第94話・デスキング
「貴方は一体何者なの。いえ、人なの?この禍々しい力到底人が出せるものとは思えないわ」
ゲロ吐きの天使(笑)が一通り吐き散らかした後。俺に恐る恐るそう言った。
いや、そんな風に言われても。まあでも、確かに今の俺の種族は死霊王なんだし。この娘の言ってる事当たってるっちゃあ、当たってるな。
そう考えると凄いね。でも俺としては別にこの娘から特別な力とか感じないんだけど。
そうなると、光属性の力をガンガン持ってるって感じではなさそうだな。
「あ?俺が何者かって。そうだな、通りすがりの騎士(笑)的な?別にただお前らが死にそうだったから助けてあげた優しい人だよ」
俺は少しカッコつけてウインクをしてそう言った。私的に中々カッコよく決まったと思う。
「優しい人ですって?貴方のような禍々しい力を放つ者が優しいわけがないじゃない」
何かキレられた。んな。理不尽な。いやまあいいけどさ。しかし、どうしますか。一応お嬢様には報酬を貰ってこいって言われてたし、これがオッサンとかなら躊躇いなく殺して眷族に出来たんだけどな。こういう美少女を殺して眷族にするのは何となく超えてはならない一線を超える気がして嫌だな。
本当にどうしようかな?
まあ一応報酬を要求しますか。
「まあいいや、一応の確認ね。俺は貴方の馬車が襲われている所を助けた命の恩人ね。ほんでその対価として今俺は報酬を寄越せって言ってる。以上分かった。別に俺の事を化け物と罵っても構わないけど。報酬をくれというか寄越せ」
・・・・・・・
何か流れる沈黙。
気まずい。
何これ?考えてるの?報酬を渡すか渡さないか考えられてるのか?それとも俺が助けたことを疑われてるのか?これは、うん、そうだな眷族に口添えさせるか。一応彼女の騎士であるわけだし信じるやろ。
「おい、眷族、適当に報酬を渡すように口添えしろ」
俺は元騎士の眷族に念話でそう伝えた。
「分かりました。主様」
「お嬢様、彼の言っている事は本当でございます。私共が不甲斐ないせいで盗賊ごときに苦戦してしまい。負けそうになった所を助けて頂きました。どうかその対価として報酬を渡してあげて下さい」
「そうなのね、グルンがそう言うなら本当でしょう。分かったわ。報酬を渡すわ。グルンというわけで金貨の袋を馬車から持って来て頂戴」
お、報酬を用意してくれんのか。やっぱり自分の護衛である騎士という信じている人に言われると効果あるな。
「あのう。それとごめんなさい貴方の事を疑った上に化け物と罵って、余りにも貴方の魔力が禍々しかったので。つい、本当にごめんなさい」
めっちゃ頭を下げて謝られた。いや、普通に謝罪するとかいい子ちゃんかよ。
まあ、しょうがない許してあげるか。
「いいよ、別にそこまで気にしてないし」
「ありがとうございます。それでは。これが報酬です。少なくてあれですが受け取ってください」
そう言って、彼女は自分の服のポケットから紋章の描いてあるボタン。そして、グルンって名前の騎士(眷族)から金貨の入った袋を貰った。
パっと見た感じの金貨の枚数は50枚くらだった。まあ。こんなもんでいっか。
「分かりました。ではありがたく報酬として頂きます。では、私はこれで。死霊魔法・死霊転移」
―――――――――――
「お嬢様、ただいま戻りました」
俺はお嬢様の元に転移した後、何となく騎士っぽい感じで膝をつき頭を垂れて言った。中々カッコよく決まったと思う。
「あら、丁度良かったわ。早く続きの漫画を寄越しなさい」
相も変わらず傲慢に言い放つお嬢様。というわけで闇空間から続きの漫画を出してあげる。
「ふん、それで、助けた馬車ってのはどうなったの?ちゃんと報酬として根こそぎ奪ってきたでしょうね」
何故か、ふんって怒ってる感じを出したいのか分からないけど、中々可愛い声を出した後、俺に質問をしてくるって、根こそぎ奪うって、それこっちが盗賊じゃないか。鬼かよ。いや死霊王なんだけどさ。鬼をガンガンこき使ってるけどさ。うん。俺が言えたセリフじゃないな。
「いや。流石に根こそぎは奪っていませんが、報酬の方はしっかりと頂いてきました。報酬は全部でこちらになります」
俺はそう言って、金貨の入った袋と紋章の書いてあるボタンを渡す。
「この紋章、バビリオン家の物じゃない。どうしたのこれ」
お嬢様が突然声を荒げる。バビリオン家?何それ?いや、うん、多分お嬢様の反応から察するにそれなりに凄い家っぽそうだけど。
「そうですね。お嬢様バビリオン家の物ですね。今回助けたお嬢様と同い年くらいの金髪の女性が私にくれました」
「え?そうなの、私と同い年で金髪ってことは、心眼のマレッサか?何でマレッサがこんな場所にしかも、盗賊に襲われてピンチになってるんだ?護衛が何をしている?いや、待てまさか、私と同じように嵌められた?いや、そうなのか。でもマレッサの性格的に言えば人に怨まれるような事はないはず。じゃあ・・・いや、待て、まさか。まさか。まさか。・・・・・」
何かお嬢様が独り言をぶつぶつぶつぶつ言って、急に黙り込く。
「大丈夫ですか。お嬢様」
「騎士、至急、ここら一帯の盗賊団を探して貴族が囚われてないか確認しなさい。いや、そう言えば貴方、死者を蘇らせて絶対服従にする魔法を使えたわね。それならば、バビリオン家を襲っていた盗賊を蘇らせて黒幕を問いただしなさい」
いきなり、お嬢様に命令された。一体どうしたんだ?いや?どういうことだ?またお嬢様の気まぐれめいたことか。いや。それにしては本気の顔だ。取り敢えず素直にお嬢様の命令に従いますか。
「分かりました。お嬢様」
「おい。元盗賊の頭。質問がある。答えろ」
俺は早速念話を使い質問を開始する。
「はい、主様。私の知っている事でしたら、なんでもお答えします」
「じゃあまず。あの貴族を何故襲った?」
「はい。それは上から命令が来たからです」
「上から?それは何だ」
「はい。上というのは、私達のような盗賊をまとめている団体です。正式名称はデスキング。混沌と破壊を振りまき様々な国に深く根を張っている闇ギルドです」
「なるほど、因みに、そのデスキングとやらの拠点は分かるか?」
「はい。すみませんが私のような下っ端には教えられていません。基本的にはいきなり現れる仲介人という人の命令で動いてます」
「なるほど、じゃあ、その仲介人に合える方法はあるか?」
「はい。一応不測の事態が起きたらすぐに連絡出来るように、使いきりの通話魔道具を渡されています」
「なるほど、因みにその魔道具は今手元にはあるか?」
「はい。ございます」
「じゃあ、それを使って、呼び出してくれ。そして、俺がそいつを殺す。分かったな」
「はい。分かりました。基本的に仲介人は転移魔法を使ってくるので、多分一瞬で来ると思います」
「そりゃあ、都合がいいな。じゃあ早速呼び出してくれ」
「はい。分かりました。場所は何処に致しましょうか?」
「そうね、じゃあ、あんたらが俺に一度殺された場所でどう?」
「はい。分かりました。では、仲介人を呼びます」
「オッケー、呼べたら言ってくれ」
―――――1分後―――――
「主様、呼べました」
「分かった。死霊魔法・死霊転移」
――――――――――
「とりま、闇魔法・闇の揺り籠」
俺は転移したら速攻で空間魔法で逃げられないように周り全てを闇で覆った。
「これは、これは、どうやら嵌められてしまいましたか」
シルクハットを被り、紳士服に身を包んだ。初老を迎えたくらいの男性がいた。
なるほどね。この人が仲介人って人か。中々どうして、かなりの闇の力を感じる。今の俺程強くはないけど。多分闇助の半分分くらいには力を感じる。少なくともこの世界であった存在の中では。邪竜の次位に強いな。
まあ、いいや、サクッと殺して眷族にしますか。
「ああ、嵌めたよ。まあ、今回は相手が悪かったな」
俺はそう言って、闇空間から漆黒魔剣を取り出して突きつける。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。今私は心の底から歓喜していますよ。嗚呼本当に素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。実に実に実に素晴らしい。本当にいらしたのですね。死霊王様」
そう狂ったように叫び笑うと膝をつき俺に頭を垂れた。
「死霊王様か。そう言えば名前、デスキングだったな。なるほどね。お前らもしかし死霊王を崇拝してる的な組織か。じゃあ話が早いな死霊王である俺の為に死ね。そして眷族となれ」
「ありがたき幸せでございます。死霊王様。どうぞ一思いに私を殺してください」
「分かった。闇魔法・闇斬り・死霊魔法・死霊生産・死霊強化」
そして一切の抵抗もせずに俺に首を切断され死んだ。それをサクッと死霊にして一応強そうなので強化も済ませる。
「おお。おお。おお。力が溢れて来る。ありがとうございます。死霊王様」
「いや、何良いってことよ。それよりもさ、デスキングという組織について詳しく教えて貰えるかな」
「はい。もちろんでございます。死霊王様、何なりとお聞きください」
「じゃあ、まず。あんたらは盗賊を使って貴族を襲わせてる。一体何を企んでいる?」
「はい、それは国家転覆です。この国を滅ぼし新しい王を立てる為の下準備です」
「マジか、ということは何?あれか?かなりの数の貴族を同じように襲っているということか?」
「はい。その通りでございます」
「じゃあ、そいつらを助け出すことは可能か?」
「はい。可能でございます。私共デスキングは死霊王様に仕えることを最大の目的として動いている組織でございます。死霊王様の命令とならば我らデスキングは何でもこなして見せます」
「なるほどね。じゃあ。俺がお前らの本拠地に行けば歓迎されるってこと。ほんで全員喜んで俺の眷族に喜んでなるという事か?」
「はい。その通りでございます」
「じゃあ。先に全員眷族にした方が早そうだな。おい、本拠地に案内しろ」
「分かりました。では空間魔法で転移をさせていただきます。空間魔法・集団転移」
――――――――――
転移した先は薄暗い部屋だった。
そしていきなりダダダダって音を立てて9人の男女が俺に向かって首を垂れた。
「これは俺が死霊王って分かってるという事か?」
「「「はい。もちろんでございます。死霊王様」」」
綺麗に声が重なりある。普通に凄いな。
「おう、そうか、ということは今から俺に殺されて眷族になるってのも理解している?」
「「「もちろんでございます。死霊王様」」」
またもや声が重なる。凄い息がピッタリやな。
「じゃあ、眷族にするわ。闇魔法・闇斬り・死霊魔法・死霊生産・死霊魔法・死霊強化」
俺は闇空間から漆黒魔剣を取り出して首を切断した後、死霊もとい眷族として蘇らせた。
「「「あああ、これがこれが死霊王様のお力、一生死霊王様にお仕えさせて頂きます」」」
一斉に全員が俺に跪いた。
いや。何か凄い忠誠心高そうやな。まあ、根本的に眷族にしている時点で忠誠心はMAXに近いんだけど。それにしてもやろ。そういえば前も死霊王の使い・・・やったけ?なんやったけ?そんな感じの名前の犯罪組織合ったな。意外と死霊王ってのは凄いのかもな。知らんけど。
「分かったわ、じゃあ。あんたらは俺に絶対服従なオッケー」
「「「はい、大丈夫でございます」」」
うん。良い感じやな。つか、これ落ち着いて考えたら全員それなりに強いやん。
一番最初に眷族にした仲介人って人は元々闇助の半分程の力を持っていたのが。俺が眷族にしたからそれが倍以上に増えた。
その他の9人も仲介人って人には及ばないものの、かなりの力を感じられる。あくまで予想だけど。あの城塞都市で出会った冒険者達がそれこそ一万人束になっても圧勝するくらいには強そうだな。
・・・・・・・
うん。ヤバくね?え?そういえばすっかり忘れていたけど。コイツら良い所のお嬢様を盗賊に襲わせていた。相当ヤバい奴らやん。俺そんなヤバい奴らを眷族にして力を与えたんだけど。
・・・・・・・・
まいっか。今は俺の眷族になってるんで。犯罪行為は制限できるし。うん。いいや気にしなさい。どうせ異世界だ。
さて、一応お嬢様に頼まれていた事を終わらせますか。
「おいお前ら。質問だ。正直に答えろ。何故バビリオン家のお嬢様を襲った?そして彼女以外に襲った人はいるか?」
「では、死霊王様、それにつきましては私の管轄なので私が説明させていただきます」
10人の中から一人、魔女って感じの黒色の服を着た女性が現れた。ぱっと見の年齢は20代後半くらいで大人のお姉さんって感じの色気ムンムンの巨乳って、うん、あるあるだな。
まあでも、あれだな。俺的にはこういう女性も好きだが、やっぱりお嬢様みたいなツンツンしてる白色の柔肌の貧乳黒髪美少女っての方が好きだな。後はやっぱりこうやって眷族にしてしまうと俺の言葉に絶対服従なわけだし、そうなると何かつまらないな。うん。やっぱり美女に命令をするよりも美少女に命令をされた方がいいなって?あれ?俺変態じゃない?いやでも俺だって思春期の男子だ。そこまでおかしくはないはず・・・ないよな・・・?
まあいいや。今は取り敢えずこの美女の話を聞きますか。
「分かったわ。分かりやすく。簡潔に説明してくれ」
「分かりました。では、簡潔に言いますと。
1・私達、デスキングは活動の為に何かとお金や権力者との繋がりが必要になります。
2・繋がりの合った第二王子派閥から依頼が来ました。
3・依頼内容は国家転覆。第一王子派閥や自分に邪魔な人間を殺し、自分こそが国王になるという依頼でした。
4・報酬も破格だった為、依頼を受けました。ただし私達の方で何かあった時に使えるかもと思い殺すのではなく生かして捕まえていきました。
5・その中にバビリオン家のお嬢様も含まれていました。
という感じです」
「なるほどね、納得したわ。ん?待てよ?ということはお前ら国家転覆なんて恐ろしいことやろうとしてたの?」
「はい。その通りです。これでもデスキングはかなり大きな組織です。超大国である帝国や化け物のように強い勇者を召喚したと噂のある山田王国や私共の弱点である聖魔法の使い手の多い聖教国を除けば。多分全ての国を滅ぼせます」
凄い自信満々にそう言われた。心なしか凄いでしょ褒めて褒めてって圧も感じる。
うんまあ、普通に凄いなって言うよりも、思った以上に凄い組織なんだな。で、それを支配している俺っと。あれ?これ凄いカッコイイじゃない?表向きは貴族の護衛、しかし、その正体は国を滅ぼす力を持つ巨大な闇組織の真の主。
うん、超絶カッコイイわ。さてと、今からどうしますか。一応お嬢様呼ぶか。
ぶっちゃければいきなり俺がこの組織の真の主って知って驚く可愛いお嬢様を見てみたい。
「なるほどね。オッケー分かったわ。じゃあ今から俺のお嬢様呼ぶから少し待ってもらえる。因みにもしもお嬢様に何か危害を加えたら殺すからね」
「「「はい。分かりました。死霊王様」」」
全員が俺に跪く。俺はそれを見届けてから魔法を唱えた。
「死霊魔法・死霊転移」
――――――――――
俺はお嬢様の所に転移した。
「あら。早かったじゃないの。もう終わったの」
お嬢様が漫画片手に足を組んで俺にそう言ってくる。因みに体勢としては俺がお嬢様に騎士プレイの一環で跪いてるんで。生足が拝めてる上に後少し絶対領域が見えそうで見えない素晴らしいアングルを確保できています。つかあれだな。俺は性欲はないけどこういうオタクって感じのエロというよりもロマンのあるものには凄い興奮するな、うん。俺ってやっぱり変態だな。いやまあオタクでライトノベル好きなんだ仕方がないか。
「いいえ。お嬢様、お嬢様に命令された事はしておりません。その代わりにその上にいたデスキングという組織を絶対服従の眷族にして支配しました。その中の一人が今回の件に詳しいようですので、その人に直接質問をしてくれたらなと思い。お呼びしました」
「え?ちょっと待って、待って待って待って待って待って?デスキングを支配したって言った?デスキングってあの超巨大闇組織の?」
めっちゃ驚いて漫画を放り投げて俺に問い詰めて来るお嬢様。いや~~~この反応を待っていた。可愛いわ。
「はい。そうですねお嬢様。私はこれでもお嬢様の護衛ですよ。これくらい出来て当然です」
俺はカッコよく言い放った。
決まったわ。マジで決まったわ。さあ。どんな反応をお嬢様はしてくれるかな。私的には「ふん、それくらい出来て当然よ」とか言って内心超絶驚いてるってのがありかな。
「そうね。確かに私の騎士だもんね。これくらい出来て当然だわって、なると思ってるんですか。貴方は一体何者なの。邪竜を殺しデスキングを支配し、漫画という私の全く知らないものを出し、空間が明らかに広い不思議な馬車を簡単に用意して。そんなことが出来る人がせいぜい公爵令嬢ってだけの私の騎士になるはずがないでしょ。そもそも私は貴方に名前も伝えてない。何?貴方は一体何者なの?どうして私にここまで良くしてくれるの?教えて。怖いのよ。ねえ、貴方は一体何者なのよ。私をどうするつもりなのよ。私が出来ることなんてたかが知れているわ。私はここまで尽くしてくれる貴方に何をすればいいのよ。どうして私なんかに・・・・・」
情緒不安定気味で俺に怒鳴って、叫んで、最後は泣き出す。
うん、何か思った反応と違うんだけど。でも。この反応も中々どうして、素晴らしいな。
――――――――――
補足説明というか一応のアレ。
大きすぎる力は小さい力を隠します。
まあ、これで察してください。
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