第92話・邪竜殺しの英雄ってカッコいい

 というわけで騎士ごっこの為王都に向かうこととなった俺。

 まあでも、一旦あの城塞都市に戻りますか。

 一応俺邪竜討伐に盗賊とオークの集落を潰したわけだし、それにこの公爵令嬢についても一応報告した方がいいだろうしね。

 後は食糧問題やな。一応俺の闇空間には元の世界の食べ物があるけど、それがお嬢様の口に合うかも分からなければ、アレルギーがあるかもしれない。

 そう言うのを諸々考えたら街に戻った方が良いと考えたわけだ。後、王都への行き方が分からないからギルドマスターに聞いておきたいしね。


「お嬢様、まずは食糧調達とお嬢様の無事を伝える為に近くの街によらせて頂きます」


「分かったわ。でも私の無事は伝えないで貰える」


「分かりましたがお嬢様、どうしてご自身の無事を隠すのですか」


「何、簡単なことよ、私は多分婚約者である第二クソ王子かそいつの部下もしくは、あのクソッタレのビッチ辺りの指図でやって来たであろう盗賊に捕らえられた。そんでもって、貴方が助けに来なければ。暫く時間を置いた後、あのクソ共の目の前で知らない男に犯されて殺されていたと思うわ。だから、今は私が死んだと思わせといて、あのクソ共が婚約でもしてパーティーしたら、それに乗り込んでぶっ潰す為よ」


・・・・・・・・


「お嬢様、その考え実に実に素晴らしい、そして凄く凄く楽しそうだ。私お嬢様の騎士になれて良かったです」


「あら、そう思うの。気が合うわね。まあ、せいぜい私の役に立ちなさいよ」


「はい。分かっておりますとも、お嬢様」

 思ったよりも俺のお嬢様は狂っていた。ただ、このお嬢様についていったら想像以上に楽しそうだ。いや、婚約破棄イベントとかマジで熱い。


「では、お嬢様今から街に行きますけど、お嬢様の設定はどうしましょうか?私としては盗賊団に捕まってしまい心に傷を負ったという設定で、助けた私しか信用しないという設定でどうでしょうか?」


「ふ~ん、なるほどね、まあ良いでしょう。じゃあその設定でいきますわ」


「ありがとうございます。お嬢様、では街に参りましょう」

 俺はそう言うと、時間短縮の為お嬢様の手を手に取り魔法を唱えた。


「死霊魔法・死霊転移」


 ――――――


「ほい、到着っと」

 俺は死霊転移で俺が殺して眷族にした冒険者を座標にして、サクッと冒険者ギルドに転移した。


「どうも、皆さん、邪竜討伐してきましたよ」


「おお、良く帰って来たな、タイトいや邪竜殺しの英雄よ」

 俺に何か感極まったように向かってくる、ギルドマスター。


「いや~~~、邪竜殺しの英雄って少し恥ずかしいなあ、まあ。カッコいいからいいですけど、それよりもギルドマスター約束覚えてますよね?」


「ああ、もちろんだとも、もう既にSランク申請をしておいた。邪竜殺しという大偉業を成し遂げたのじゃ、多分申請は通るじゃろう、ただ、Sランクの証をタイトに渡せるのは1日後になると思うのでな、すまないがそれまで待ってくれ」


「なるほどね。分かったわ。じゃあ1日待ちますわ。あ、それと受けた依頼のオークの集落潰しと盗賊潰し両方やっといたから、因みに気になってると思うけど、この娘はその盗賊団に捕らえられていた娘、何されたかは知らないけど心に傷を負っちゃって俺にしかなついてないんで保護してる。話を聞いたら王都に両親が住んでるらしいんで、まあ、Sランクの証を貰ったら王都に向かいますわ」


「おおそうか分かった。では、すまないが一日待ってくれ、そしてありがとう。邪竜殺しの英雄タイトのおかげでこの城塞都市は救われた。タイトがいなかったらこの城塞都市は文字通り壊滅し皆虐殺されていただろう、それを救ったくれたこと、心の底からお礼申し上げる。ありがとう」

 ギルドマスターがそう言うと、周りにいた冒険者が皆俺に頭を下げて「ありがとう」と言ってくる。

 少し照れくさいけど、悪い気はしない。


「どういたしまして、まあ、私としても報酬も貰えたし、邪竜の素材の獲得にレベルも上がったし、良いこと尽くしですよ」


「そうか、そうか、良いこと尽くしか、流石邪竜殺しの英雄のセリフは違うね。普通はあんな強敵と戦ったら満身創痍でもう二度と戦いが出来なくなるってのが普通なのに、あ、それと、すっかり渡し損ねていた、これを受け取ってくれ」

 ギルドマスターがそう言うと、受付から人が一人入りそうなくらいの大きな袋を出して俺に手渡してきた。


「この中には少ないかもしれないが邪竜討伐の報酬として金貨5千枚入っている。好きなように使ってくれ」


 金貨5千枚って凄い額だな。いや、これはかなりありがたい。お金はいくらあっても使う時は使うからな。取り敢えず闇空間に仕舞っておこ。


「ありがとうございます、では、私はこれで」


「おう、じゃあ、明日Sランクの証を用意しておくからな、あ、それと、まあ邪竜殺しの英雄タイトの事だ、盗賊もオークの集落もしっかりと討伐してるだろうけど一応確認の為報酬の受け渡しは明日となる、すまんな」


「いやいや、大丈夫ですよ。確認は大切ですからね、では、今度こそって、あ。そういうえばこの街で一番良い宿ってどこですか?」

 俺一人なら普通の宿でいいけど、貴族であるお嬢様に普通の宿に泊まれってのは中々酷な話だと思ったので。一応いい宿を聞く。


「ん?一番いい宿か、確かに邪竜殺しの英雄様だもんな。よし、少し待ってろ、今紹介状を書く」

 ギルドマスターがそう言って2階に上がった。

 待つこと1分


「じゃあ。この紹介状を、このギルドを出て大通りをずっと真っすぐいったら大きな噴水のある広場が見える、そこで一番大きい建物で名前はユグドラシルの宿っていうんだが、そこに行ってこの紹介状を見せれば一番良い部屋に案内されるはずだ」


「分かりました。ありがとうございます」


「何、良いってことよ、もし何かあれば気軽に声をかけてくれよな」


「分かりました。では、何かあったら頼らせてもらいます」

 そう言って、今度こそ冒険者ギルドを出た。


 ――――――――――


「あんた、邪竜殺しの英雄ってどういう事よ」

 冒険者ギルドから出て早々、お嬢様に怒鳴られた。


「いや、どういう事と言われましても、そのまんまですよお嬢様。邪竜が現れたので討伐した。それだけです」


「それだけって・・・・・、邪竜殺しよ、それがどれだけ凄い偉業なのか理解しているの?」

 驚いたことにお嬢様がかなり声を荒らげて言ってくる。

 あまりお嬢様との付き合いは長くないけど、ここまで感情的になるなんて、邪竜殺しって本当に凄いんだな。まあ、結構強かったしね。一応納得は出来るわ。


「お嬢様、そんなことよりも早く宿に向かいましょうか、ここでは人目に付きますし」

 お嬢様が声を荒らげるものだから、周りの人がザワザワし始める。パッと見る感じ、まだ、俺が邪竜殺しの英雄ってことはギルド内部にしか広がってないらしいけど、それも時間の問題だ。

 何かの拍子に発覚したら、そりゃ確実に祭り上げられる、それはそれで楽しそうだけど、今はお嬢様との騎士ごっこをしてたいんでね、勘弁願いたいわ。


「ええ、そうね」

 お嬢様にも宿に向かうオッケー貰いましたし、宿に行くかってこれだけ聞くと俺幼気な少女を宿に連れ込もうとしてる変態だな。まあ、いいけど。そもそも俺性欲はほとんどないしね。


「では、宿に参りましょうか、お嬢様」


「そうね、早く行きましょう」


 テクテクテクテクテクテク


「ほい到着っと」

 ここがギルドマスターの言ってた。ユグドラシルの宿か。

 早速中に入る。


「いらっしゃいませ」

 中に入ったら、中世ヨーロッパ風って感じの豪華な場所だった。

 大きく光り輝くシャンデリアに赤いカーペット、受け付けは金色に光り輝いていて受付嬢もかなりのベテランてオーラのある美人さんが3人。

 階段は螺旋状にあり、かなりカッコイイ。


「お客様、当店は紹介状制でございます。紹介状はお持ちでしょうか?」

 受付嬢が笑顔でこっちに来て、一礼をした後、そう言った。


「あ、紹介状ね、これで良いですか?」

 俺はギルドマスターから貰った紹介状を受付嬢に手渡す。


「拝見させて頂きます」

 受付嬢が紹介状を手に取り確認する。


 ・・・・・・・


「はい、確認終わりました。では邪竜殺しの英雄様、最高峰のおもてなしをさせて頂きます。お部屋のご希望はございますか」


「お嬢様、希望はありますか?」

 俺は特にどうでも良かったのでお嬢様に聞いてみる。まあ、元々このいい宿に来た理由はお嬢様の為だしね。


「そうね、じゃあ一番良い部屋でお願い」


「分かりました。ではキングスイートルームに案内します」

 受付嬢に連れられて、螺旋階段の最上階に上がり大きな部屋に案内された。


「ここがキングスイートルームです。何か用がありましたら、何なりとお申し付けください。それと昼食は何時頃お部屋にお運びいたしましょうか」


「お嬢様何時がいいですか?」


「そうね。12時に運んでもらえる」


「分かりました。ではそのように」

 受付嬢はそう言い礼をして部屋を出た。

 そういや、俺が邪竜を殺した件はいいのかな?お嬢様忘れてない?まあ、説明するの面倒やからいいけど。


 ――――――――――


「さてと、お嬢様、明日王都に行きますが、その間の食糧調達を今からしようと思っていますのですが何か買って欲しい物はありますか?」


「私も一緒に行くわ。私は基本その時の気分で好きな物が変わって来るから」


「分かりました。では一緒に行きましょう、お嬢様」


 ――――――――――

 その後、お嬢様と一緒に一杯食料を買いました。

 お嬢様は思った以上に高級志向ではなかったが、宣言通り気分によって買いたいものがコロコロコロコロ変わるんで、あれもこれも買って買ってというか、買いなさいって言われて。

 気が付いたら恐ろしいほど爆買いしてました。使った金額は金貨30枚。うん、かなり使ったな。

 食糧調達が終わった後、宿に戻って昼飯を貰った。

 昼飯は想像以上に豪華だった。例えるなら、行ったことはないんだけど、パリとかにある三ツ星料理のフルコースのような感じだった。めちゃくちゃ美味しかったです。

 お嬢様もまあまあ美味しかったと、完食してくれた。一応結構ガッツいてたしこの宿で良かったやろ。


「さて、お嬢様今からどうしましょうか?」


「そうね、確かに今から暇だわね・・・じゃあ、何か面白いものを出しなさい」

 お嬢様が中々の無茶ぶりを振って来た。

 何か面白いものを出しなさいって、俺お嬢様の好み知らないし・・・どうしようかな・・・俺の手持ちにある面白い物っていったらゲームとかラノベとか漫画くらいしかないな。まあ、一応適当にゲームでも渡しますかってゲームは流石に渡されても分からないか。そうなるとラノベ、いや漫画かな。うん、漫画渡そう。


「では。お嬢様これをどうぞ」

 俺は闇空間から超絶有名なドでボールの漫画を取り出してお嬢様に渡した。


「これは何?」


「漫画と呼ばれる書物でございます。お気に召さなかったら他のを持ってきますよ」


「ふ~ん。まあ、暇だし読んであげるわ」

 そう言ってお嬢様は俺の出した漫画を手に取った。


 4時間後


「何よ、物凄い面白いじゃないの、続きを続きを早く寄越しなさいよ」

 お嬢様めちゃくちゃ嵌りましたな。やっぱり漫画は素晴らしい文化だな。


 2時間後


「お腹減ったから、そろそろ夕飯にしましょう」


「そうですね。お嬢様、では受付に夕飯を持って来るように言ってきます」


 夕飯は驚いたことに豪華な日本料理だった。

 めちゃくちゃ美味しかったです。久しぶりに日本料理を食べたって感じで少し懐かしさで涙が出てきた。

 因みにお嬢様もかなり気に入ってた。

 その後、ご飯を食べ終わった後はお嬢様と一緒にずっと漫画を読みました。

 ラノベもゲームも楽しいけど、漫画もかなり楽しいっすわ。


 ――――――――――

 そして気が付いたら朝になっていた。

 ――――――――――


「ヤバ、俺ずっと漫画読んでた、そういやお嬢様は」

 俺はベットに目を向けると、漫画を片手に持って爆睡してるお嬢様がいた。

 うん、これは起こそうか起こさないか悩むな。

 ・・・・・・

 よし、起こさないでおくか、昨日結構遅くまで漫画読んでたしね。まあ取り敢えず1日たったし、冒険者ギルドにSランクの証を貰いに行きますか。

 まあ、一応闇空間にある魔石を使って影潜・アンノウ作って護衛の為に置いておくか。お嬢様は多分寝てるだろけど。お嬢様の安全を考えてな。


「死霊魔法・死霊転移」


 ―――――


「どうも、ギルドマスター、Sランクの証を取りに来ました」


「おお、タイトよく来てくれたな。丁度今冒険者ギルド本部からSランクの証が届いたところだ。ほれ。これがSランクの証だ。受け取ってくれ、後これ盗賊とオークの集落の討伐報酬だ」

 ギルドマスターからSランクの証と金貨の詰まった袋を受け取った。

 タッタラッタラ~~~、タイトはSランクの証を手に入れた。タイトは冒険者ギルドのSランクとなった。


「ありがとうございます、では、私はこれから王都に行くのでって、あ、すみません、ギルドマスターどうやったら王都に行けますかね?」


「王都への行き方か?そうだな、一番簡単なのは王都行きの馬車に乗る事かな?」


「なるほど、え?因みに王都への方向はどんな感じですか?」


「方向か?一応方向はこの城塞都市を出てひたすらずっと真っすぐいって2つほど街を超えた所にあるぞ」


「なるほど、ありがとうございます、じゃあ多分馬車には乗らずに自力で王都まで行きますわ」


「分かった。気を付けろよな、まあ、邪竜殺しの英雄様に心配は不要か」


「ハハハ、そうですね、まあ色々とありがとうございました。では、また機会があれば、死霊魔法・死霊転移」

 俺は一応ギルドマスターにお礼を言った後お嬢様の所に転移した。


 ――――――――――

 お嬢様はまだ、寝ているな。

 しょうがない、起きるまで漫画でも読んで待ちますか。


 1時間後


「う、寂しいよ、誰か、誰か、誰か」

 お嬢様がベットで泣きながら、うわ言を繰り返していた。


「うん、あれだな、これはかなり可愛いな、あれだけ傲慢って感じでたまに何考えてるか分からないけど、そのギャップというのか、辛いトラウマを持ってる少々傲慢いや我儘なお嬢様」


 ・・・・・・


「ヤバい、これは愛せるな、ラノベ的にも普通に主人公行けそうだな、ちょっ暫くこの可愛いお嬢様眺めてますか」


 ・・・・・・・・・


「ちょっと、何見てるの」


「あ、お嬢様起きた」


「あ、お嬢様起きたじゃないよ、お腹減った、早く朝ご飯頂戴」

 起きた瞬間、俺に怒鳴ってくるお嬢様。さっきの可愛いお嬢様は何処に。

 まいっか、またお嬢様と一緒に居たらまた見れるやろ。さ、朝ご飯を用意してもらいますか。


 ――――――――――

 朝ご飯は中華料理のフルコースだった。

 めちゃくちゃ美味しかったです。

 ただ、お嬢様は辛いのが苦手だったらしく、あまり食べれてなく、俺と一緒に昨日買った食材もとい料理を渡した。辛い物が苦手って、やっぱり可愛いな。


「さてと、お嬢様、今から王都に向かいますが準備はよろしいでしょうか」


「まあ大丈夫よ、さあ早く王都に向かいましょう」


「分かりました。お嬢様、では王都に向かいましょう」


 ―――――――――――――――

 補足説明

 主人公はお嬢様との騎士ごっこをかなり全力で楽しんでます。

 お嬢様に対して恋愛感情は持っていませんが、ラノベ大好きの主人公は二次元キャラって感じのお嬢様をかなり気に入ってます。

 邪竜殺しはかなり凄いです。

 元々邪竜は急に何処かに現れて、暴れ回った挙句急に消えるっていう恐ろしくはた迷惑な化け物でした。

 邪竜によって壊滅された国は街は数知れず。邪竜の恐ろしさは全世界共通のものです。

 それを討伐した主人公はこれからかなりの知名度を得ます。

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