第20話 襲撃のもっと黒幕
今日の宿はエルズバーグの屋敷に世話になった。
そこは思った以上の豪邸だった。
エルズバーグの商会は王都にも進出している大店だということなので、これでも小さい方らしい。
大金持ち確定だ。
なぜこのソルビー子爵領の領都ソレイスに本店があるのかというと、ここがエルズバーグが生まれ育ち、商売を始めた地だったからだ。
偶然とはいえ、良い人物と知己になれたものだ。
夕食時間前にはエルズバーグも屋敷に戻っていた。
そして俺たちは命の恩人としてエルズバーグの家族と豪華な食事を囲んだ。
その場には奴隷であると知っているにも拘らず、タマも同席させてくれた。
俺がタマを大事に扱っていることを承知してのことだろう。
クレアは……嫁ポジション扱いだった。解せぬ。
そんな感じで談笑しつつ食事が終わる。
「少しよろしいですかな?」
エルズバーグが俺に寄って来て囁く。
そして、今回の事件の顛末の報告を受ける事になった。
「お嬢様方は、大浴場に御案内してさしあげろ」
どうやら女子供には聞かせられない内容のようだ。
俺はエルズバーグと共に彼の執務室に向かった。
「何から話すべきか……。
事の始まりは大番頭のグスタフがとある大貴族との取引を主張し、私と意見の齟齬が発生したことでした」
とある大貴族だって?
このあたりの話だと隣領のアレスティン侯爵家のことが頭に過るぞ。
「私は反対しました。
あまり評判が良くなく、無茶難題を押し付けられ、それが達成されないと違約金を要求する。
御当主様は王都にいて、多少は分別のあるお方なのですが、息子たちは酷いもので、その息子を溺愛するあまり少々常軌を逸した行動もとるようでして……」
やはり、アレスティン侯爵家のことに思えるな。
あのクソ野郎も酷かったからな。
そして、その後の侯爵の行動も。
「グスタフは密かにその大貴族と通じていたようです。
それが乗っ取り事件へと発展したようです。
グスタフはその大貴族の子弟に唆されて、その計画に乗ってしまったようです」
「訊いても良いか?
それはアレスティン侯爵家のことか?」
「ど、どうしてそれを!?」
エルズバーグが動転したのは、貴族家の名前は口に出していなかったからだろう。
それを当てられたものだから、慌てているというところだろう。
「俺も被害者だからな」
「あの魔法の腕、名前、まさか!
魔力回復量0の魔導士!」
俺も有名人になったものだ。
悪名だがな。
「なるほど、勇者パーティーにはアレスティン侯爵家の長男が参加してましたな。
そして勇者を庇って亡くなったとか」
はあ? あのバカが勇者を庇うわけないだろ。
あいつのせいで……。
「やはり、そんなデマが広がっているのか。
あいつのせいで勇者が死に、俺も魔力を失ったというのに」
「やはりそうだったのですか!
あの者の素行から勇者を盾にしても守ることはないと思っておりました」
隣領のこと、その悪名はエルズバーグも知っていたようだ。
どうやら俺とエルズバーグは気が合うみたいだ。
共通の敵を認識したのだからかもな。
「て、敵襲!」
下の階から大声が聞こえた。
「敵襲だと?
この屋敷には30人の警備がいるのにか!?」
まさかと思うが……。
「【
そこには悪意を持って攻撃して来る反応、赤い光点が100ぐらい灯っていた。
それがエルズバーグ邸を囲み、正門を突破して雪崩れ込んで来ているところだった。
「ああ、これは軍隊規模だな。
総勢100人は居るぞ」
「そんな……我が家の警備は30人しかいませんぞ」
この規模だと侯爵家だろう。
襲撃の裏に侯爵家がいたことがバレたことで、お咎めが発生する前に無かったことにでもしようって魂胆だろうな。
これは俺がやるしかないな。
「【
俺は致死レベルの魔法を放った。
これでもう魔力はカスカスだ。
魔力が吸えない。
クレアとタマが離れていたのが悔やまれるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。