第34話 面倒事は勝手にやって来る

 勇者パーティー(アラン組)の休暇が終わると、俺たちも一緒にダンジョンに入ることになった。

彼らとの同行となると困ったことが2つ。

魔力ドレインの効率と、シーラとタマの存在だ。


 同行となると、粘膜接触による魔力ドレインが使えない。

それは魔力の吸収効率と吸収時間に影響する。

かと言って義兄の前でクレアの尻穴に指は入れられない。

キスもどうかと思う。

これも影から支援するだけならばいくらでも出来たものを。


 そして、シーラとタマの存在。

冒険者ならば気にもしない奴隷の存在が、貴族ともなると気になるものだ。

特にアキュラス家の令嬢ならば。


「ちょっと、なんで奴隷がいるのよ!

不快だわ!下がらせて!」


 早速ミレーヌが噛みついて来た。


「無理。

俺のパーティーメンバーだ。

慣れろ」


「子供の奴隷もいるじゃない!

なんて下賤な振る舞いを!」


「タマは魔盾亀のテイマーだ。

おまえより強いぞ」


「ムキーーッ!

ならば、ここで白黒つけてあげるわ!」


 面倒なやつだ。


「子供に勝負を挑むなんて、それでも大人か。

こんなに可愛いタマを害そうなんて、酷い女だな」


「ムキーーッ!」


「頼むからトラブルを起こさないでくれ。

シュタイナー伯に同行を頼んだのは私だ。

文句があるなら私に言ってくれ」


 アランが見かねて仲裁に入った。

ほんと、魔術師を名乗るやつらは面倒だ。


「それが納得いかない。

魔導士になんて指導してもらう必要はないわ」


「俺も魔術師派に魔法の指導をする気はない」


「指導する魔力も無いものねw」


「おい!」


 ミレーヌが言ってはいけないことを嘲笑を込めて言う。

アランが止めたが、もう遅かった。

これは実力差を教えてやる必要がある。


「魔力が無くても戦えることを教えてやろう。

どうせ魔術師は魔力が無くなったら役立たずだろうからな」


 こうして俺とミレーヌの模擬戦が始まった。



 ミレーヌが杖に魔力を込めて攻撃魔法の詠唱を始める。

模擬戦なのに中級魔法を詠唱しようとしている。


「おいおい、その魔法を使ったら怪我をするぞ」


「あら、普通の魔術師ならば防壁で守れるわよw」


 めんどくせー。

こっちは、そんな魔力の無駄遣いはしないんだよ。


「くらえ! ファイアラン「キャンセル」は?」


 ミレーヌが練り上げた攻撃魔法を、俺は発動の瞬間に乗っ取ってキャンセルしてやった。


「ファイアラン「キャンセル」」

「ファイアラン「キャンセル」」

「ファイアラン「キャンセル」」

「ファイアラン「キャンセル」」

「ファイアラン「キャンセル」」


「ムキーーーッ! メガフレ「キャンセル!」」


 おいおい、こいつ上級範囲魔法のメガフレアを使おうとしたぞ?

いくらなんでも殺傷力が高すぎる。

勇者パ-ティーのメンバーまで巻き込んで殺す気か?


 こいつはお仕置きが必要だな。


 俺は縮地でミレーヌの懐に一瞬で入ると腹にパンチを……いや、気絶させてはお仕置きにならないか。


「【魔力ドレイン】」


 そのまま腹に手を当てて魔力を吸った。

手加減無しだ。


 ミレーヌは度重なる中級魔法使用と上級魔法の使用で魔力残量が激減していた。

その残りをごっそり吸い取ってやる。


「あがっ!」


 ミレーヌは魔力欠乏になって昏倒した。

お仕置き終了。


「シュタイナー伯、その体技、一流の剣士以上ではないですか!」


 しまった、アランが俺の剣の腕に気付いてしまう!

まさか剣の腕が、俺>クレア>アランだなんて知られたら困ったことになる。

剣聖を目指すアランには、彼よりも腕の立つ魔導士など、存在してはならないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る