第2話 二度寝

人が立っている。

誰かはまるでわからないけれど、

その人の持つ物干し竿の様な銀の棒からはポタポタと赤黒くて重たい液が垂れていて、

その前には、私が膝を丸めて倒れ込んでいる。

おそらくその血は、私のもので、


私は死んでる。


場所は、前に住んでいた家の

階段の踊り場?かな、

この家は、私に言わせれば曰く付きだった。

日当たりが悪かったし、大嫌いだった部活の

愚痴はいつも奥の壁に話しかけていた。

そして手にするなにもが壊れたりしたんだ。

痛くて、つらくて、恥ずかしい思い出が、

この家には沢山ある。


何より愛した人を過去のことにするには時間がかかりすぎる場所だった。


そんな嫌な思い出の棲みついた、家なのだ。

ここで私が死んで仕舞えば、

本当の事故物件になってしまうんだろうか。


もはやほとんど明晰夢となった今、

私は目覚める自意識の中で

見ている夢を笑った。


そこまで、この家に執着なんて

していないはずだけれど。

もし私がこの家に縛られて、

成仏できないなんてのは、

それはそれで面白い死に方なのかも

しれないけれど。

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