第13話 テント泊

 それにしてもタマのやつ、なんでこんなに保護欲を駆り立てられるのだろう?

子猫か? 子猫的可愛さなのか?

言動も13歳にしては幼い気がするが、魔力過剰症の影響なのか?

まあ、可愛い妹が出来たようで、これはこれで良いか。


「クレア、結界を張り直す。魔力を吸うぞ」


「えー、タマちゃんの治療が先だったのでは?」


「襲撃があったから仕方ないんだよ!

それともこのまま徹夜で次の野営地まで進むか?

タマは歩かせられないからおまえが背負えよ」


 だいたい、クレアには1日数回魔力を吸うための金を渡しているんだぞ?

タマの治療のおかげでクレアから吸う量が減ったのはたまたまだからな?

タマから吸う量が減れば、クレアから満タンで吸うに決まってるだろうが。


「それならば、仕方ないなぁ」


 なんで、特別に吸わしてやってる感を出すんだよ。

ほんと、残念なやつだな。

まあ、タマを守ってくれたのは感謝している。

クレア自身が契約打ち切りだと言い出すまでは、魔力タンク役を継続してもらうぞ。


 魔盾亀から吸った分とクレアから吸った魔力で結界を再構築する。

あの高価な結界破りの魔導具がこちらの手にある限り、次の襲撃までには時間がかかるだろう。

この場で野営を継続しても問題ないはずだ。

テントを畳んで、野営地を移動して、テントを張り直す、そんな手間をかけるよりも皆が疲れている今、この場で休めるならばそうするべきだろう。

地面の血だまりも【クリーン】で綺麗にしたしな。


 細々とした作業を終えテントに入ると、タマとクレアが寝ていた。

おかしい。このテントは俺の2人用テントのはずだ。

タマは良いが、なんでクレアが寝ている?

クレアには自前のテントを買うか、外で寝ろと言ってあったはずだ。


「おい、起きろ。

おまえのテントはここではない」


 駄目だ。クレアは起きる気配がない。

こうなったら仕方がない。

キツキツだが3人で寝るしかない。

後でキャーとか悲鳴を上げられてもクレアのせいなんだからな。


 さすがに俺のテントなのに俺が端っこで寝るのは我慢ならん。

俺はタマとクレアの間に潜り込んだ。

タマは簡単に転がり、クレアはテントの端に向かって寝返りをうった。


「よし、俺の睡眠空間は確保された」


 俺は毛布を被るとそのまま寝ることにした。



ゴロン、ガシッ!


 俺は窮屈さと重さを身体に感じて目が覚めた。

そして気付いた。

クレアが俺に抱き枕のように抱き着いていることに。

それは腕と脚でホールドするという完全な抱き着きだった。


「おい、起きろ」


 テントの中は狭いので、俺は身動き出来なくなっていた。

その間もクレアの胸がぎゅうぎゅうと俺の右腕を圧迫している。

いや、挟まれている?

クレアはどうやら薄い寝着を着ているようだ。


「こいつ、起きやしない」


 俺はこの残念さんに制裁を加えることにした。

無防備な格好で勝手に男のテントで寝るクレアが悪いのだよ。


 俺はタマ側でフリーだった左手をクレアに伸ばす。

そしてその胸に左手を……。


「【魔力ドレイン】!」


 思いっきり魔力を吸ってやった。

1度はクレアから吸った魔力だが、クリーンを使って結界を張って、半分以下に減っていたのだ。


「これでクレアのやつ、魔力欠乏で頭痛に見舞われるぞ」


 明日の朝が楽しみだ。

俺は満足して眠りについた。クレアの拘束がキツイがなんとか眠ることが出来て良かった。


 翌日。


「おはよう、ケイン。

わたし、なんだか今日はすこぶる体調が良いんだぁ」


 げせぬ。なぜクレアは絶好調で顔色もツヤツヤなんだ?

あれほど魔力を吸ってやったのに。


「クレア、テントは?」


「待ち運びに邪魔なので、持ってないですよ?

1つあれば充分だったじゃないですか」


 もしかしてこいつ、思った以上に大物なのかもしれない。

いや、無いわー。

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