第63話・なんかこの謎の手さんが凄く尽くしてくれるのだが
「ハアハアハア、勝った、あああ、勝った、いやきつかった、きつい疲れた」
俺は今まで自分に掛けていたスキルと魔法を全て解除して床に寝そべる。
「泰斗殿、大丈夫でござるか」
「ああ、鉄志俺は大丈夫だ、逆に鉄志は怪我ないか」
「某は大丈夫でござる、それに紗江も無事でござるが金山殿が」
「金山がどうしたって」
俺のその言葉に対して鉄志が涙を流しながら言った。
「金山殿が死んだでござる」
と。
「え、金山が死んだだと」
「そうでござる」
「いや、待てそう泣くな鉄志、死んでから時間が立ってなければ、俺の魔法で生き返らせれるから、早く金山の元に案内してくれ」
「本当でござるか、こっちでござる」
鉄志に連れられると、ボスの部屋の扉付近にボロボロの状態で死んでいる金山がいた。
俺はその死体を確認すると時間切れになる前にすぐに魔法を唱えた。
「崩壊魔法反転・再生魔法・リバイブからの死霊魔法・死者蘇生」
・・・・・・
「死霊魔法・死者蘇生」
・・・・・・
「あれ、おかしいな、そんな時間は立ってないはずなのに、死霊魔法・死者蘇生」
「反応しろ、死霊魔法・死者蘇生、死霊魔法・死者蘇生」
・・・・・・
「どうしたのでござるか、泰斗殿、金山は金山は生き返るのでござるよな、なあ」
・・・・・・
「すまねえ、無理だ」
「そんな、金山殿、金山殿、金山殿、死ぬなでござる、こんな所でくたばるなでござる、某と戦うのでござるよな、某と一緒に高難易度ダンジョンに潜るって約束したでござるよな、金山殿、返事してくれでござる金山殿」
金山の死体の前で泣き叫ぶ鉄志、俺はそんな鉄志に対して言葉をかけれなかった。
一瞬。死霊魔法・死霊生産を使おうとも思ったが、あの魔法はあくまで死体を素材に死霊を作つ魔法で合って、本当の意味で生き返ったとはいえない。そんなこと俺には出来なかった。
そんな時だった、いきなり白色をした謎の手が地面から生えてきて、金山の身体に何か白色の塊を入れた。
そして、その謎の手は俺の前に来て、ぺこりと手を下げた後、もう一回みたいなジェスチャーをしてくる。俺はそれを見て、もう一回、魔法を唱えてみた。
「死霊魔法・死者蘇生」
・・・・・・
「は、は、は、ハア。あれ、俺は死んだはずじゃ」
金山が蘇った。
不思議だ、あれだけやっても蘇らなかったのに謎の手が何か白い塊を入れたら急に蘇った。
あれの白い塊は何だっんだ、それに、あの謎の手は何故俺の手助けをした。
あの手はいったい何だ?
「金山殿、本当に金山殿でござるか」
「なあ、鉄二、俺死んだはずだよな、なんで生きてるんだ」
「それは泰斗殿が蘇らせてくれたのでござる」
鉄二にその言葉に驚き俺のほうを見てくる金山。しかし、この蘇りは俺の力じゃないあの手の力のおかげだ。
「いや、俺はただ魔法を掛けただけだ、金山、お前を蘇らせるのを本当の意味で行ったのは白色の謎の手だ、俺じゃなくてその手に礼を言ってくれ」
「白色の謎の手だと、それって、今泰斗の後ろで大量にひれ伏している手か」
俺の後ろって、何じゃそりゃ?そう思いながら後ろを振り向くと大量の白色の手がひれ伏していた。
下手なホラーよりもよほどホラーな謎の手に俺は何故か親近感を覚えた。いや、なんかこう、正確に言えば長く一緒にいた愛犬やネコのような感覚だ。
ザザザザザザザ
いきなりいくつかの手が俺に近づいてきて、王に何かを献上するかのように今まで感じた中で一番の魔力いや魔力ではない何かを感じる10センチぐらいの白色の玉と光り輝くスキルの書に真っ黒でどす黒いスキルの書を1つずつこっちに持ってきた。
「これは、俺にくれるのか」
俺のその問いに対して、手首が引きちぎれるかってくらいぶんぶんと周りの手たちが下げだす。これは多分いや確実に俺にくれるということだろう。
え、本当にいいのかこれ、明らかにレアアイテムだぞ、やばいよこれなんとなく鑑定しようとしたら全て鑑定結果が出ませんて出たもん。
どれだけレアなアイテムなんだよ、凄くない。これもらえるのめちゃくちゃ嬉しいのだが。まあ、でも、ただでもらえるのは流石にあれだし、魔力はまだまだ余っているし、なんなら魔石で補給できるし、魔法でこの手たちを強化してあげるか。じゃないと俺の気が済まない。
「じゃあ、ありがたく貰うわ、その代わりといってはなんだが、俺の魔法でお前たちを強化させてくれないか」
・・・・・・
しばしの沈黙の後、手たちが凄い喜ぶような感じで手を挙げだす。
これは、多分強化しても良いよってことだろう。
じゃあ、やっていきますか。俺は闇空間から適当に何万個とある魔石のうち1万個を取り出し(最近主人公が死霊を作るのをさぼっていたのとダンジョンが増えたためかなり魔石がたまっている)唱えた。
「死霊魔法・集団死霊大幅強化・闇魔法・集団闇系統魔物大幅強化」
そして、起こるは手の大軍の超強化、この時上野 泰斗は気が付いていなかったのだかこの手が悪魔との戦いで呼び出された死霊の手ということに、そして死霊の手というのは死霊王という王に仕える=眷属になることで全能力値を2倍さらに様々な魔法をスキルを使えるようになる種族であることを、上野 泰斗は気が付いていなかった。
その上で自分が持っているスキル支配者により眷属の全能力値が倍さらに、先ほどかけた魔法と元々持っている強化系スキルによりさらに強化されることを、その結果、死霊の手は元々の能力の約5倍というとんでもない能力値を手に入れた。
しかし死霊王の手は強くなった力を完璧に制御して隠していた。
そのため、上野 泰斗は死霊の手は元々死んだ人間を表す真っ白であったが死霊王に忠誠を誓い死霊王の手となっためその色は重く深い闇の紫色に変色したという見た目の変化しか気づかなかった。
「うわ、何か色が紫に変色した、いやでも、こっちの方がカッコイイな」
俺がそう褒めると万歳、万歳と喜んでくれる。
「そんなに喜んでくれるとこっちも嬉しいわ、でもどうするかこの手達、完璧に俺のこと気に入っちゃててずっとついてきそうなんだが」
俺の問いに、こくこくと頷くように手真似をする。ようはずっとついてくると。
「でも、ずっとついてこられると他の人に迷惑だな、どうするか」
俺がそう呟くと手達が俺の手の中に入っていった。
自分でも言っている意味が分からないが、本当に入って来たのだ。
いきなり勢いよくだだだだだだだだだだって大量の手が俺の手の中に入った。
もちろん痛くも痒くもない、むしろ力が湧いてくるぐらいだ。
「泰斗殿それは大丈夫なのでござるか」
「さあ、まあ、多分大丈夫なんじゃない」
俺の言葉に俺の手から出てきてグチョブしてくれる手。
「大丈夫そうだな」
「いやいや、泰斗殿の手から手が生えてきてるでござるよ、それのどこが大丈夫でござるか」
「まあまあまあ鉄志、手から手が生えるくらいどうってないでしょ、そんなことよりもさっさとこのダンジョンから帰るぞ」
「いや、どうってなくはないでござるでしょ、まあ、泰斗殿が納得してるのでござるなら、某は何も言わないでござるが。あ、そういえば泰斗殿このダンジョンから出るにしても石島殿はどうするでござるか、某が見た感じ悪魔に操られていたっぽいでござるが、それがいきなり悪魔が消滅し、意識不明のまま暫くは目覚めそうにないでござるよ」
「ああ、確かにそうかもしれないな、悪魔に操られていたか、そう考えるとあのおかしな言動も納得はいくな、まあでも、このまま放っておくなんて出来ないし、念のため俺の闇魔法で拘束して俺の眷属に連れていかせるか」
「確かにそれが一番でござるな、悪魔に操られていたとはいえ、また何をしでかすか分からないでござるし」
「んじゃ、拘束するか、闇魔法・闇触手・拘束」
俺は意識を失っている石島を闇触手でがんじがらめにした。
それもかなり厳重に。何重にも。
「死霊魔法・死霊召喚・デスホース」
デスホースを召喚して背の上に闇触手でがんじがらめの石島を乗せる。
「このカッコいい馬は泰斗殿の眷属でござるか、羨ましいでござる」
「流石、鉄二このデスホースの良さがわかるか」
「そりゃ、もちろんでござるよ、今度某も背に乗らせてほしいでござる」
「お、分かったよ、今度こいつの背に乗せてやるよ、こいつの背中に乗ってダンジョンを駆け巡ると気持ちいぞ」
「おう、それは実に楽しみでござる」
「おい、鉄二に泰斗、いつまで熱く語ってんだ、早く帰ろうぜ」
後ろから金山にそう言われて、確かにそうだと思い、一言。
「すまねえ」
そう言って、俺たちは5人しっかりと生きてダンジョンから脱出した。
――――――――――
ただこの時は誰も気が付いていなかった。死霊の手を悪魔が呼び出した時にダンジョン内の空間が歪み、ダンジョンが一部崩壊していることを、死霊の手が死霊王のためと張り切りダンジョンの核を奪い取っていたことを。
この時は誰も気が付いていなかった、そして、このことにより先生方が一部大変苦労することも。
そう、誰も知らなかったのだ。
次回 先生方の胃に大ダメージがお楽しみに。
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