第25話 魔法習得と格闘術(4)
「さぁ!気を取り直して戦術を学んでいきましょう!」
リフリアも最後の一仕事を乗り切るためにテンションを上げて、いよいよ戦術を学ぶことになった。
「それじゃあまず…アーレスが使っていたという型からやってみましょう。」
「型?なんですかそれ。」
「人間とドラゴンの姿を半分ずつ取り入れたハイブリッド型。これが一番戦闘をする上で最も理想的な形態だそうです。」
(ハイブリッド型…要するに、部分ごとに人間とドラゴンを形変えしなきゃいけないんだ。)
前にも一度、イノガーとの戦いでそのようなハイブリッド型になったことがあるが、あれはあくまで暴走状態であり自分がその形態になったという意識すらもない。
よって、自分でコントロールしてその形態になるのは初めてのことだ。
「ハイブリッド型になるのは比較的簡単だそうです。完全なドラゴン化をする時に尻尾だけ先に生えたことがあったでしょう。あれの応用版で、両手両足、お腹と背中、尻尾も生やした方がいいそうです。」
一見軽そうな口調にも聞こえるが、課されていることはそこまで気楽なものでもない。
「わかりました。できるかどうかはわかりませんが、試してみます。」
エレシアはドラゴン化をする時のようにに力を入れるが、まずはお尻だけに力を集中させる。
すると尻尾を予想以上に早く生やすことができた。
「尻尾は新たに生えるものなので苦労はないと思いますが、問題はその他の部分ごとによるドラゴン化ですね。」
「試してみます。」
エレシアは背中をドラゴンにするために背中に力を集中させる
すると、服の下ではなく、服の上から鱗ができてしまい、なんとも異様な光景になってしまった。
「やはり…そうなりますよね。」
「なに!?なんでこうなってるの?」
事態を冷静に判断するリフリアに対してエレシアは自分の身に何が起こっているのか見当もつかない状態でいた。
「気づきませんでしたか?エレシア様がドラゴン化をした時に服まで取り込んでいるのを。ですからドラゴン化を解いても衣服はそのままだったのです。」
エレシアはそのことに納得しながら背中のドラゴン化を解く。
「ですが、背中だけドラゴン化にすることは出来ていますし、あとは衣服を挟むか挟まないかの微妙な調整のみです。やってみましょう。」
エレシアは再びドラゴン化をしようとする前にふと疑問に思ったことを聞いた。
「ドラゴン化する時って身体から鱗が生え揃って変身するんじゃないの?どうやって衣服の上から鱗が現れるの?」
エレシアの問いに「その質問は必ず来ると思ってました。」と優しく答え、そこから説明をする。
「ドラゴン化には見た感じ二つの変身パターンがあるようです。一つ目が『尻尾から全身を包み込む変身』です。これは少し未知の力が働いていると考察しますが、衣服と融合して現れた尻尾から順番に衣服を含めて鱗で包み込む変身です。今エレシア様が行ったのもこの変身だと思います。特徴としてはドラゴン化を解除した時に鱗が消失するところにあるみたいです。」
エレシアは自分の尻尾を見ながらお尻に力を入れてみる。
すると尻尾の鱗から伝染するように鱗が広がっていくのが見えた。
そしてその鱗は衣服の上から掲載されたのだった。
「本当だ。衣服の上から鱗を形成してる。」
興味津々なエレシアにリフリアは「二つ目」と話し始める
「二つ目こそハイブリッド型に適する変身の仕方だと思います。『肌から鱗を出現させる変身』です。これは皮膚の外側を鱗に進化させるという古典的で一般的な変身として知られています。」
「そのやり方は?」
「基本的に一つ目のドラゴン化と変わらないと思いますが、何かちょっとしたコツとかが必要になってくるそうです。アーレスはよくこの変身をする前に自分の肌を叩いていました。」
「肌の刺激によって変わったりするのかな…」
そう言ってエレシアは両腕を交互にペチペチと叩く。
するとさっきまで柔らかかった肌は急に硬質化したかと思えば鱗を身に纏っていた。
「うわっ!本当にできちゃった!」
「どうやらドラゴン化の仕方は体が覚えているらしいですね。もともとドラゴン族ですし、教えられなくても感覚的に覚えているものなんだと思います。」
その説明にエレシアはほぇーと感嘆の声を出してその鱗を見た。
一つ一つの鱗はとても小さく、そして丈夫な強度を持っている。
「おそらく部分的に鱗を身につけるだけではドラゴン化はできないみたいです。だからこそ人間というコンパクトな体で丈夫な鱗を纏うのが一番強い型なのでしょう。」
エレシアは鱗の身につけ方を知ったので、さっき両腕で鱗を見せたように今度はお腹、背中、手の先までドラゴン化を試みる。
だがそう簡単にはいかない。
背中は手が十分に届かないので叩きにくく、手の先は細かい部分の変身なので上手く制御できない。
「これどうするの!?」
エレシアはリフリアに頼むがリフリアも多少困った顔でエレシアを見ていた。
「困りましたね…アーレスの変身を見ていればどうにか教えれそうだと思っていたので詳しい話は聞けていないんです。ただ一つ言えることはアーレスがそんな手の先まで叩いていないということぐらいですね…」
「ヒントなし…自分で変身方法を探せってことですね。」
エレシアは手に力を入れてみたり、背中を地面に打ち付けてみるなどして変身方を探すが、どれも上手にいかない。
「こういうのって…普通教えられるものなのかな?」
地面に背中を打ち付け、そのまま背中と地面をスリスリさせながらエレシアはリフリアに質問する
「さぁ…私はドラゴン族の生まれた姿からの成長に立ち会ったことがないのでよくわかりませんが、確かにドラゴン族が人間の姿でドラゴンになれないのは不思議な話ですよね…」
いくらリフリアが精霊であろうとも、全知能ではない。
エレシアは「こういうこと、もう少しお母さんに聞いておけばよかったなぁ…」とため息をつきながら手の力を抜いてパタンと地面に下ろす
瞬間、ビリビリと電気のようなものが手に走ったかと思えば手先の隅々までもが完璧なドラゴン化に成功していた。
いきなりの出来事にエレシアは目を丸くしてそれを見た。どう見ても完璧なほどにドラゴン化が成功している。
「えぇ!?嘘、私何もしてないけど!?」
エレシアはすぐさま立ち上がって自分の両手を確認する
甲装のような硬く分厚い鱗に加え、間接の鱗には反撃ができそうな尖った鱗が生え揃う。
鉤爪は邪魔にならない程度に短く、そして鋭く尖っていた。
「さっきエレシア様がとった行動がトリガーとなっているのなら…振動によるものではないでしょうか?」
リフリアがエレシアの鱗の成り立ちを見て思う
「確かに…!さっき力を抜いたまま腕を下ろした時、ジーンって振動みたいなのが来た!」
エレシアはバッと勢いよく起き上がり、リフリアの方を見る。
「物は試しです。背中とお腹ですが地面に打ち付けるのは力が分散されてしまうので試しに一度、そのドラゴン化した手で叩いてみるのはいかがでしょうか?」
リフリアの言う通りにエレシアはドラゴン化した拳を胸の下あたりに一発、自分が耐えれる程度の力で叩いた。
「ぐっ…」
自分の拳の振動を耐え、優しくお腹を触ってみると鱗の凹凸が感じられる。
「成功したかも…リフリアさん!成功したかも!」
エレシアはリフリアの元に駆け寄り、手を取って自分のお腹を触らせる
「…上出来です!しっかりとした鱗が出来上がっています!」
リフリアはそのままエレシアをくるりと半回転させ、背中も触ってみる
「背中もできでいます。振動が一直線に伝わったものによるものだと思いますが、ひとまずハイブリッド型の進化は無事成功ですね!」
「本当!?」
目をキラキラさせて振り向くエレシアにリフリアは「はい!無事成功です!」と両手を差し出し、エレシアとハイタッチを交わした。
ハイブリッド型を完成してからは主に基本の行動とそれを実践する簡単なシュミレーションとのルーティンを繰り返し行った。
エレシアも攻めの型、守りからのカウンター、どのタイミングで距離を取ったり、どのタイミングで魔法を使ったりするのかをリフリアが魔法で作り出す敵と交えながらどんどん経験として積んでいった。
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