しんでいます。

 可愛い女の子をお嬢様と呼び、その我儘なお嬢様に付き従い、無理難題をこなしていくのを結構ラノベ的にもありがちで楽しそうだと思ってます。主人公及び作者が。

 つまり作者の趣味ということです。しばらく付き合ってくれると幸いです。

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