第9話 いつも

『生意気、、』

「ほえー、、なんてー?」


あのあと、結局ホームまで行って

山田くんを電車に押し込んだ。


あー、タクシーにすりゃよかったか。

と気付いたのは後の話。


あの時は私も、なぜか少し嬉しくて、

なぜか少し、一緒にいたいなんて、

駅まで歩いたっていいやなんて、

思ってしまったんだから。


そしてあの晩、私は眠れなかった。

それは嘘だ、大嘘。眠れていた、のに、

またイヤな夢にうなされたんだ。

山田くんのせいで、、


遮光カーテンの下から覗く、微かな朝日に、

また嫌気が差して、

でも仕事には行かなきゃと

無理やりスーツに着替える。


ふと目に入る、脚。

明日から少し、クリームでも塗ってから

寝よっかな。。なんてね。


出社すると、そこにはいつもと、

変わらない朝があった。


山田くんがテキパキと仕事をして、

同じく新人のめぐみちゃんがコーヒーを

淹れてくれていて、

大っきい会社ではないけれど、

働いている人との関係が和やかな会社が、

気に入っていないわけではないんだと、

この光景を見れば改めて気付いたりする。


ま、労働はヤダけどね。


悪夢なんて、、いつも通りじゃないなんて、、

私はもうそんなものいらないんだよ。

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