昔話

第21話 危ない少年

ある夏の日


私たちは家のそばを通る

線路の近くに見つけた抜け道の、

電車のよく見える高い垣根に座った。


『こんなとこ知ってたのー、』


そう尋ねる私の肩をそっと抱いて


「トモコはドジだから、ほら、あぶねーからこうしてような。」


ゆうは、そうやって笑った。

ゆうは、少し危ない人だ。

別にヤンチャすぎるとか、どこかの暴走族と

繋がりがあるとか、変な薬やってるとか、

犯罪してるとか…じゃない。


いつ消えてもおかしくないような、

不思議なオーラがあるんだ。儚い?

この頃は、よく分かってなかったけど。

今は、わかる。

ゆうの、人生に執着していない感じ。


なんてゆーか、俺なんてどうでもいいと、

半分投げやりな一方で、半分はとても丁寧で、

その空気でここにある全てを包み込むような、

そんな、危ない人間だ。


『ゆうもさー、落ちたら危ないよ。』

「俺はドジじゃねーから、落ちないし、

落ちてもきっと、後悔しねえよ。」


あー、前言撤回。。

ゆうは、人生に執着がないわけじゃない。


その時を一生懸命に生きる、

綺麗で儚い、そんな少年だった。

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