ヒメアノ〜ル

 もしこの作品を知っている方は「なんでこの作品見ようと思った?」ってくらい私の作風とは似ても似つきません。

 じゃあ何故見たのか。

 ただ人に面白いよって教えてもらったからです。

 せっかくなので普段見ないような作品も見てみようかなと思った次第です。


 あらすじをWikipediaで少しだけ見たので、原作と映画が違うということは理解しています。


・主役の森田は映画だと「普通の人間がいじめをきっかけ」に精神異常者(シリアルキラー)となる


・そのため原作の持つ「社会不適合者の生き方」というテーマは出てこない


・よってエンタメ性重視で作られた作品となっている



 ということは理解した上で見ましたが、かなりエンタメ寄りの面白い内容になっていたと思います。

 見せ方とか、盛り上げ方とか。


 アバンタイトルっていうんですか、プロローグ的な部分が30分という驚異の長さ。

 最初の1/3を使っていかにもな青春モノという雰囲気からエログロの狂気。

 普通の若者の行為とシリアルキラーの行為の描写の対比。

 シリアルキラーとしての行動のリアリティ。

 殺人のための殺人で、非常に合理的な行動を繰り返し、快楽のための殺人と自己防衛的な殺人を切り離して考えています。

 嘘くさくなく、大げさでもなく本当にこんな感じで犯人って逃亡劇を続けるんだろうな、というリアルさがあります。

 主演が元V6の森田剛ですが、ジャニーズとか関係なく彼の演技力に驚かされます。


 映画って中弛みさせないような工夫が一番大変だろうなって感じました。

 長編小説もそうでしょうけど、映画は時間が決まっているため、より明確にストーリーの枠組みがしっかり存在していると感じます。

 SAVE THE CATの法則に載っているような内容の意味が少しわかった気がします。

 映画好きな方は初めから理解できているんですよね。

 もっと早く気付きたかった。



 ネタバレと言うか、Wikipedia読み返したら映画の内容ほぼそのまま載ってるじゃんあれ。良いの?

 個人的に感じたこと。

 最後に森田が車で逃走中、犬と散歩中の老人を避けようとして事故を起こすシーンがありますが、生粋のシリアルキラーであれば老人を殺すことに躊躇しないはず。

 あのシーン、そして昔に戻ったかように記憶の退行を起こすことで、やはり彼は「普通の人間が狂ってしまった」のでしょう。


 いじめは「やった側は忘れるけど、やられた側は忘れない」というお馴染みの考えの真逆を行く展開でした。

 精神の壊れていた森田は岡田(濱田岳)のことは本当に存在すら気付いていなくて、見て見ぬ振りしていた加害者の立場から岡田はそれを最後に謝罪する、という。

 犯人には悲しい過去が、という要素は恐らく原作とは違うんでしょうが、盛り上げる展開としては必要でしょう。


 私は個人の狂気に焦点を当てた作品はそこまで食指が動かないので(ジョーカーみたいなヤツは)好き好んでは見ませんが、こういう作品もある、という感じで楽しめました。

 単に「正義の存在しない作品」はリアル寄り過ぎて好きじゃないのかも。

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