第38話 三男の足を引っ張る2
「ちょっと聞きたいんだけど?」
「ちょっと待った!
姫の部屋に入れてもらっておいて、話しかけるのは護衛騎士の女ってどういうことよ!」
立会人として呼んだ護衛騎士(女性)に話しかける俺に激怒するサラーナ姫。
「いや、どうせ俺の知りたいことをサラーナは知らないと思って」
「最初から
話が進まない。
仕方ない、とりあえずサラーナにも訊くか。
「ならば、サラーナに訊くよ」
「なんでも訊ねなさいな」
サラーナが勝ち誇り無い胸を張る。
「何残念な人を見る目で見てるのよ!」
ヤバい、気付かれた。
ここはさっさと本題に入ろう。
「勇者パーティーが2つ作られたのは知っているか?」
「クレアの兄、アランのパーティーと、ジェンキンスとかいう奴のパーティーね」
サラーナ、それはジェイコブだ。
その程度の知識だという試金石になったな。
「姫様、ジェイコブです」
護衛騎士が耳打ちする。
「そうそうジェイコブだったわね。
興味ない人の名前は覚えにくくて。てへ」
サラーナが興味を示さないというのは重要な情報だ。
ジェイコブがそれだけ無能だと認識されたという意味だ。
サラーナはこれで有能な者にしか興味を持たないのだ。
ある意味目利きと言えよう。
俺も興味を示されなくなった時があったな。(遠い目)
話を戻して。
「そのジェイコブの勇者としての活動や能力を知りたくてさ」
俺がそう訊ねると、サラーナは興味を失ったのか、護衛騎士に話を振った。
「マリーネ、知ってる?」
「はい、姫様」
やっとスタートラインに立った。
だが、これで王家に近い所からの見解が得られるぞ。
「ジェイコブのパーティーは6人編成で、盾の聖騎士が2人、格闘技と魔法の僧兵が2人、そしてジェイコブと聖女で構成されています」
「それってジェイコブ必要か?」
「要りませんね」
つまり他の4人でジェイコブと聖女をお守りしながら進んで行くパーティじゃないのか?
しかもアランパーティーと違って教会からのテコ入れが酷いぞ。
「それで訓練は進んでいるのか?」
「ジェイコブが嫌がっているそうで、休みが続いているとか。
聖女は思うようにレベルアップ出来なくて焦っているようです」
「ならば、聖女を引き離せないかな?」
「他の4人のメンバーが教会からのお目付け役ですから無理でしょうね」
「なんで教会はアレスティン侯爵家に肩入れする?」
「そこは知りかねます」
「そんなパーティー解散させれば良いでしょ」
俺たちの会話を黙って聞いていたサラーナが口を挟んだ。
そんな簡単に行くわけが……待て、サラーナは王族だ。
サラーナの目の前でジェイコブの実力を露見させて、駄目出しさせるというのは有りかも。
「そうだな。
アランのパーティーを含めて、王族に一度見てもらった方が良いかもな。
魔物でも捕まえて来て、それぞれのパーティーに倒させようか。
勇者パーティー実力考査だな」
「面白そうね。
勇者パーティー実力考査、お父様に言っとくわ」
上手くサラーナを乗せたぞ。
これでサラーナのお願いに弱い王様も勇者パーティー実力考査開催を認めることだろう。
そこで無様を晒せば、ジェイコブも終わりだろう。
そして、俺の思惑通り、王家の要請による2つの勇者パーティーの実力考査が行われることとなった。
◇
「シュタイナー伯、魔物の調達は任せるぞ」
なぜか謁見の間に呼ばれた俺は、魔物の調達を命じられてしまった。
解せぬ。
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