第3話

 サクラは赤髪の男性と一緒に自分の家に向かっていた。


「うーん、今日は友達と用事があるから」


 赤髪の男性は親指を立てながら笑顔を浮かべる。


「大丈夫! すぐ帰るから!」


 サクラは首を傾げながら呟く。


「友達がすでに家に来てるかもしれないけど、マナブさんはそれでもいいですか?」


 マナブと呼ばれた男性は二十五歳前後の姿をしていて、身長約百七十五センチメートル。赤色の髪を伸ばし、眉辺りで前髪を切り揃え、後ろ髪は首まで伸ばしている。目には真紅の瞳を宿していた。そして、黒い衣装で全身を固め、分厚い素材で各所を守っている。


 マナブは硬い笑みを浮かべながら数回程頷いた。


「問題なし! だから家に入れさせて!」


 眉尻を下げながら俯き、言葉を漏らすサクラ。


「うーん……。そこまで言うんだったら仕方ないですね」


 拳を掲げながら喜ぶマナブ。


「よしっ! もう一回、よしっ!」


 サクラは引きつった顔を作る。


「なんで二回? 喜びすぎですよっ」


「サクラちゃんの家に入れるんだよ!? 嬉しいよっ」


 サクラは苦笑しながら家の玄関を開けた。


「うーん……」


 一方、マナツは自分の姿を透明にさせ、家と同化する。


(あっ、サクラが帰ってきたかな!? ステルス! 驚かせちゃうぞー!)


 サクラと一緒に部屋の中に入ってきたマナブを凝視するマナツ。


(んっ、誰? 知り合い?)


 サクラは手を額にかざして家の中を見渡す。


「あっ、まだ友達きてないみたい」


 マナブも無表情で家の中に視線を巡らせる。


「ふーん……そっか」


 マナツは部屋の隅に後ずさった。


(うーん……驚かすのは今じゃないな)


 棚の上の黄色い腕輪を見つめながら微笑むマナブ。


「思ってたより部屋の中片付いてるね」


 サクラは腰に手を当てながら頬を膨らませる。


「むっ、それってどういう意味!?」


 首と一緒に両手を高速で横に振るマナブ。


「いやいやっ、部屋が綺麗だねって意味だよ!」


 サクラは口に手を当てながら硬い笑みを作った。


「うん、知ってる」


 マナブはもう一度部屋の中を見渡し、最後に玄関に視線を向ける。


(サクラの友達はまだ来なさそうだな)


 真剣な眼差しをサクラに向けるマナブ。


「綺麗なのは、部屋だけじゃないんだけどね」


 サクラは笑いながら首を傾げた。


「えっ?」


「イヤだったら、すぐ離れてね」


「んっ?」


 サクラは硬い笑みを作りながら一歩後ろに下がった。

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