第20話 うまく出てこない言葉

トモコさんトモコさん!!

遠くから聞こえる声とガシガシと揺さぶられる

体の動きで、いやでも目が覚める。


目を開ければそこには、山田くんの姿。

あー、昨日泊まっていったんだっけ。。


「また、、泣いてる。」

『へ、?』


私の唇の上に溜まった涙を掬って、

また怖い夢?って聞いてくる。

私、彼の前で何度かこんなふうに

泣いているんだろうか。


『そうちょっと、、懐かしい夢。

ごめん、なんでもないから。』


スタスタと洗面まで行って、顔を流す。

確かに、今日はいつもより泣いたみたいだ。


「トモコさん、最近おかしいよ。」

『えーいつも通りじゃない?』


ごまかすみたいにそう言えば、ベッドに座って

ブンブンと横に頭を振る山田くんが、

ひっそりと鏡の端に映る。


「なんかあったんですか…?」

『何もないよ、大丈夫。』

「でも、好きって言ってくれないから最近…」


えーそんなこと?


『山田くんのこと、ちゃんとす、、』


テキトーに話そうとしたその次の言葉が、

なぜか喉の奥でつっかえて、

上手く出てこない。


「なに、?」

『そ、そ、そういうの言うの苦手なんだ。

言ってほしい?』

「ううん、いい。」


山田くんはまた布団にくるまって、

少し不満そうに背中を向けて

また寝てしまった。


困ったなー、

なんでこんなことになるんだろう。


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