小悪魔から僅か2秒で天使に切り替わる青鳥さん!

ハッピーサンタ

青鳥さんと真冬の飲み物


 同じアパートに住むクラスメイトの青鳥さんは──、


「あれ、青鳥あおとりさん何処に行っちゃったんだろう?」


『ピタッ!』


「ふわぁぁぁぁぁぁぁ?!」


「ぷっ、ふふ。ジュースの入ったペットボトルを首にくっつけただけで、ここまでリアクションをとってくれるとは……'`,、('∀`) '`,、やっぱり、草野くさのくんいじるのサイコーですね」


「もう、やめてよ!」


 とってもイタズラ好きの小悪魔さんだ。


 だけど──、


「そんなにぷんすこしないで下さいよ~。草野くんの大好きなカルピズサイダーを、下の自販機で買ってきたのですから!ふふふ。意地悪しちゃった代わりに、これどうぞ♡」


「えっ、僕にくれるの!」


「ほんの少しだけど、この前のお礼ですから。これは私から草野くんへののご褒美です」


 ──僅か2秒で、すぐに甘々天使へと変貌する。


 ◆


「やっぱり、ちょろいです。草野くん」


「……だ、だって、カルピズサイダーは世界一の飲み物だもん」


「でも今、マフラーに手袋が欠かせない二月の真冬、真っ只中ですよ~」


「むっ、じゃあそんなときに背後からいきなり冷たいやつピタッとしてこないでよヽ(`Д´)ノプンプン」


「はいはい。それはごめんなさいですね♡」


「もぉ、ハート出して誤魔化さないで!」


 こんな会話を朝からしながら、二人で高校へと向かう。


 それにしても、青鳥さんはやっぱり綺麗でめちゃめちゃ可愛いなぁ~。


 制服の上に着ている校則に違反しないくらいのお洒落なコートはもちろん、手袋やマフラーも含めて身に付けているもの全部、青鳥さんに良く似合っている。

 そのため、真冬の格好は露出が夏に比べて少ないが、艶やかな白い肌が隠しきれていない首もとや顔といった部分を、降ってくる白い雪がとても映えさせていた。

 また、黒髪ロングはポニーテールにされ、今も彼女の頭上をぽわんぽわんと揺れている。


 まさに、絶世の美少女!


 そんなことをずっと地の文で言ってしまっていたせいか、僕は青鳥さんの横顔をしばらくの間、眺めてしまっていたらしい。


「そんなに私を見詰めてどうしたんですか?もうこれ以上、カルピズサイダーは出てきませんよ。ふふっ」


 青鳥さんに、カルピズサイダーネタでいじられる。


 ちょっと、いじられ過ぎて悔しい。まぁ、いつものことなんだけど。

 でも、かと言って流石に、このまま小悪魔な青鳥さんにずっとやられっぱなしのわけにもいかない。

 よぉ~し。今日という今日は、いじり返してやる。

 僕の先程、地の文で言ってたことをそのまま使おう。本音だし。


「別にただ青鳥さんが普通に清楚系美少女だったから、その……見いっちゃっただけだし」


 よしっ、これでどうだ!ちょっと僕も言ってる途中で恥ずかしくなっちゃったけど……。


「……」


 あれ……。もしかして、これって思ったより効果出ちゃってるパターンなのか?!


 現在、青鳥さんはマフラーで顔を隠して押し黙ってしまっている。

 良く眼を凝らして見ると、ひょっこり出てる耳は赤く染まっている。

 これは寒さ故のことなのか、恥ずかしさ故のことなのかはわからないが。


 僕は青鳥さんのことだから、てっきり軽くあしらってくるとしか思っていなかったけど。

 勝ったな今日は。初めて青鳥さんに!!……


「……」


「……」


(三分経過)


「……」


「……」


 ……ヤバい!今気付いたけど、めっちゃ気まずい空気になってるじゃん!!

 どうしよぉぉぉ!!とにかく、学校に着いちゃう前になんとかしなくては。


 ……あっ、そうだ!こうすればきっと、この気まずい空気も吹っ飛ぶぞ!


「青鳥さん。僕の飲み掛けでよかったら、カルピズサイダー飲んで良いよ。これで寒さも恥ずかしさもなにもかもが吹っ飛んじゃうから!」


 僕は青鳥さんに自分の持っていたペットボトルを差し出す。

 うむ。困った時は、これさえ飲めばなんとかなる。僕はこれを飲んで今日までの日々を幾度となく乗り越えてきた。


「……」


 あれ……?口付けてくれない。どうしてだ……。

 ハッ!今気付いた……これって、間接キスじゃん!

 もっと気まずくさせちゃったじゃん!僕のバカァ~。

 とにかく、これはなかったことにしよう。

 そう思い立って、青鳥さんの前に差し出していたペットボトルをゆっくり、自分の方へと戻そうとしたその時だった──。


 ──青鳥さんは僕が引こうとする手を捕まえて、こう言ったのだった。


「今、手袋してるので、良かったらキャップを開けてくれませんか?」


「……う、うん」


 僕はペットボトルのキャップを開けると、手袋をした青鳥さんへと手渡した。

 すると、彼女は二、三口ゴクゴクと、遠慮がちに少しだけ飲むと、僕の方へとペットボトルを返した。


「……ありがとうございます」


「いえ、こちらこそ……」


 青鳥さんのちょっぴり恥ずかしそうな表情と声につられて、僕もまた恥ずかしくなり、小さくひょこっと礼をした。

 そんな僕の表情を彼女は確認すると、いつもの小悪魔な感じで微笑んで、耳元でこう囁いた。


「間接キスしちゃったね♡」


「はぅ~」


 僕は強烈な恥ずかしさにより、その場で蕩けてしまった。


 ◆


「ふふふ。やっぱり、草野くんをいじり倒すのは、私の日課ですね(・ωく)」


「ま、参りました。僕の負けでございます……」


 くそぉ~してやられた。まさか、本当に間接キスされてしまうとは……!まぁ、原因を作ってしまったのは完全に僕なんだけど。


 そんな感じで感傷に浸っていると、青鳥さんは僕の正面に立って、今度は彼女が僕をじっと見詰めてきた。


「ど、どうしたの、青鳥さん?」


「草野くんはすぐに私にドキッとされられちゃいますね。クックック(小悪魔的笑い)……」


「……(二秒間フリーズ)」


「……でも、今日は私もドキッとしちゃったゾ♡(天使ハート)」


 そう言うと、青鳥さんは自分の口元に手袋をした人差し指をあてて、また、いつもの温かくて優しい声で微笑んだ。



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