第7話 小さな段差

しかしながら、いつも通りの夜は、

私には来なかった。


普段なら気づいていても踏み外す階段を

無事回避したり、

(ここまではまだラッキーくらい)


忘れずにゴミを捨てられた上に、

日を跨ぐ前にお風呂に入って、

手には麦茶と、目の前には焼き魚…?

へ?おかしい、おかしすぎる。

何がどうしたら、こうなってしまうんだ。

私にはあまりに、不釣り合いな、

健康的な光景。


に、なぜかまたイライラして、

私は深夜のコンビニに、

求める塩辛いラーメンと、

緑の爪痕の長い缶を買った。


ほら、これでいつも通り。

『ここ、直してってば』


少し転けた階段の下の小さな段差に

舌打ちをする。


すると、「トモコさん?」へ?またいつもとは違う、明るい声がした。


『山田くん…?』

「あれ!トモコさん。」


もしかして酔っ払ってる??

普段とは違う、上ずったその声に、

なぜか胸がドキンっと音が鳴った。


「何してるんですかー!」


それは私の変換装置の作動しない今も、

まるでその必要がないみたいに。


「トモコさん、駅、どっち?」


甘くもたれかかる彼の肩を掴む。

これ、、家入ろうとしてるな。


『じゃあ、送ってく。』

「へー、」


不貞腐れた様な顔。

なんで私が、少し申し訳ないなんて気持ちに、ならなきゃならないんだ。

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