第39話 魔物調達

 さて、王様に魔物調達を頼まれてしまったが、そこそこ強そうに見えて、勇者パーティーの実力を発揮させることが出来て、彼らを殺さない程度に危険でない魔物とは?

アランのパーティーならばどの程度か想像がつくが、ジェイコブのパーティーだと3割減ぐらいじゃないと危ないか?

パーティーの誰も殺さないとなると、弱い魔物で安全マージンを取るか、強い魔物を制御して抑えるかのどちらかだな。

俺の魔物使役魔法でテイムして、そのまま檻にでも入れて解放しておけば、魔力を常時消費しないで済む。

一度テイムすればテイム癖がついて、次からは楽にテイム出来るからな。

魔力が回復するならば、いくらでもテイムしっぱなしに出来るのだが、今はこれが精一杯だ。


「確か、使えるモノは使って良いと言って、これをくれたんだよな?」


 俺は、王家の紋章入り守護小物アミュレットをしげしげと見つめる。

ちなみに、このモノには物と者が含まれている。

これを見せて調達しろってことだろう。


 俺はある物を求めて衛兵隊の本部へと公爵家の馬車で向かう。

歩いて登城するわけにはいかないから毎度の如く借りていたのだ。

俺の家ではまだ馬車の準備が出来ていないからな。


「どの様なご用件でしょうか?」


 入口では、突然の俺の訪問に門番が訝し気な顔を見せる。

ぞんざいに扱われないのは公爵家の馬車とマダム製の礼服のおかげだ。


「犯罪人護送用の大型馬車を2台借りたい。

上に話を通してくれ」


「そのような話は、突然来られましても……」


 事前手続きが必要だと、門番が難色を示す。

権威に流されない、素晴らしい門番だ。

だが、この権威には流された方が良い。


「王家の勅命である」


 俺は王家の紋章入り守護小物アミュレットを掲げる。


「は、ははあ」


 王家の紋章を目にして平伏す門番。

後ろの詰め所では上司が伝令を走らせる。

そして、あれよあれよという間に、犯罪人護送用の馬車が2台、御者込みで準備された。

俺が望んだ鉄格子の檻を積んだ頑丈な奴だ。

このサイズが一番大きく頑丈だそうで、馬4頭で引いている。


 護衛の衛兵も準備してくれたが、それは断る。

いろいろ見せたくない部分もあるからな。



 公爵家の馬車でシュタイナー伯爵邸に向かう。

犯罪人護送用の馬車2台も一緒だ。

そこで着替えると、俺とタマ、クレアとシーラで走鳥に乗る。

一番扱いが楽だというので、移動用に購入しておいたのだ。


「オーガを生け捕りにする。

行先は、鬼が岩だ」


「生け捕りってどうするのよ!」


「テイムだな。

生きが良くないと困る」


「それって……」


 何か言おうとして顔を赤らめるクレア。

何か知らんが、文句が無いならば良い。


 ◇


 オーガに決めた理由は、その強さと大きさ、見つけ易さ、そしてテイムの通りの良さにある。

だが、俺たちの前には変な個体が現れた。


「変なのが来たな」


 オーガを狙っていたのだが、変り種のオークが現れた。

オークの性欲の強さのおかげか、稀にオークとオーガの混血が生まれることがあるのだ。

外見的にはオークの特徴が強いが、筋骨隆々なところと額の角にオーガの特徴が出ている。

実力的にもオーガの代役として妥当だろう。

多産傾向のオークの影響か、同腹だろうそっくりな個体が2体いる。


「これは有りだな」


 勇者パーティー実力考査となると、同じ実力の個体を宛がわないと、2つのパーティーの実力差を示し辛い。

オーガの場合、実力の近い個体を2体揃えるのはなかなかに骨が折れる。

個体差が激しいため、偏ってしまうからだ。

だが、このハーフオークは、双子故に全く同じ実力のように見える。

むしろ好都合だった。


「タマ、魔盾亀で防御。

シーラ、テイムが入ったらハーフオークを眠らせろ」


「はいですの」

「わかりました」


「その者、我の元に下り、永遠の忠誠を誓え【魔物使役魔法テイム】」


 テイムをかけた瞬間、嫌な魔力の引っ掛かりを感じた。


「なんだ、こいつら?」


 2体同時がまずかったか。

俺の中からごっそり魔力が抜ける。

事前に吸って満タンだったのにだ。

俺は慌ててクレアを引き寄せるとキスをした。


「あん♡」


 既に呪文は唱えた後だから、俺の口を塞いでも問題ない。

粘膜接触でクレアから魔力を吸う。

今回の睡眠魔法はシーラの仕事だ。

次の魔法は俺が唱える必要が無い。

そして、クレアは俺の嫁。

尻穴はまずいが、キスならば外聞を気にする必要もない。


 よし、テイムが通った。


「シーラ!」


「はい、【睡眠魔法スリープ】!」


 こうして変な個体だがハーフオークを2体捕まえた。

しまった、自分で檻に乗せてから眠らせれば良かった。

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