第18話 バレンタイン②
「トモコさん、記憶なくなっちゃったの?」
『あるよなにそれ。笑』
少し俯いて、また何かを隠すみたいに
笑顔作って。
『ねー今から、バレンタイン仕切り直そっか、
あそこのスーパー24時間だったじゃん?』
でもこうやって、彼女の落ち着く笑顔には、
どうにも弱くて。
「手作りする?」
『仕方ないなあ。いいよー。
クッキーよりチョコのがいい?』
はあムカつく。
僕ばっかり好きみたいじゃないか。
僕はなんとなく察している。
いつものトモコさんじゃないって。
なんでそれについて教えてくれないのかは、
よくわかんないけど。
「やっぱスーパーいい。」
『へー!?いいの?』
聞かないのは、トモコさん自身も
よく分かってなさそうなことが、
見ればすぐわかるから。
「うんだから、
トモコさんどこにもいかないで。」
急にどこかに彼女が離れて行く気がした。
『どこにもいかないから。大丈夫。』
アレ、、いつも通りだ。
これを言うと、トモコさんは何か辛いことでも思い出すみたいな顔をして、
それを隠すために僕の胸に顔を
ぐりぐりと押しつけて抱き締める。
それで回した両方の手で、
背中をトントンって叩くんだ。
それ誰かに教わったの?って
いつか聞いたことがある。
うん、ユウって人。
そこは別に、
名前を出さなくていいとこじゃん?
でも、抑えきれなかったみたいに、
彼女はそう言ったんだ。
彼女が泣いて眠る時に、いつも口からこぼれるその名前を。
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