第40話 勇者パーティー実力考査開催

「【浮遊魔法レビテーション】」


 余計な魔力を使ってハーフオークを浮遊させると、巨大化した魔盾亀の背に乗せる。


「タマ、護送馬車まで運ばせて」


「はいなの」


 ハーフオークを背に乗せた魔盾亀がて護送馬車まで移動する。


「【浮遊魔法レビテーション】」


 そしてまたハーフオークを浮かせて護送馬車の檻の中に入れる。

それが2回分。

全て【浮遊魔法レビテーション】で運ばないのは、お約束である魔力節約のせいだ。


 消費した魔力をクレアから吸いまくる。

効率を考慮してキスを使うが、その度にクレアがエロイ声を出す。

御者にドン引きされているのは解っているが、魔力を消費しすぎたからには仕方ないことなのだ。


「【物質強化ハード


 檻の強度を上げておく。

ハーフオークが途中で目を覚まして暴れると困る。

対人用の護送車なので、魔物が暴れたら壊れないとは限らないからな。


「よし、王都の第一闘技場まで運んでくれ」


 第一闘技場ならば、見世物で魔物と剣闘士を戦わせている。

魔物を収める施設があるのだ。

そこが勇者パーティー実力考査の会場に指定されたのは必然だろう。


 ◇


 魔物の確保が終わると、2つの勇者候補パーティーが王城に呼ばれた。

彼らには勇者パーティー実力考査の開催が決まると同時に王家から王都での待機が命じられていた。

アランのパーティーは伝令によりダンジョン内から呼び戻され、ジェイコブのパーティーはそのまま屋敷での待機が命じられた。

その2パーティーがいま、謁見の間に勢揃いしていた。

俺のパーティーも魔物の制御で関わるので末席に呼ばれている。


 両脇にはお偉いさんや貴族の面々が並ぶ。

エイベル公爵や教会の教皇にアレスティン侯爵もいる。


 ジェイコブが凄い目で俺の事を睨んで来る。

おまえの兄弟が死んだのは自業自得だ。

俺を恨むのはお門違いだ。

そもそも王様の御前だ。

不敬だぞ、不敬。


 見かねた王様が口を開く。

どうやら王様は早急に問題を解決したいらしい。

ジェイコブに説教するよりも、事を進めるのを選んだようだ。


「勇者候補パーティーが2つでは対外的にも覚えが悪い。

そろそろ正式な勇者パーティーを決めたいと思う。

そこで各々のパーティーに魔物を倒してもらい、実力を示してらうことにした。

勇者パーティー実力考査の開催だ」


「「「「おおっ」」」」


 この計画の蚊帳の外だった貴族たちから驚きの声が起きる。

いよいよか、なんて声も聞こえる。

そのざわめきを王様が手で制する。


「魔物の準備は整った。

幸いにも双子の魔物で実力も同じだそうだ。

どちらが優秀か、勇者に相応しいかを見せてもらおう」


 そして大勢が馬車でゾロゾロと第一闘技場へと向かった。

俺はまた公爵家の予備の馬車だ。


 第一闘技場は所謂コロッセオという建造物だ。

下級貴族たちは挙って観客席に座った。

王族や上位貴族は貴賓席で観覧だ。


 俺は裏方としてハーフオークが閉じ込められている檻へと向かう。

クレア、シーラ、タマも一緒だ。

万が一の時のための魔力タンク要員だからな。


「【魔物使役魔法テイム】」


 最初の1頭にテイムをかける。

一度通ったテイムなので、魔力も然程使わずに簡単に再テイム出来た。

安全を確認しつつ、ハーフオークを檻から出す。

完全に俺の制御下にある。

そして闘技場の中心にせり上がるエレベーター上の檻にハーフオークを乗せる。

今度は魔物本人に歩かせている。

操れるならば、それが一番魔力を食わないのだ。


「俺が止めるまで、好きに暴れろ」


 俺が選択したのは魔物自身の戦闘能力を発揮させること。

俺がいちいち制御することはしない。


『最初は勇者候補アラン・ミルド・エイベル様のパーティーです』


 場内アナウンスの声が拡声魔法の魔導具により齎される。

アランのパーティーならば、素のハーフオークでも危なげもなく倒せるだろう。

俺はもしもの時に魔物を制御するために闘技場の中が見える位置に移動する。


 そして、闘技場中央の穴からハーフオークの乗ったエレベーターがせり出して来た。


『勇者パーティー実力考査、始め!』


 檻の扉が開き、ハーフオークが出て来る。

アランパーティーとハーフオークの戦いが始まった。

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