第3話 お仕事内容

『魔力を使うお仕事。

同行者の指示に従って魔力を供給してください。

付随して素材の運搬が発生します。

基本野営。野営道具は持参してください。

宿がある場合は宿泊します。宿泊費支給。

期間未定。日給制銀貨1枚』


「これって、魔導具に魔力を供給する仕事だって思うじゃない!

日給銀貨1枚って割が良いからおかしいとは思ってたけどね!」


 私はゴネていた。

だって、仕事の内容がおかしいんだもん。


「魔力タンクになって魔力を供給する仕事だろ?

仕事内容は間違ってないだろ。

間違ってるのはおまえの解釈の方だ」


「うーー」


 悔しいけど、受けてしまったからには従うしかない。

ここで帰ってしまっては依頼失敗となってしまうから。


「そろそろ名乗ってくれないか?

いつまでもおまえ・・・じゃ困る」


 そういえば私はまだ名乗ってもいなかったわね。

先手をとられた。完全に彼のペースだ。


「クレアよ。

剣士クレア」


剣士・・クレアね。了解」


 なんかバカにされてる気がする。

いちいち腹が立つ人だわー。


「じゃあ、俺が受けた依頼内容を説明しよう。

ただの魔力供給係・・・・・でも、何の依頼に連れて行かれるかは気になるだろうし、それなりに自分の身は自分で守ってもらわないとならないからな。

その覚悟をしてもらうためにも俺が受けた依頼内容を教えておく」


 ケインから発する真剣な空気に私も気が引き締まり身構える。

これは茶化してはいけない空気だ。


「依頼内容は、ドラゴンの素材採取だ」


「は?」


 私は耳を疑った。

私の冒険者ランクでは関わっても良い依頼内容じゃない。

それにさっき、この人は自分の身は自分で守れって言ってなかった?


「ん? ドラゴンの素材採取だからね?」


 いや、そういうことじゃないんだってば!


「そんな依頼になんで私が付いて行かなければならないのよ!」


「そういう契約だから?」


「知ってたら契約してないんだからね!」


 やられた。ただの魔力を供給する仕事が死地に向かうものだったなんて。

しかも、この人、魔力が回復しないのよね?

それでドラゴンと戦うの?

ドレインした魔力が尽きたら終わりなんでしょ?


「大丈夫、君は魔力を吸われるだけで戦わなくて良いから」


「吸う暇があんのかい!」


 だめだこいつ。

自分が魔力回復量0なのを気にしてない。

魔力回復薬も効かないという話なのに、私の魔力だけでどうにかするつもりなの?


「いや、戦闘中に吸えるわけないじゃん。

吸うのは戦闘前だな」


 いやいや、それでドラゴンに勝てるとでも?


「だいたい、ドラゴンが私にロックオンしたらどうするつもりなのよ!?」


「あー、終わりかな?」


「簡単に終わり言うな!

うわーん、なんでこんな依頼受けちゃったんだろう」


「大丈夫だ。

ドラゴン如きは俺の敵ではない」


 何その自信。

本気で言っているの?


「話を続けるぞ。

君には魔力タンクの他に素材の運搬もしてもらう。

まあ、マジックバッグだから重さは軽減されるんだけどね」


「そんな依頼内容も確かにあったわね。

マジックバッグがあるならば助かるわ」


 マジックバッグならばどうにかなると思う。

そこまでは鬼じゃなくて助かった。


「ドラゴンの生息地までの旅は長い。

その間に発生する諸々の事情により魔力を吸う可能性がある。

そこは依頼内容のうちと思ってくれ」


「つまり、拘束期間が長い?」


「その分、期間上限なしの日給制になっているはずだ。

期間が長引けば、俺の懐が痛むだけだ。

旅の間、基本は野営だが、可能な場合は宿に泊まる。

その費用も俺持ちだから、魔力ぐらい好きに吸わせろ」


「わかったわよ」


 まさかドラゴンの素材採取に付き合わされるなんて。

でも、剣聖になるにはドラゴンぐらいは倒せるようにならないとだめなのよね。

これはドラゴンスレイヤーになるチャンスかもしれないわ。

ドラゴンスレイヤーになれば実家も認めざるを得ない。

貴族家当主は無理でも、騎士団長ぐらいならばなれるはず。


「くれぐれも、ドラゴンと戦おうとは思うなよ?

俺は助けないからな?」


 ケインに見透かされた?

でも、チャンスは掴みに行くものよね?

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