TENET

 知識がなくても楽しめますが、知識があるとより楽しめます。


 ラテン語の回文“SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS(農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする)”に出てくる単語がそれぞれ作中でも登場します。


 エントロピーなんかの科学的知識は『哲学的な何か、あと科学とか』を見ていたんで問題なく受け入れられたんですが、ミスリード的要素も多いので一度目の視聴では理解するのが難しいでしょうね。これそういう作品なんですけど。


 解説ページを視聴前に少しだけ見てみましたが、内容をしっかり把握している人とそうでない人、さらに説明が上手な人とそうでない人で全然書かれている内容が違いました。ただ説明が上手な人の解説でも未視聴で見たら意味がわからないのは同じです。

 ここで解説する気はさらさらないので、どんな解説が良い解説かについて考えます。


 これはタイムリープものだと思ってみると確実に理解が追いつきません。主人公が見ている世界は誰か(セイター・未来の人間=敵)によって逆行(≒改変)された世界であり、主人公もまた逆行によって過去を改変しているため、時間軸が一方通行でなく過去に戻ったりする感じです。意味わかりませんね。


 未来人が世界の終わりを悟ったので、未来を救うために過去を犠牲にしようと企んだ、ってのが一番単純なネタバレだと思います。意味わかりませんね。


 そして過去を犠牲にする方法として、ロシアの核施設を利用しているのでプルトニウムを用いた核兵器を使う……と見せかけて、実は全く核とは無関係な時間逆行装置(アルゴリズムという名称)だったというオチです。プルトニウム241のプルトニウムはミスリードでした。意味わかりませんね。


 最後の作戦はその時間逆行装置を奪還するための作戦だったわけです。無事に装置を起動させずに奪取、分割することに成功したので、未来人が過去を犠牲にしようとしたように、過去に時間逆行装置の残骸を隠そうとした、というのが作戦の最後でした。意味わかりませんね。


 ラストにキャットが狙われたのは、これまでの内容(時間逆行装置の存在)を知る人物を消すためにプリヤが訪れたのです。さらに名無しの男がキャットの危機を知りプリヤを逆に殺して終わり。元々この計画はすべて未来の名無しの男によるものだが、現在の名無しの男は未来の名無しの男に対して反旗を翻した(というか、未来の名無しの男とは違う未来を歩み出した)という感じです。意味わかりませんね。


 途中の絵画がどうこうとか熱いカーチェイスとか船から突き落としたセイターを助けたりしたのも、全ては前フリです。そういう細かい所の「なぜ?」を理解するためにもう一度見るべきですが、前半中盤の前フリ部分を事細かに説明されても、間違いなく理解できません。だってほぼ無意味だもの。


 これは「見てない人に向けた作品の解説」と「見た人に向けた作品の解説」がまるで違うので、その解説がどちらに向けてなされたものかを把握しないと読んだところで意味がないと思います。

 私はインターステラーの監督による時間をテーマにしたSF映画、という触れ込みで興味を持ち、とりあえず見ようと思った次第です。

 監督がどうとかまるで興味なかったですが、監督で見る映画決める人の気持ちが少しわかりました。

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