第181話  ポーカーって有名だけど意外とやったことない人多いよね

 ポーカーはトランプを使ったゲームの中でも非常に有名なものだ。ルールはシンプル。自分に配られた二枚の個人カードと場に出ている共有カードで役を作り、相手と勝負するかどうか決める。


 勝てば賭けたチップが手に入り、負ければ失う。


 つまりこのゲーム、心理戦がメインだ。


 たとえ自分の手札がブタの役なしであったとしても、ブラフで勝ちを取りに行くことができる。


 ポーカーは戦いに似ている。自分の有利不利を隠し、相手の思惑を読み切り、隙を見て確実に斬る。


 ほろ酔いの素人が相手なら負けない。


 初めに配られた五〇〇〇チップを手元に置き、ゲームが始まる。


「スモールブラインドは五〇、ビッグブラインドは一○○で行くぞ」


 ブラインドとは、強制的に賭けられる、まあゲームへの参加料みたいなものだ。一人目が五〇賭けて、二人目は一〇〇賭ける。それ以降の人間は、コール(同額のベット)、レイズ(倍額のベット)、フォールド(降りる)か選べる。


 本当ならもっと細かいルールがあるわけだが、酒を飲みながらやる素人ゲームなんて、これくらい単純な方が分かりやすい。


 俺は今回ビッグブラインドだから、一〇〇を賭けた。


 ディーラーになった男からカードが配られる。ハートのクイーンに、スペードの五。


「コール」

「コール」

「コール」


 三人も同じ一〇〇を賭け、一巡した。ここで俺がレイズすることで、更に金額を上げることもできるが、ここはいいだろう。


「じゃ、行くぞ」


 ディーラーの男が場に出ている三枚の共有カードをめくった。


 クローバーの二。


 スペードの三。


 ハートのジャック。


 現状、俺はブタだ。しかしまだ慌てる段階じゃない。共有カードは残り二枚ある。あの中にクイーンか五のカードがあれば、ワンペアだ。


 ポーカーはでかい役を作って戦うゲームじゃない。小さな役でいかに勝つか。


 ここは強気に行こう。チップを二〇〇に上げる。


「レイズ」

「コール」

「コール」

「フォールド」


 それぞれが戦うことと、降りることを選択した。


 再び場のカードが公開される。


 ダイヤのクイーン。


 よし、これでワンペア。しかも結構強い。


 だがここであからさまなレイズは厳禁。こちらの手札に役があるとバレれば、これ以上掛け金を上げられなくなる。


 俺は少し迷うそぶりを見せてから、手番を回した。


「レイズ」


 すると、隣の男が掛け金を四〇〇まで上げた。


 くくく。愚かよのう。こちらはクイーンだぞ、クイーン。君たちのたかだか数字で勝てると思っているのかね。


 最後の一枚が開かれた後も変わることなく、四〇〇のチップが出揃い、最後の時間が訪れた。


「三のワンペア」


 まずはディーラーが手を公開する。ふむ、弱い弱い。


「俺はクイーンのワンペアだ」


 笑みをこぼさないように、平静を装って手札を公開する。これが本当のポーカーフェイスってね。

 クイーンの絵も心なしかほくそ笑んでいるように見えた。


「お、なかなかいい手じゃん」


 あん?


 最後の一人が、手札を表にした。


 そこには燦然さんぜんと輝くエースのワンペアが。


 なん‥‥だと‥‥。


「俺の勝ちだな」


 絵札よりも一の方が強いってどうなってんだよこのゲーム、バグってんだろ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る